椎名さんは、いつ読んでも面白い。
ただ、モヤシへの熱い思いを語っているだけなのだが、ぐんぐん引きつけられる。
これを読むと誰もが、モヤシを使った鍋料理、生春巻きのバリエーションを、
必ずや体験してみたくなるだろう。
モズク取りに夢中になった、無人島での冒険談も笑える。
そして、読者は皆、モヤシとモズクのファンになるのである。
一日一麺の人生をつらぬく作家は、尿酸値の高さを指摘され、
非プリン体系食品に覚醒する。
代用麺類として着目したモヤシに激しく傾倒、妻も巻き込みモヤシ料理に工夫を重ねる。
ついに利尻島に栽培キットを持参しモヤシ育成の旅が始まる。
旅と食い物にこだわり抜く堂々の“私モヤシ小説”。
同時収録「モズク」。