何とも言えない嫌な読後感が残る作品である。
かと言って、それはこの作品がつまらないという意味ではない。
これほど人間の愚かさ、浅ましさをうまく描いている秀作は、そうはないからだ。
主人公の田島は中学の頃、小学生時代からの友人・倉持に殺意を抱き始める。
田島の人生の要所要所に倉持が現れ、その度に倉持に裏切ら、はめられるのだ。
田島の不幸の影には必ず、倉持がいる。
その度に田島は倉持への殺意を高めていくのだが、なかなか実行に移せない。
刑事に言わせると、殺人を犯すには動機だけでは不十分なのだそうだ。
「殺人の門」をくぐる、何か引き金のようなものが必要なのだ・・・
読み進めていくうちに、倉持に何度も同じ手で騙され、
ひどい目に合わされる田島のばかさ加減にイライラが募っていくのだが、
正にこれが人間の愚かさなのだと気づかされる。
私はこの作品を相当体調の悪いときに読み、ちょっと辛かったので、
お読みになる方は、元気な時をお勧めする。