FXピヒラー グリュナー・フェルトリナーM スマラクト03
ワイン会3本目はオーストリーのワインです。オーストリー屈指の生産者FX(フランツ・クサファー)ピヒラーのグリュナー・フェルトリナーM スマラクト03です。この生産者、非常に力強いワインを作ることで有名で、ロバート・パーカーの評価も高く五つ星だそうです。本ワイン「M」は、その中でもよいビンテージにしか作られず、また、葡萄としてもピヒラーが栽培を行っているヴァッハウ地方最良の畑とされているケラーベルクのものを使用しているのだとか。遅摘み葡萄を残糖5g/lまで醸造するためその度数は14%にも達します。価格はバラつきがあり大体7000~8000円程度といったところが多いようですが、写真のお店では5544円で買えます。色は比較的薄めで、青みを帯びた黄色といったところ。そこまでの強さがあるような印象は受けません。香りは、ハーブやスパイス(白胡椒)といったグリュナー・フェルトリナー種の特徴的な香りがあります。また、蜜や蜜入り完熟リンゴ、あるいは大きな白い花といった甘さを感じさせる香りも豊かです。もちろん、ミネラリーな土地で作られていますので、ミネラル香も。結構硬い印象を与えます。しかし、最も印象的なのは石油香です。かなりはっきり出ているのですが、これが他の要素と相まって実に快適&エレガント。このワインにおいて、石油香は魅力の一つのようです。味わいは、やはり高い度数が印象的。辛いです。参加者の方からは「簡単なつまみでちびちびやりたい」という声も。しかし、果実味も強く、剛胆さすら感じます。尤も、ただ「濃い」という代物ではなく、しっかりしたミネラルと完全に脇役ではありますが酸味による下支えがあって、水晶的なクリアーさがある、ただし、その水晶は見上げるほどに大きい、そんな印象を受けました。食事との組み合わせで印象的だったのは、メインの乳飲み仔牛のカツレツが負けているにもかかわらず、白身魚の方とあわせると意外と魚の旨みや香りが引き立ったことです。もちろん、印象ではワインが上なのですが、魚の方も案外美味しく食べられました。このワインの試飲をしたどこかのシェフの、「これはジビエにも合う」という発言を何かの雑誌の記事で見ましたが、身の締まった鳩や鴨を塩+ハーブなどのシンプルな食べ方をしてみると面白いマリアージュになりそうです。非常に興味深いワインでした。石油香というと、飛んでからがそのワインの真骨頂、見たいな印象すらあったのですが、このワインにおいては石油香が実にいい感じでした。また、その力強さも驚きです。強いとは聞いていましたが、まさかこれ程とは…。イメージ的には、重量級の柔道家、しかし太っているタイプではなく上背もある「大柄」なタイプみたいな感じでしょうか。個人的には、あと5年10年経ったときどんな表情を見せるのか非常に興味深いところです。