ハーバード経済日誌(その44)
テニスのレーティング1私は象牙の塔に入る(博士課程に進む)つもりはなかったし、それほど勉強の虫でもなかったので、ハーバード大学院時代の週末は、土日のどちらかは朝から遊びまわり、どちらか一日は朝から晩まで勉強した。遊びまわるといっても、中古で買ったトヨタのカローラで、マサチューセッツやその周辺の歴史(といってもせいぜい三百年)のある街々を訪ねて回った。気分転換をしないと、勉強の能率も下がる。モールなどへの買出しも、いい息抜きになった。実はそうした息抜きとは別に週3回、私の本業(!?)であるテニスもしていた。私のテニス暦は大学時代のテニス部から始まる。その後、イギリスや富山、埼玉など行く先々で地元のテニスクラブに入った。留学前に東京にいるときも、テニスは最低週2回しており、完全に生活の一部になっていた。アメリカでは、テニスにも「成績」を付ける。正確にはグレード(成績)ではなくレイティング(等級)だ。だいたい、そのクラブのトップクラスで5・0の等級をもらい、プロの選手なら6以上。私をレーティングしたB.J.というコーチは「ピート・サンプラスなら8をやるよ」と話していた。もちろん、サンプラスクラスをレーティングする必要はない。実質的に意味を持つ最高のレーティングはおそらく、6・0前後ではないかと思う。レーティングの仕方は簡単で、クラブ専属のコーチと数分打ち合うだけ。その間にコーチは、こちらのフォアハンドストロークやバックハンドストローク、ボレーなどの技術を試す。最初は低めにレーティングされるため、私は4・5をもらった。するとクラブ側は、4・5クラスのプレーヤーと私をマッチングする。同じレベル同士がプレーできるように試合を組んでくれるのだ。私はそれまで、日英7つのテニスクラブに入部・入会したが、数字でレーティングされたのは初めてだった(Aクラス、Bクラスぐらいはあった)。何事も優劣や白黒明確にしたがるアメリカ流の合理主義に出会った感じがした。