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テーマ:ファンタジー・児童文学(31)
カテゴリ:これぞ名作!
前の日記の「出発! おはなし展」のため上京したついでに、どうしても行きたかった聖地に巡礼してきました!
子供の頃から大好きだった舟崎克彦『ぽっぺん先生と帰らずの沼』の舞台となった、目白の学習院キャンパスです。そもそもは2018年、A新聞夕刊の「各駅停話1221 山手線目白」という記事でここの「血洗いの池」が帰らずの沼のモデルだと知りました。血洗いとは、堀部安兵衛の伝説由来の名だそうですが、残念ながら私は忠臣蔵はあまり詳しくありません。 ぽっぺん先生の物語では、帰らずの沼は「独活(うど)大学」にあるとされ詳細な地図(右)までついているのですが、初読当時小学低学年だった私はそれを作者の出身大学と結びつけることができませんでした。 それから半世紀。記事のおかげで帰らずの沼が実在したと知り、学習院大学のHPにあるキャンパスマップを見ますと、なんと! ほんとにそっくりじゃありませんか。 物語そのものについては以前書いたことがあるので、今回はめいっぱい聖地巡礼記録を書き留めます。 駅前すぐの西門から入ります。守衛さんの所で訪問者名簿に記入すると、マップをひろげて丁寧に説明してくださいました。 物語の発端、「食堂」へ向かいます。左写真の大きな木の向こうがテニスコートそして食堂(輔仁会館)です。物語では夏休み前日のカンカン照りの日なんですが、私が訪ねたのも暑いくらいの快晴でしたから、季節感はOKとします(蝉しぐれがあれば完璧だったんですが)。 ところが私は、食堂の正面や中に行くのを忘れました。興奮のあまりまっすぐ帰らずの沼つまり血洗いの池へ向かったのです。桃色のウスバカゲロウを追ってぽっぺん先生があとも見ずに木立ちの中へ踏みこんだように(右写真)。 [食堂の]前庭の西がわには、こずえをさしかわしておいしげる樹林が、夏の陽をさえぎってそそりたち、こんもりとした下生えのかん木をしたがえながら、ゆるやかな斜面を、かえらずの沼の方へひろがっています。 ――舟崎克彦『ぽっぺん先生と帰らずの沼』より 以下、引用はすべてこの本 沼の周囲はびっくりするほどうっそうと茂っていました。物語にあるとおり、「ちりしいた朽葉の何重にもかさなった斜面」「木立ちの下かげにはびこるかん木のしげみにゆくてをじゃまされて」といった感じです。やがて、 先生のゆくてには、青緑色の藍藻におおわれた沼の水面が、木立ちごしにけだるそうな光をたたえています。(左写真) 物語と違って池には橋が架けられていました。わりと水面に近い橋で、ここに立つとボートでこぎ出したかのように、自分が沼の景色のただ中に入り込めます。 この池は湧水だそうで、橋の北側にある丸く囲った所あたりが湧き出し口のようです。無人の静寂のなか、時折ポン、ポン、プクリ、と水の湧き出る音が聞こえます…それはまるで、 ひっそりかんとしずまりかえり、なにか自分のうちがわからわきあがってくるしずけさに、じっと耳をすませているかのようです。(写真右) とは言っても、池をとりまく原生林のような木立ちはキャンパスの西の端で、見えないけれどすぐ外の道を通る人声や電車の発着の音も聞こえたりします。そうでなければちょっと怖いような大自然です。 水面にはアメンボ、水上にはシオカラトンボやムギワラトンボが大量に動き回っていました。シオカラトンボはまだ若く、胴体が青でなくて黄色いものもたくさん。もっと夏になれば、カゲロウになったぽっぺん先生を狙ったオニヤンマなども飛ぶのかもしれません。 高い樹林に日光をさえぎられてどんよりとくらい南がわと、強い日ざしを浴びてエメラルド色に光る北半分に、色わけされた沼――。 その南の方を見ると、おお、先生がやはり変身したカワセミが止まっていたような杭がちゃんとあります(左写真。ちょっと見えにくいけど) カワセミです。木のくいにとまったカワセミが、するどいくちばしをかたむけながら、こちらのほうに、じっとねらいをつけています。 先生をねらっていると思ったくいの上のカワセミは、水面にうつった自分自身のすがただったのです。 クヌギの倒木(カゲロウの先生が最後にそこから水に落ち、カワセミになった先生がメスのカワセミと寄り添ってとまった)はさすがにありませんでしたが、そこかしこに、水につくほど枝をしだれさせた大木が水鏡となって上下対称の像をむすび、そこへ風が吹くとはらはらと葉っぱが散ったりして、映画の一場面みたいです。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 17, 2024 06:57:39 PM
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