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関本洋司

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2004年10月26日
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テーマ:戦争反対(1190)
カテゴリ:アーカイブ
 環境、経済、戦争といった一見すると関係ない事象のすべてがつながっているということをうまく説明している文章として、「未来バンク」を立ち上げた田中優さんの発言があるので、少し長いですが御紹介させていただきたいと思います。

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  戦争をさせないためのエネ・カネ・軍需

 巷(ちまた)で言われるように「人々の敵意が戦争の原因」だったなら、人々の心が平和になれば解決するだろう。しかし戦争は子どもの喧嘩ではない。利益と打算で成り立つものだ。もし「エネ・カネ・軍需」がの動機であるとするなら、戦争をさせない社会を作るためにはその動機を取り除くしかない。私たちは「エネ・カネ・軍需」の利益を、企業に与えない仕組みを作らなければならない。
 イラクの石油が与える利益は決して大きなものでほない。一年間の石油収入はアメリカの軍事費の五%でしかないし、カリフォルニアの山火事被害額(これも温硬化と関連が深い)の一〇年分でしかない。それらを石油のコストに含めるなら、石油の価格は自然エネルギーよりも高くなる。ドイツのシュレーダー首相は自然エネルギーの国際会議で、石油への依存がテロの背景にあるとしてエネルギー政策の転換を各国に呼びかけた。実際、世界第二位の石油消費量だった日本を中国が抜き、わずかこの一〇年の間に日本以上に輸入する国となった。このことは世界の石油を逼迫(ひっぱく)させた。このまま石油をエネルギーの中心にし続けるなら、二一世紀が「戦争の世紀」となることは避けられない。 自然エネルギーにシフトさせることが、戦争に進ませない重要なカギになる。
 兵器でカネ儲けする仕組みもまた卑劣なものだ。兵器を購入するのは国家なのだから、政権に近い者はインサイダー取引で儲けることができる。ブッシュの父が顧問となっている投資会社は、ブッシュが兵器を発注することで多大な利益を手にしている。福祉を後退させ、その分を兵器に回すことで軍需企業の株価を上昇させ、投資収益の形で政権関係者が儲けるのだ。しかもアメリカは、莫大な軍事費を自国民の貯蓄だけでは調達できない。その資金を提供しているのは私たち日本人だ。日本の銀行が政府の短期国債を買い、政府はその資金で米国債を購入する。私たちが口でいくら戦争反対を唱えても、実現するのは実際に資金提供したことだ。私たちが貯蓄を意志的に投資しなければ、戦争をさせない社会は作れない。これが第二のカギとなる。
 アメリカの軍需は究極の公共事業だ。日本の実質国家予算以上の資金を軍事単独に使い、その額は世界の軍事費の約半分に達している。軍需産業に勤める労働者は全労働者の常に五%以上あり、戦争が失業対策となっている。こんなことのために人類は生塵性を上げ、余剰を作ってきたのだろうか。これは人々が選択できる未来だ。衣食住に関わりない生塵は軍事でない方がいい。人々が戦争より平和を、防衛より予防外交を優先する政治的意志を示すならば、実現することのできる未来なのだ。

 平和に関する話の結論を見ると、その多くは「心の平和」「ライフスタイル」論にまとめられ、個々人の努力に訴えるものが多い。しかしこれは具体的な解決策を見出せない者の言い訳ではないのか。具体的に見てみよう。
 エネルギーは、自然エネを入れるよりも省エネの方が安上がりだ。電気は新たに発電しなくても、今の需要を減らすことで作れる。家庭内の電気は、その三分の二を「エアコン・冷蔵庫・照明・テレビ」が消費している。しかしそれらは省エネが進み、今や七年前の製品の電気消費量と比べて約半分に下がっている。特に冷蔵庫では五分の一以下だ。この省エネ製品への買い替えをするだけで、電気の消費量は半分にすることができる。省エネ後の電気を賄(まかな)うのに必要な太陽光発電パネルの広さは、わずか八畳ほどになる。これが戦争して奪おうとする石油と同じ価値なのだ。太陽光発電は自然エネルギーの中で最も高いものであるが、それでも化石燃料より経済的になる日は間近い。ましてや戦争や環境被害のコストを含めて考えれば、今の時点でも自然エネルギーの方が石油より安いのだ。
 今、貯蓄の運用先をコントロールすることで、自らが望む未来を実現しようとする「社会的責任投資」の運動が広がってきている。私が始めた「未来バンク事業組合」もその一つで、「環境・福祉・市民事業」にだけ融資しながら、この一〇年間順調に運営してきた。そして今や、各地に「NPOバンク」と呼ばれる非営利の金融が広がってきている。それらは相互の信頼をベースにするもので、必然的に地域を重視する。各地に地域分散型の金融が実現されようとしているのだ。地域の資金が地域に投資されれば地域経済が活性化され、戦争に白紙委任されるような貯蓄をやめていくことができる。
 こうして私たちの貯蓄を戦争に供給せず、エネルギーを石油に依存せず、公共事業を戦争ではなく地域の市民事業に変えていくならば、戦争をしようとする動機は次第に失われていく。石油を奪ってきたとしても誰も喜ばなくなるからだ。

『もしも憲法9条が変えられてしまったなら』(別冊世界2004)p136,137より

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 上記の田中さんの文章はほとんど自明であるべき基本的な認識(「自然エネルギーにシフトさせることが、戦争に進ませない重要なカギになる」「私たちが貯蓄を意志的に投資しなければ、戦争をさせない社会は作れない」等)を述べたものなので、省略する箇所がなくて困ってしまいます。足りないところがあるとすれば、具体的な法整備のやり方(金融法、環境税等)や代替エネルギーの多様性(バイオマス、地熱等)に関してでしょうか。
 田中さんは、経済の視点から、環境と戦争を見ていて、金融に関しては代替案を提出、実行しているところが素晴らしいと思います。僕は、その他に地域再投資法などによって、既成の金融業者が同様の本来の仕事をするようになるべきだとも思っています。NPO、NGO(実は上記の田中さんの文章は戦争で亡くなった少女・ラナちゃんの思い出に捧げられていて、NGO活動は彼女らの親替わりになることだと田中さんは言う)に関してもまだまだ日本で認知されるのはこれからで、多くの議論を必要とするでしょう。
 環境に関しては、日本の各地(広島・府中町、埼玉・小川町等)で小さな地域を主体とする興味深い有効な試みが続けられているのでまた御紹介したいです。





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最終更新日  2004年10月26日 00時29分56秒
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