真実の航跡 最終回 伊藤潤(小説すばる9月号)
小説すばる 2018年9月号真実の航跡 最終回 伊藤潤1944年3月、大日本帝国海軍の重巡洋艦「久慈」は、スマトラ沖で、イギリスの商船「ダートマス号」を撃沈、捕虜百十五名を捕獲した。その後、一部を除いた大多数の捕虜が殺害されるという事件が起こる。敗戦後、「久慈」艦長である乾と、「久慈」が所属する第16戦隊の司令官・五十嵐が戦犯として起訴された。戦犯を弁護するため、香港にやってきた若手弁護士の鮫島は、友人の弁護士の河合とともに、この「ダートマス事件」を担当することになる。(小説すばるより転載)戦犯裁判をテーマにしたフィクション。物凄くリアルなので、ノンフィクションと錯覚してしまいます。敗戦から間もない時期に戦犯の弁護をする鮫島。敗戦国の一人として、様々な屈辱を味わいます。でも、敗戦から立ち上がる勇気を糧に、必至で手を尽くす鮫島。新しい日本を作る、と誓った鮫島。この時代に、希望に燃えてこのように考えた人物は沢山いたかもしれません。そのような人々に自慢できる世の中になっているのでしょうか?・・・・・五十嵐元司令官の手紙が、胸を打ちます。戦後はこのような被告に不利な戦犯裁判が行われたのでしょうね。敗戦国だったので、仕方無い部分があったのでしょう。改めて太平洋戦争を考えさせられる話でした。