真実の航跡 第三回 伊東潤(小説すばる3月号)
小説すばる 2018年3月号真実の航跡 第三回 伊東潤弁護士の鮫島は、裁判の担当を聞くために戦犯部起訴係に出頭する。そこで告げられたのは、衝撃的な指令だった。(小説すばるより転載)太平洋戦争後の戦犯裁判の為、香港に行く弁護士の話。フィクションです。戦犯部起訴係で告げられたのは、乾と五十嵐の弁護を、二人で別々に担当しろ、というもの。二人で共同して弁護するつもりだったのに、突然敵対する関係に。鮫島は担当する五十嵐に会いに行く。そこで見た五十嵐の姿に衝撃を受けて・・・。現在の話と平行して、「ダートマス事件」の詳細が描かれます。ダートマス号を撃沈して、捕虜を連れて帰る乾を苦々しく思う五十嵐司令官。反省しない乾。軍の命令を盾に、乾を窮地に追い込む五十嵐。どちらが正しいのかは、よく分かりません。軍隊的には、五十嵐が正しいのでしょうか??乾が軍隊に向いていない、という五十嵐の考えは合っているのでしょう。しかし、どんどん戦死者が増える中、向いていない人間も、艦長にしなくてはいけない非常事態。戦争では、軍人だけで無く、民間人も犠牲になるので、命令や判断はすごく重要なんでしょうが、その命令や判断が間違っていたら?戦争って、弱い人間が犠牲になるのが常・・・。これは何時の時代も変わらないのでしょうね。