丘はうたう
新年度を前に、初心に戻って私の好きな子どもの本の紹介を、再開したいと思います。子どもの本の面白さに気づいてからまもなく30年になろうとしています。夢中になって読み漁ったあのころを懐かしく思い出すとともに最近は睡魔と疲労と、それの気晴らしに費やす時間の消費に負けてなかなか本を読めなくなった現状を、ちょっと憂いていました。思えば、1985年から参加してきた月に一度の子どもの本の読書会。この会に、なんとか都合をつけて参加してきたことが私の読書の原動力になっています。ここで出会った本の数々は、私の宝物になっています。 さて、今日はこの本を紹介します。丘はうたう改訂版マインダード・ディヤング作/モーリス・センダック絵/脇明子訳/福音館書店/2011 ディヤングの作品は「コウノトリと六人の子どもたち」以来久しぶりに読みました。訳者の脇明子さんが、朗読しやすいようにと訳し直した改訂版です。 田舎に引っ越してきたレイモンドは3人きょうだいの末っ子来年は学校に行けることを楽しみにしています。家の周りに広がる広い畑のトウモロコシは引っ越してきた時には子どもたちの背丈を超えていて格好の遊び場になりました。同時に恐ろしい生き物に出会うかもしれないという不安も感じさせたトウモロコシ畑。その畑のむこうには小高い丘があり、一軒の農家が建っていました。そこには、馬がいて時々姿を見せる、秘密めいたおじいさん。馬やおじいさんと関わりをもつことでトウモロコシ畑や、丘の上に残った農家の秘密を知ります。 レイモンドの田舎での暮らしは、いろいろな出来事とともに過ぎていきある秋の日にトウモロコシはすべて刈られて、畑は何もなくなっていました。 子どもには子どもなりの秘密や悩みがあり大人は大人なりの事情があり、悩みもあるのです。それを感じとれる子どもにレイモンドは育っていくのでしょう。 また来年、畑にはトウモロコシの種がまかれ同じようなトウモロコシ畑が広がるということが想像でき毎年変わらない景色の中で子どもは確実に一歩ずつ成長するのだということを教えてくれます。