幸福の否定 (幸福の先延ばし)
このように ささやかな幸福をちょっとだけ先延ばしにするという可愛い習慣は幸福感を増幅させて感じるためのゲームのようなものだ。先に延ばされたにしても 最終的には大好きなものを口にできたり クライマックスを体験できるわけなのでちゃんと目的は達成される。しかもこの先延ばしというワザが加わると 目の前にあるのに手に入らないというジレンマが生じその結果「欲しい!」という野望が一層そそられ、興奮する。幸福感にさらにおまけを付けくわえようなんて なんてクリエイティブな行為だろう。。。興奮するということはアドレナリンが脳内で放出されているということだ。程よい興奮は ワクワク感として私たちに認識される。 で、ここからが本題。ゲームとして生まれた「幸福感の先延ばし」を利用して我々は かなり大胆に自分に対して大きなゲームをしかけているのではないかということ。探し物を途中でやめてまでトイレに駆け込むほどの不快感を身体に起こしてその場から去らせる。買ってしまってもうおしまいというのではなく そのあとの「読む」というさらなる幸せがあるというのにである。先ほど アドレナリンが放出されると書いたが、このアドレナリンは程よい量なら意欲を高め目的に対して行動するための推進力となる。私たちが身体の中で感じるのはワクワクでありドキドキで 早く行動にうつりたいという思いにつながる。でも過剰に放出されたらどうだろう?程よい量なら我々の目的に対してプラスに働いてくれるアドレナリンが 今度はマイナス方向へ我々を駆り立てる。草原でのんびり草を食べていたシマウマの鼻に風上からライオンの匂いが感じられ 耳にこちらに向かってくる忍び足が聞こえたらシマウマの中で何が起こるか?この状況はシマウマにとって明らかに「命の危険」となる。シマウマの中で危険が察知された瞬間 脳から大量のアドレナリンが放出され,シマウマは一目散にその場から逃げだす。アドレナリンは筋肉に作用する物質だ。脳からの指令でアドレナリンが身体全体に流れ 普段の何十倍 何百倍ものエネルギーを出させる。DNAに組み込まれた「生き延び」のためのシステムはすごい。。。これが 私たち人間の身体の中でも起きる。生き延びるためではないにしても 大量のアドレナリンが放出されたらワクワクやドキドキは姿を変えて 恐怖感になる。その恐怖から 我々は逃れるためにその場を去らなければならない。ささやかな幸せに対しては 程よい刺激。アドレナリンの量はその幸せ度数の高さに比例して多くなるのではないかと思う。本屋でトイレに駆け込む人は 読書することが心から好きな人たちなのだ。その幸せ度数は そこそこ高い。高いからこそ その場を逃げ出すためにトイレに行きたくさせる。確かにトイレは緊急事態だ。。。(^_^;)さて、他にどういう場合にこの幸福の否定を発見できるだろう?たとえば友人たちとどこかに行く約束をする 皆それをとっても楽しみにしている。当日そのグループにこういう人はいないだろうか? あるいはまさに自分がそうだという場合もある。「寝坊した」「電車を乗り間違えちゃった」「駅まで来て忘れものに気づいて家まで戻った」「網棚に荷物を忘れたのに降りてから気づいて慌てて取り戻しに行った」「急に子供が熱を出した」「出る前になって知り合いから電話が入った」「届ものがやたらと来てなかなか出られなかった」「鍵がどこかに行っちゃって探し回った」などなど。。。私も経験がある(^_^;)この間はフルートのレッスンに行くのに フルートをテーブルの上に置いたまま出かけ駅のホームまで行ってから それに気づいて家まで戻った。。。(-_-;)その結果どうなるか探し回った挙句、鍵はちゃんと出てくるし、知り合いからの電話に1時間も2時間も話し込む人はいない。子供も 朝食を食べたら具合が良くなってきたりする。網棚の荷物もちゃんと見つかることが多い。少々出かける前に手こずっても おおむね少々の遅刻ですんでいる。取り返しのつかないようなことには決してならないのが特徴だ。ここが人間のすごいところでそのあたりはちゃんと困らないように周到に無意識は気を使う。先延ばしはゲームなのだから 本当に困ることになっては困るのである。身体に変調が起きる場合でも 症状としてはかなりつらいが、実際のところ命に関わるほどではない。結局私たちは目的を達成する。だから 目的が達成されていれば それはあくまでもゲームなのだ。このあたりまでなら まぁ 時間がたてば笑い話にもなったりして 単調な日常生活を少しだけドラマティックにしてくれる演出といえないこともない。人生を彩るクリエイティブな人間たち。起きた出来事が目的の達成の妨げになればなるほど その人はじつはそれだけそれを欲しているのである。それを欲し そのことで幸せを感じたいと望んでいるのだ。では それがゲームでなくなってしまった場合はどうなるのか?疲れたので また次回!