192970
HOME \| DIARY \| PROFILE	【フォローする】【ログイン】

ピアノを弾くMaryAnn♪　- Mary Ann pianoplayer -

[季節] カテゴリの記事

全49件 (49件中 1-49件目)

メリークリスマス、と　それと、

「芸術が愛らしいものであってなぜいけないんだ？世の中は不愉快なことだらけじゃないか」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ルノワール）つめたく冷えてガラスみたいに薄くなった空から夜がコトンと　転がり落ちてくる。なんでもないふりで　昨日よりとがって。そうして昨日より遠くまで広がって僕を明日へと急かす。春の　風の匂いみたいに夏の海に続く　まっすぐな道みたいに秋の夕焼けがつくる　遠い木々のシルエットみたいに。きらきらしたものを見つけちゃったら　しばらく戻ってこないけど、勝手だなんて言わないで。やりたいことを見失ったら、僕が　僕でいる必要がなくなるもの。×××冬休みに入ったとたんに実家へ帰れるよう、飛行機のチケット早くから取ったり、終業式も終わらぬうちから荷物のパッキングを始めたりという、（休みのときだけ発揮される）普段どおりの用意周到さで、２６日より１０日間ほど、里帰りしてきます。２７日に、地元の大学時代の軽音の友人達と集まってセッションしようっていう楽しい計画がありまして。ちょっと早いですが、皆さま、良いお年を☆♪「クリスマスソング１０連発」 ♪You Tube チャンネル「ピアノを弾くMaryAnn」

Dec 24, 2010

コメント(6)
君とうたった歌

今の僕が本当に　ほんとうに大切に思っているものや瞬間をいつか　完全に忘れてしまったとしてそれって不幸なことだろうか。今を忘れたくない、と君が言ってならば僕もちゃんと覚えておこう、と本気で思う、その輝かしい決意がいつか　まったくの無駄になったとして。新しい歌を探しに今のすべてと無関係な場所へと駆けだしたときそれでも君とうたった歌は僕のそばにあるだろうか。すごく天気の良い日の夕焼けを見ていて、いや、正確にはその空を目にした瞬間に、「今のこの色を覚えておこう、」と、色だけじゃない、そのときの風の匂いや空気の温度や、そんなものを焼きつけようと立ち止まる、そういうときのことってちゃんと覚えていて、小学生のころ、家の前のちっちゃな公園のジャングルジムを降りて友達と「ばいばい、」したときの、怖いぐらいのオレンジも、高校のグラウンドから斜めに見上げた逆光の渡り廊下の向こう、吹奏楽部の音といっしょに届いた消えかけのオレンジも、一仕事終えて、目標に向かう熱、みたいなのから皆が解放されて、職場が一瞬静かになったときの窓越しの、水色に透きとおるようなオレンジも、それぞれいつでも、きちんと思い描ける。覚えておこう、と、思ったから。でもそういうのって、いつか忘れるのかなあと、たとえば、どうでも良くなっちゃったら忘れたりするのかなあと、忘れたら世界から無くなってしまうのかなあと、子どもみたいに考えてみたりするのです。今更ながら、椎名林檎の「ありあまる富」聴いていて思ったのかも。なんかこう、優しいけど、なぜか切なさのある曲だなあ。僕らが手にしている富は見えないよ彼らは奪えないし壊すこともない世界はただ妬むばっかり／もしも彼らが君の何かを盗んだとしてそれはくだらないものだよ返して貰うまでもない筈何故なら価値は生命に従って付いている自分のうた、自分の記憶、そういうのは「自分のもの」だよなあとか思ったりして。・・・かばんもそうかな、歌詞の文脈には全然あわないけど・・・。それはそうと、わざわざ覚えておこうって思う夕焼けは、ほとんどぜんぶ秋なんだけど、なぜこんなに、秋の夕焼けって胸にせまるのだろう。世界が限りなく影絵に近づいて、空が背景じゃなくて主旋律を歌っているみたいで。

Sep 7, 2009

コメント(4)
gin-clear

昼間の強いひかりがつくる　濃い影　背中に揺らして街路樹の下を　夏が駆けてくる涼しい夜の広がりと喧騒をくぐって大通りの向こうから　夏が駆けてくるジンクリアにきらめいて両手ひろげて受けとめようとしている僕もあっという間に　夏風に透けて君のとこまで駆けていく　駆けていくよ×××終業式が終わって、とうとう夏休みです！日食を見たり教育相談に行ったりと、多少用事？は残っていますが、来週には関西に帰ります。しばらくは、母の家に居候しながら、元・近所のバーや友達のところを訪問しまくる予定です。（とりあえず帰ったその日の夜に飲むお誘いを快諾しているという、はりきりよう。）あとは、えーと、秋に娘・小２と連弾する予定の Rhapsody in Blue を練習するぞ。それから・・・うーん、特に無いな。すばらしい夏休みかげんです。ふふふふふふ、楽しみやわぁ♪

Jul 21, 2009

コメント(5)
ちょうど真ん中で、

車のドアを開けて押し込められた熱気に一瞬たじろぐすこしでも温度下げようといそいで窓　全開にして、空気かきまわせば途中から始まった１曲めが　窓の外へ流れだして新しい風が　かわりに吹きこむんだその　ちょうど真ん中で僕はくちぶえ吹いて　急に陽気になるさんざめく季節の始まりに　こころ広げて今日、やっと扇風機を出した。必要に迫られて。７歳・３歳の娘たちはさっそく扇風機の顔（？）の真正面に立って左右に移動しながら、「あーーー、あーーー、あーーー、」と声をそろえている。ここ数日、雨が続いてなかなか気温が上がらず、「このあたりはなんて寒いところなんだ！」などと、ときどき雨の曇り空の下、ひとりぶつぶつ言っていたのだが、どうやら天気のせいだけだったようで、今日は、昼間の戸外に一歩出れば、サウナのような蒸し暑さ。あまりさわやかな暑さではないけれど、それでも思わずにやりとしてしまう。扇風機の前で「あー、」と言う季節は、水滴のいっぱいくっついたガラスのコップから飲む、昼間の麦茶の季節。夕方の、生ぬるさがすこし残っていても、涼しいと思える風が愛おしくなる季節。夜の広がりを感じて、半袖で夜中にふと出歩きたくなる季節。・・・あぁ、夏が近づいてきたなぁ。

Jun 23, 2009

コメント(10)
みずいろの花

「最低でいいんじゃないか。おれはコーサクが最低でもぜんぜんかまわないよ。誰かがそばにいるとなにもしなくても雰囲気が変わるだろ。なにか立派なことをするから、生きる価値があるんじゃない。最低でも、くだらなくても、困ったちゃんでもいいんだ。そこにいるだけで、人間って風とか光なんかを周囲にだしてるんだ。」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (石田衣良　「反自殺クラブ」) 人もそう、でも花なんかも。・・・などと考えて、娘・６歳の家庭訪問用に花を買ってきたりして。この時期、特にいいなあと思うのは、足もとの野草ではキュウリグサ。日なたに咲く、直径１ミリとか２ミリぐらいの花。花屋さんで見る花では、ベラドンナ系のデルフィニウム(いろんな色があるけど、この水色のイメージ。)それから今日、ひたち海浜公園で見たネモフィラ・インシグニスブルー。春の野や花屋さんにはもちろん、他にもきれいな花があふれていて、たとえばハコベの花だって、小さくて、チカチカするくらい白くてよく見ると素敵だ。バラは凛々しいし、ガーベラやチュ－リップは愛らしい。そのまわりを白くふちどるカスミソウも好きだ。これだけでまっしろな花束にして欲しいと思う。散り際美しく、葉になっても清々しい桜も良い。でも。春には、みずいろの花を良いなあと思う。めだたないけど、それでも、今の季節の、あいまいできれいな空の色を映したようで、みとれてしまう。・・・えっと、下のほうで宣伝。松永貴志のNight Riverの耳コピです。ピアノだけ。非常に静かな曲です。これも先日、CAT WALK で弾いたもの。あ、これ、音がでます!!　（←しつこいか。）

Apr 26, 2009

コメント(8)
あかるいオレンジの

自転車で走る　細いでこぼこ道は野生化した　あかるいオレンジのケシがたくさん咲く道９０度曲がって　跳ね飛ばした小石どっちに行けばどこまで行けばここじゃない春にとどく？この花が嫌いなわけじゃないんだ、でも、違和感を拭えないんだ、このちぐはぐな感じ焦燥をどうにかしたくてどっちに行けばねえ　どこまで行けば君んとこに　とどく？

Apr 20, 2009

コメント(0)
タンポポ

そんなに心配しないで。私は案外、どこでもうまくやってける。君は君の場所で　いつも通り笑ってて。笑ってて　たまにそれを伝えて。などと、もと居た場所を振り返りつつ、そろりそろりと動き出している私の横を、未来しか見ていない娘たちが堂々と闊歩していくのだけど。娘・３歳に時間の感覚を求めるのは無理なんだろうなあとは思う。でも、その娘が今、とても楽しみにしているのが、「４歳になること」だからすこし困っているのだ。とにかく、とても大きくなれるものと思っているらしい。たとえば、「４しゃいなったらなー、ここ（エレベーターの上のほうのボタン）とどくようになるでー。」という風に。それではいつ４歳になるのか。しつこく聞いてくるのだが、夏生まれの娘・３歳に教えるのはなかなか難しい。仕方が無いから、「いま、さくらがいっぱいさいてるでしょう。さくらがなくなったらねえ、ちゅーりっぷがいっぱいさくよ。ちゅーりっぷがなくなったらねえ、あじさいがいっぱいさくよ。あじさいがなくなったらねえ、ひまわりがいっぱいさくよ。ひまわりがいっぱいさいたらねえ、おたんじょうびになるよ。」なかなかうまいことを言ったぜ、と内心得意になっていたのだが、あたたかくなってから娘３歳がそこここで「あ！　ひまわり！　ひまわり！　よんしゃい！　おたんじょうび！！」と、後ろのイスから大きく身を乗り出して自転車を揺らすのである。娘よ、その黄色い花は、タンポポなんだけどなあ。

Apr 14, 2009

コメント(4)
秋の夜長

自転車を２人乗り、なんて、子どもみたいな私たち。マンションの入り口　狭いスロープで勢いをつけて夜の広がりに放りだされて。すごい星だね。風がちょっと、冷たいね。会話する声もちぎれて　後ろへ吹きとばされるよう。でもほら、厚い背中に耳をくっつけたら声だってちゃんと聞こえるし、それに、あったかいし。大丈夫だね、私たち。秋の夜長　自転車で２人乗り、のまま、このまま、どこまでいけるだろう。今年はじめての、金木犀の匂いの出どころをつきとめようと近所を歩きまわり、駐車場の横、ちっちゃな、ちっちゃな（ほとんどがつぼみの）無数のオレンジを見つけてちょっとハイになって、そのことをまず誰に伝えるべきかと考えるうち、雨降りなのに、自転車どころじゃないのに、なんだか、ずいぶん前のことを思い出したり、したのでした。だけどなんて言ったって、秋の夜は自転車ですよね？？あ、そうだ、秋の夜長とはあんまり関係ないけど、さいきんよく見に行ってるのが、ドランクドラゴン鈴木拓　オフィシャルブログ。そこはかとなくおもしろいです。

Oct 5, 2008

コメント(6)
Toccatina

寒くないから窓を開け放つ夜を走る電車の音がすぐ近くでするとどかないから口笛吹いてみるすっかりほどけた風の匂いがするどうせならばと鳴らしたピアノ音は粒になってあの角　ぱちんと消えていくこの夜の澄んだ輝きに何の関係もなく　自分がここにいるここにいるここにいる、ことと君がどこかにいることに、同じ重さがあるなんて信じられないやうへー、また酔ってます。サントリープレミアムモルツのシールをいっぱい集めて懸賞に応募したら、「青いカーネーションとプレミアムモルツ２４缶セット」というのが今日届いて、それを祝して。以前にも発売前のモルツの黒ビールが当たったことがあって、これまでの人生で懸賞に当たったことなどほとんど無かったので、びっくりしているところ。そうそう、ピアノ、このごろよく弾いています。Kapustin Etude Op.40-3 "Toccatina"。弾きたい曲はこのところずっと耳コピだったのに、何年ぶりだろ、楽譜を購入してしまったので。完成までにどれくらいかかるだろう。

Jun 17, 2008

コメント(6)
桜

こんなにも　あかるいのはどうしてだろう公園の青空の下でも夜が落ちた町角でも桜へんにまぶしくてとまどいつつ　たちどまる咲き誇っても風が散らしても桜はかなくてはかないからよけいに　きれいでだからなんとなく思い切り首をそらして見上げても不安にならない葉桜が好きだったりする夏に向かい、枝葉を広げほかの木より断然、目立つって事がなくなってもやっぱり桜、だし

Apr 3, 2008

コメント(11)
ここから

ひらリ　とびこえてきらり　そのさきへ身軽に　一直線に風も追いつけないぐらいにすんなりとでも　足もとの小さな花を　踏まないように気をつけてね名前なんて　なんだっていいけどさもったいないぐらいに　春なのはそこいらじゅうに散らばった　見落としそうにちっちゃな白やみずいろや黄色なんだってだから　どうせなら２ミリぐらい　浮きあしだって進んでいこうよここからは

Mar 24, 2008

コメント(6)
風に怒りをぶつけても

陽が射して真上の空はあざやかに遠くの空は淡い色して２月に入ってから、関西でも雪が降ることが多い。たいして積もらない日でも、アスファルトがうすぼんやりと明るくなっていく降り始めなんかには、やったあ、というほどの高揚感もないけど、もちろんサイアクだと思う理由もなくて、ただただ町じゅうが白に沈んでいく、という感じがおもしろくて、普段文庫本から目を上げることなどない通勤電車の窓から外を見たり、どれぐらいの人が同じように雪に気をとられているのかなあと考えたりする。うちの小さいほうの娘・２歳は最近、朝、玄関のドアを開けた途端に「い～や～よ～！！」などと言ってしゃがみこむ毎日だった。６歳の娘が意地悪をしているわけでもなさそうだし、「なに、おこってんの？」と問うと、「おかあちゃんにゆうてるんちゃうわ～、かぜさんにゆうてるんや～、」と逆ギレ。要は、目深にかぶっている赤いコートのフードを吹きつける六甲おろしがめくろうとすることに対してお怒りになっているのだ。でも今朝は、冷たい雨に一晩冷やされているはずの空気がそれほど尖っていなくて、娘もなぜかふつうに靴箱の横を通り抜けた。風に怒りをぶつけてもなんにもならない、と気づいただけかも知れないが。結局は今日も夕方、みぞれ混じりの雪がちらついた。それでも、なんだろ、ちょっと、春に近づいてきたのかもなあ、と思う。だって、空がなんだか、あいまいに水色だし。この前の晴れた日、一瞬だけど、ぬるんだ空気に光と土の香りが混じっていたし。・・・いや、細かいことはどうでもいい、今週末には３月になるのだ、そうすればもう、いくら寒くても春だ。

Feb 27, 2008

コメント(12)
鈍色の空の下

降水量１mmなんて予報に「雪が降る」という言葉は似合わない。けど、それでも、つもらないかなあ、などと思ってしまう。鈍色の空の下道路も建物も線路も職場もみんなうすく白く染まっているところを思い描いてしまう。雪に降り込められて止まってしまう明日を、その中でぽつんとでも　ほっとして突っ立ってる自分を、こんな日曜の夜には。

Jan 20, 2008

コメント(6)
夕方のすこし手前

夕方のすこし手前の空を見あげてこの時間がやたら短くなったなあと思う秋空は目の前の景色透かして

Nov 4, 2007

コメント(8)
トンボとりの王様

　　秋の野山の空気は格別である。ことに木々の中に松が入っていると、清新の気が鋭さを増し、心地よい。　夏の野山はその生命力でこちらをとって喰わんばかり、冬は厳しくて跳ね飛ばされるよう、春はやさしく柔らかでもやもやとしている。何といって、透明度の高さで秋の野山に如くはない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梨木香歩「家守綺譚」上の文章。ほんとうに、そうだなあと思う。秋になって、急に空気がきゅっと緊張する、でも撥ねつけるようではない、それぐらいの野山の静かで鮮烈な透明さ。音も無い。いや、・・・あっても良い。でも、余計な音や気配が皆、木や草にすいこまれてしまう気がするのだ。とは言え、そういった「秋の野山」に出会うのは実はなかなか大変で、ちょっとでも暑けりゃそれは夏の終わりとのさかいめの、何だか重たい残暑であり、ちょっとでも寒けりゃ何もかも台無し、だって私は寒いのが嫌いなのだ。それでもなんとなく良い感じの日を選んで、六甲山なんかに出かける。まだ、いかにも秋って感じではないけれど、すこし上着を持っていく。５歳の娘は私以上の重装備だ。べつに着込んでいるとかそういうのではないのだけど、いつものポシェットやら帽子やらに加えて、長さ調節可能な虫取り網と、黄色いラジカセ風虫かご。ポケットからはなぜか方位磁石が覗いている。飛びまわっているトンボを捕るのだ。ふだん、ふわふわした足取りでのろのろと歩いている娘だが、仁王立ちで次なる獲物を狙っている姿はなかなか力強い。夫だって、いや、私でもトンボぐらい捕れるのだが、トンボとりで王様になれるのは、やっぱり子どもなんだよなあ。

Sep 9, 2007

コメント(10)
金色の空

雨上がりの空がこんなに金色だと気づいたのはいつだったか夕立のあと、携帯でメールした返事はどんなだったかもう　忘れてしまったけどあのときの高揚した気分道路脇のなんだか開けた景色のことを忘れることは、ないだろう。とにかくいろいろな夢を見る。いや、叶えようと思い描くほうの夢ではなくて、（それもまったく無いわけじゃないけど、）寝て見るほうの夢だ。カラーで見る。風や匂いも感じるような本格派だ。だから、夢占いのページなんか、好きでよく覘きにいく。最近は、眠り男の夢占いがお気に入りだ。ホームページには「夢の実例とコメント集」なんかもあって、人はこんな夢をみているのかと、感心して読んでいる。そのうち、「そういえばこんな夢を見たことがあるなあ、」と思いだしたりする。夢の中で、私は起きぬけに「行かなくちゃ、」と家を飛び出すのだ。誰かと左手をつないで。大急ぎで。家のすぐ前から直角に、早朝なのでまだ誰もいない、広い大通りがまっすぐに続いていて、見たことのない町並みなんだけど、駅へと続く道なんだとそのときは分かっていて、とにかくそこまで走っていこうとしているのだ。何かにせかされて。急いでいるのだから、走っているのだから、それほどよく見えるはずは無いと思うのだけど、空やまわりの建物や街路樹や電柱や電線なんか、要は何もかもがやたらと鮮明で、（きっと空気が澄んでいるんだ、）夜のあいだに降った雨に濡れて金色に輝いている、そんな、雨あがりの朝の道を。どんなときに見た夢なのか、残念ながらもう忘れてしまったけど、朝の気分がこの夢を急にはっきりと思い出させるときが、たまにあって、それはたいてい、何かが始まったり、何かを始めようとしているときだったりする。そうしてその夢を思いだすことで私は、自分が、始まりのドキドキ感の中にいるのだと改めて気付くのだ。９月だ。のどかな夏が終わる。

Sep 2, 2007

コメント(8)
夏の空気

一人でおれがおれがと言い張るしかない道と、実は自分は何者でもない、そのために自分をささげる対象があるならそれを教えてくれ、という願いのはざまに、人はいると思う。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山下洋輔「ピアニストを笑うな！」なんだかやたら地面に近いところから降り注いでいる感じのする夏の陽射しとアスファルトの照り返しとで、温度と密度の上がった空気にぎゅっと詰めこまれた感じのセミの声が好きだ。空気が空気でなく、ゼリー状の音の塊みたいに感じる朝の舗装道路。まひるのいちばん暑いさかり、セミの声も消えてしまった無音のもわっとした空気も夏らしくて良い。そうして最近、けっこう気に入っているのが、硬い廊下に響くセミの声だ。外で過密状態になったセミの声が窓の隙間から細く流れ込んできて、響きのよい廊下で何倍にも大きくなって聞こえてくる、すこしだけ無機質になったあの音。自分はまったく関係のない涼しい場所にいて、でも外の空気の震えを肌に浴びているという感じ。廊下の冷たい床に、両足を投げ出してぺたんと座りこみたくなってしまう。今朝のように、しかくい部屋の、しかくい窓から、やたら天気の良い空を見上げたりしながら研修が始まるのを待っていたりすると、ふと心もとなくなる。自分は何をやっているのだろうか、と。でも、「こういうのもありかな、」と感じさせてくれるのが、廊下のセミの声だったりするのだ。なぜだろう？数年間も暗い土の中で生きてたった数日、夏空の下思いきり鳴いて死んでいくセミの、命の音を、その真摯な存在感を、まったく意に介さず今日も世界が動いているということにはっとするやら心のどこかで納得するやら、でもその割合に、自分という人間の本質を知る。そうしてそれを客観視できる自分の余裕に、ふと安心する。大げさに言えば、そういうことだ。普通サイズに戻して言えば、・・・どう言っていいか、分からないけど。

Jul 30, 2007

コメント(12)
「なつやすみ」という季節

　もちろん、自分じゃほとんど意識なんてしないだろう。だけどどんな選択にも、かならず何かしらきっかけはあるはずだ。それはテレビで見たどこか知らない国の映像かもしれないし、旅先で目にした取るに足らない風景かもしれないし、街角で耳にしたシンプルだけど胸を打つメロディかもしれない。その程度で充分なんだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　加納朋子　「いちばん初めにあった海」台風一過の空の下、ちらほらとたよりなく鳴き始めたせみの声がだんだん重たく地面を押さえつけるようになってきたと思ったら、ほら、もう夏休みだ。私にとっては「なつやすみ」というのは春夏秋冬と同等の、第５の独立した季節という感じがする。夏のど真ん中の、勢い付いてしまった夏が色褪せはじめるまでのほんの短い、特別な季節。今でもそう感じてしまうのは、この時期仕事が暇になるからかもしれないし、昼間に出あるく子どもが増えて空気がざわざわするからかもしれないし、夏祭りが増えるからかもしれないが、そういうことにいちいち浮かれてしまうあたり、要はいつまでたっても気分が一部、子どもなのだ。先週末は、近所じゅうに立っている「夏祭り」ののぼりに浮きあし立って、少々の雨ニモマケズ、娘たちに浴衣と甚平を着せて出かけてしまうし。今日はなんだか、だらだら過ごしてしまったが、明日はどこへ行こうか。いや、いくら曇天続きって言ったって、夏休みは夏休みなのだ。

Jul 21, 2007

コメント(8)
夜桜と正義

私は正義なんてものを信じてはいないから正しいかどうかなんて知ったことじゃないから心が前を、あるいは相手のほうをまっすぐ向いていなければどれだけ正論を述べたってよく出来たおもちゃのピストルと同じなんだよこの風で桜が散ってしまうのが惜しくて花見に行けなかった春が惜しくて夜中に思わずひとり、家をぬけだしてしまう。急な通り雨に磨かれて光る路面をすり抜けていく、ぬるい空気の流れ。「桜・満開」をすこし過ぎた川べりを歩いたのだけど、結局、向かったさきは近所のショットバーで、結局、酔っぱらってて、えっと、それで、・・・けっこういい気分。夜を妖しく彩り、そうして青空にも似合う、春のひかりを集めたような花が、近づいて見ると案外、地味な色をしているのは不思議だ。桜できれいなピンク色に染めるハンカチやなんかは、花びらじゃなくて、樹液で染めてるんだっていう話も。不思議だけど、それだけ、なんだけど。知りたいと思って近づいて、知ってしまったことで見えなくなるもの。もちろんその逆もあるだろう、ただ、本当はどう、とか言う前に、ただぼーっと見ていたいと思うときがある。急に思う。もしかしたら、桜じゃなくても良かったのかもしれない。

Apr 13, 2007

コメント(12)
それだけぶんの、

別に落ちこんでたわけじゃない、でもほら、下向いて歩くことだってあるしさ、街なかの職場の建物のわき、なんでもない陽だまりにキュウリ草や、そのほか直径１ミリとか２ミリほどの名もない、そうして私の好きな花々が無数に咲いているのをみつけてこんなとこにも咲いているんだと、ふと立ちどまって口もとをゆるめてしまう。春になっていっせいに咲きだしたソメイヨシノに、「あ、こんなところにも桜があったのか、」と気づく、その感じに似ているけれども、もうすこし気よわで、でも、もうすこしほほえましい感動。どこにでも咲いているのが雑草で、ならば「こんなとこにも咲いている」のはあたりまえで、めだたないのが雑草で、ならば、あるとき「ふと」気づくのもあたりまえかもしれないが、でも、たしかに咲いている、それだけの事実がそれだけぶん、心を軽くしてくれる。そういうのって、いいよなあと。あまりの天気の良さに思わず吹いてしまったくちぶえが空にすいこまれていくところや、葉桜が花びら以上に陽のひかりに良く似合っている朝や、コピー用紙の四角い包みを開けたときのあたらしい紙の匂いみたいな、なんでもない、でも、「すこし好き」なものの存在がたしかにあると気づくことって、けっこう良いものだよなあと。・・・いや、それだけですけども。

Apr 12, 2007

コメント(8)
アスファルトの匂い

もういいよ、おじいちゃん、と僕は胸の中で何度も呟いた。・・・（中略）・・・僕はちゃんと知っているから。動いていることは、千分の一秒ずつ止まっていることの連続なんだろ。だから人間は、一瞬をないがしろにしちゃいけない。千分の一秒の自分を繰りかえしながら生きて行くんだ。おじいちゃんに教えられたそんな難しいことも、僕はもうちゃんとわかったから。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅田次郎　「霞町物語」朝、いつものように家じゅうの窓を開け放って部屋に風をとおし、思わぬ暖かさに驚く。浮かれて外に出てみれば、陽射しにあたためられたアスファルトの上はまさに春めいていて、この季節によく合う筈の軽いコートさえ脱いでしまって、家族で近所のイタリアンまでぶらぶら歩いてゆく。今日はちっともすくめていない首すじに、雑談しつつひらひらと振る手のひらに、どこまでも呑気な空気の流れを感じて、この感じ、このあたたかさを何にたとえたら良かろうかと、道々考えたりしながら。遅くなって帰ってきてなんとなくニュースをつけたら、「今日の大阪の最高気温は２２度、４月下旬並みのあたたかさとなりました。」気温の変調のたびにこの、いつも同じようなアナウンスを、内心小馬鹿にしながら聞き流してきたけど、これって、よく分かる。よく分かるよなあと、そりゃあ初夏にむかう頃のアスファルトの匂いがした筈だよと、胸にすとんと落ちてくる言葉に今日は素直に納得する。明日もあたたかいという。雨になるみたいだけど、どうやって過ごそうか。さっきから強い風が違う空気を運んできているけど、まさか、夏の雨に濡れた道路の匂いまではするまいし。

Mar 4, 2007

コメント(12)
あすから、３月

あすから、３月。あすから、春だ。３月は春だ。そう決めてしまうと、気が楽だ。２月にいくらあたたかいと言っても、もうひとつ盛りあがりに欠けるし、３月にぐっと冷え込むことがあっても、それはやっぱり春の寒さなのだ。卒業式に雪が降っていようとも、それは春の雪だ。吐く息が白くとも、それは春の気まぐれだ。そう考えるほうが、単純明快で性にあっている。そうして春には、冬である今日よりは薄着で外を出歩く。少しだけ遠回りして目的地へ向かう。ポケットに手をつっこむのもやめる。少しぬるんだ風が、かすかに花の匂いをはらむ瞬間を、決して見落とさないように。できれば全身で受け止められるように。それで風邪をひいたとしても、それはいつもの、春の風邪だ。

Feb 28, 2007

コメント(18)
暦の上では

完璧な日だ、と思うのは、たとえば、空が美しく晴れている、それだけの日だ。「いいことないかな、」なんて、きょろきょろしていると大事なことを見落としてしまうよ。「こよみのうえでは」、という言葉を聞くと必ず祖父を思い出す。祖父はこの、暦というやつが大好きで、私と妹が子供のころ、やれ寒の入りだ、立春だ、夏至だ、秋分だ、などと言っては電話をかけてきて、たとえばいくら寒くても２月の声を聞いた以上、もうすぐやってくる立春なら、「今日は立春ゆうてな、春が立つと書くからな、こよみのうえでは今日から春なんやでぇ、まだ寒いけどな、もうちょっと我慢してやぁ・・・。」と、まるでまだ寒いのは自分のせいであるかのように言うのが常だった。そのすまなそうな電話はだけど、誰よりも、何よりも先に、私たちに春を知られてくれていたと思う。今は暦などと言う言葉を聞く機会さえ少なく、カレンダーの薄い文字にはかなく、ただただ優しかった祖父の面影を見る。

Feb 1, 2007

コメント(18)
ユキヤナギ

とりあえずは何も考えずに進んでみることに決めたんだかすかな予感にこころ傾くほうへ冬のユキヤナギが好きだ。あたたかくなって、うす甘い香りの、目がちかちかするほど白い無数の花をつける姿も、いかにも春爛漫といった感じで好ましいが、何といってもこの時期のユキヤナギに如くはない。花をつけるとかなりの存在感があり、遠くからでも簡単に見つけられるユキヤナギも、この時期、遠目にはただの枯れ枝の低木である。ところが近づいてよく見てみると、その枝のひとつひとつに、ちいさなちいさな新芽が覗いている。寒空の下、いちばん冷たそうな枝先に、きちんと準備整えた、かよわくも確かな春の兆し。「４月に一斉に咲き誇るには、これぐらいから準備が必要なんですよ、」と胸をそらすようにして。あとちょっと陽のあたる時間が長くなれば、新芽のひとつひとつが、神様でもこれ以上小さく作るのは無理です、というくらいのサイズのミニチュアのキャベツみたいな、丸い、まっさらな緑を覗かせ始めるのだ。それを待つのがまた楽しい。もう少し、待とうな、もうすこしだからさ、と、心の中で毎年ユキヤナギにかける言葉は、実は春を待つ自分にも向けられていたりして。

Jan 6, 2007

コメント(12)
猪肉を焼く

昨夜からのこの風は何だ冬を連れてくるならもうすこし静かに近づいてくれないか心の準備もいらないほどにいつの間にか完全にその白に包まれていたというぐらいにぼたん鍋が、私の冬の行事の一つになったのは、いつからだろうか。たぶん、それほど前のことではないと思う。それでも、もうすでにここがいちばんではないかと感じている丹波篠山のいわやへ、今年もぼたん鍋シーズンが始まったとたんに行って来た。大通りを完全に外れ、ふつうの田舎道をだいぶん入ったところにある、昔ながらの一軒家。囲炉裏端で、炭火で炊く鍋は、あまりくせがなく、ほのかな林の香りがして、おいしい。味噌味のスープの底のほうに、ころんと入った山芋も美味だし、さいごに鍋に卵をわって半熟ぐらいでひきあげ、ご飯に乗せて食べるのがまた良い。ところがどっこい、これに匹敵する、あるいはもしかしたら、これを超えるのではないかという猪肉の食べ方を昨日、紹介されてしまった。夫が仕事仲間から聞いてきたその調理法？は、「炭火で焼く」。さっそく夫に阪神百貨店の地下で、薄く切ったいわゆるぼたん鍋用の猪肉を買ってきてもらう。炭火は無理だったからそれを網で焼いて塩コショウして食べる。これが・・・うまいのである。臭みがまったくなく、ふだん以上に広がる香ばしいかおり。なぜか、深まる秋の匂い。ビールも進むって話ですよ。でも、部屋中煙もうもうで、その流れが目に見えるぐらい。ごみを捨てに冷たい風のなか外へ出たら、懐かしい「いわや」の匂いが、我が家の玄関先から漂ってくるのだった。

Dec 28, 2006

コメント(8)
クリスマス！！

ショルダーみたいに背負ったヒップバッグ強い風　白いマフラーの先　ひらり舞ったクリスマスだ。２人の娘たちはともかく、大人になった私としては、何といっても、飾り付けが楽しい。部屋をクリスマス用に飾るというのは、子どもが生まれてからの習慣だが、これが、子どものためにやっているという感じでもないのだ。毎年やっていて、飽きることが無い。家の前を思いっきりクリスマスモードに飾り付けている人の家を眺めるのもけっこう好きだ。たとえばすごくおしゃれな感じに飾り付けてあったとしても、道行く人皆の肩をたたいて「メリークリスマス！！」って言ってるような気安さを同時に感じてしまう。自分の家でやるのは・・・配線とか、防水とか、大変そうだから遠慮するけれど。今年もはやばやと飾った、夫方のおばあちゃんたちからもらった特大雪だるまも、うちの実家から送ってきたクリスマスツリーも、光ファイバーが入っていて色を次々と変えながらきらきらと光る、いかにも最近の代物だ。ひかりかがやく巨大な雪だるまが、音や振動に反応して「ほう、ほう、ほう、め～るぃい～くりすま～す！！」などと叫び、歌いだすのを見て、娘・１歳は最初、そそそと私の後ろに隠れていたが、１ヶ月近くたてばもう慣れたもので、歌いやむとすぐ、ほっぺたをこつんとつついて歌わせたりしている。あとはあれだ、オーストラリアから必死の思いで抱えて帰ってきた、「世にもめずらしい赤のスパークリングワイン」なるものを試す絶好のチャンスでもある。しかも、今年はM―１グランプリがこの日と来たもんだ。今年こそ勝つかなあ、笑い飯。ということで、皆さん、よいクリスマスを！娘・１歳にこき使われているスノーマン。サンタさんも、お疲れ様です。

Dec 24, 2006

コメント(6)
風がほどけて、

逆光に音がとぎれた、つぎの瞬間風がほどけて、走り出した君は、昨日は秋晴れの下、娘・５歳の保育所の運動会。大きいほうから２番目のクラスになった今年は、それなりに出番も多い。ところでうちの娘・５歳がかけっこ向きではないのは、走り方を見ればすぐに分かる。脚力というか、バネというか、たぶんその辺に決定的に足りないものがあって、実にたよりない足どりで走る。これでも、走り、跳ぶようになったのだから万々歳と思ってはいるが、運動会となるとすこーし物悲しい。自分がかけっこであまり負けたことがないから余計に、である。でも、得意じゃないことを、得意じゃないからといってただ、「やだなあ・・・」だけで終わらせて欲しくはないから、「いっしょうけんめいやろう、ね、」と言って送り出した。「いっしょうけんめいってね、かっこいいんだよ。」しっかりかまえて、よーい、・・・ドン。保育所の小さい園庭の端から端まで使って書いたグラウンド一周コースを、最初から最後まで、ちょうど真ん中の順位で走る娘・５歳。それが、本当に、ちからいっぱい走っていて。ああ、こりゃ心配ないわって思って、いつかの先生の言葉を思い出した。「がんばる習慣、がんばる姿勢、これがあれば何でも出来るんだ。」そうであってほしいなあ。親子競技では子どもを半分ほったらかして大玉を転がし、駆け抜けた私のおかげでちゃんと１等賞。ふふん。

Oct 9, 2006

コメント(6)
雨でも体操服

異国の写真の中で美しく笑う少女に私が実際に会うことはないだろうが、写真の少女は存在しない訳ではなくて、ただ、すごく遠くにいるというだけだ。見えなくても、触れられなくても、それでもかすかにある昼間の星や、雲の上の青空、みたいな希望の気配を疑ってはいけないよ。それを君が感じたのならね。薬の大量投与やら栄養ドリンクやら皆様のお言葉のおかげで、無事復活です、ありがとうございます。今日は娘・４歳が運動会の予行演習ということで、ちょっと早めに送りとどけ、雨が上がってなお蒸し暑さの残るあいまいな曇り空の下、物陰からすこし見物して帰ってきました。グラウンドの端にところ狭しと積み上げられた、手作りの大道具たち。先生方、お疲れ様です。ところで、べつに勉強が嫌い、というわけではないが、学校では行事の特別好きな子供だったので、先生からの「明日は晴れたら運動会の用意、雨なら６時間目までの勉強道具、どちらか疑わしいときにはどちらの用意もして来なさい。」などという指示には、ずいぶん困惑したものだ。たとえば運動会の日、朝から小雨が降っていて、まあ、「雨の日」になるんだけど、「これぐらいの雨なら強行出来ないこともないという気もしないでもない。」という感じがしたとき、どうしても、「強行実施」のほうに賭けて、傘をさしつつ制服を持たずに出かけてクラスでひとり、放課後までジャージで過ごす、みたいな事が何度かあった。教科書ノートは真面目に持っているあたりが、まわりからすれば（自分的にもすこーし）「？」な感じで。でも、「今日がよかったんだもん」、という思いだけ宙ぶらりんなまま、窓からやっぱり降り続いている雨を見ている時の気分を、今でもたまに思いだす。その点、保育所の指示は簡単だ。「あしたはよこうえんしゅうです。９じにきてください。」と言われたようだ。それでも娘は間違えて覚えてきていて、「あしたはよこうれんしゅうで、くじにおきなあかんねんてっ！」って張り切っていたけれど。

Sep 27, 2006

コメント(10)
キンモクセイの匂い、寒くなりかけた朝

自分らしく、などというのはちょっとかっこよすぎて照れくさいけど流されまいとは思うんだ。大人である前に正義である前に自分であれ、と言いきかす。不まじめがスタイルであるならばそのひとは満を持して不まじめであるべきだしうつむかないと決めたなら何としても顔を上げているべきだとにかくそれをやろうと決めたなら。その年いちばん最初に、キンモクセイの匂いに振りかえる朝には、運動会の朝を思い出す。甘い香りが引っさげてくる、それとは不似合いな感じのきりっとした気分。走るのが得意な子供だったから運動会の日はやる気満々で、ジャージの下、棒のような足を軽く動かして、ドアを開ければ朝のまだ冷たい空気と同時にどこからか流れ込んでるキンモクセイの匂いを思い切りすいこんで、今日は調子がいい筈、うん、今日は調子がいいぞと思い込んで、学校への道を急いだ。普段、遅刻ぎりぎりの、あるいは遅刻して入る教室へ普通の時間に入り、運動場の光の中へいすを持って出て行くのを今か今かと待ちかまえるため。切ないほどに一生懸命に。なぜか、ゴールした瞬間とか、優勝チームの発表とかいう劇的な出来事よりも、家を出て行くときのキンモクセイの匂いのほうを強烈に覚えていて、その匂いは毎年毎年、運動会の朝を思い出させる。もっと小さいころ、花を集めて遊んだことを思い出すよりも先に。そうして一瞬、「これからやってくる寒さにも自分にも負けないぜ」みたいな、そういう気分になるのだ。

Sep 22, 2006

コメント(8)
夕焼け

秋になると、夕焼けが日に日に綺麗になるのは何故だろう。そのあまりの鮮やかさに、手前にあるものはみな、くっきりとした影絵になってしまう。急に昔のことを思いだす。そういえばあのときの夕陽がこんな色だったとか、あの頃何時に起きていたとか、通っていた高校が高台にあったとか。私たちが陸上部の練習に使っていたグラウンドは町を見おろす傾斜の上にあって、フェンスの向こうはなだらかに、どこまでも続く家並みが見える。反対側を振り仰ぐと、さらに一段高いところに校舎があって、夕陽はその方向に沈む。放課後、汗と砂でざらざらする身体を折りたたんでダッシュをした後、顔を上げると校舎をつなぐ渡り廊下にブラスバンド部の子たちが強烈な夕焼けを背にして並んでいたりするのがシルエットで見える。まぶしくて誰が誰かなんてわからないけど、いつもひとりだけ、音を聞けばこの人と分かるサックス吹きがいて、あまりに良い音だからどうやって吹いているのかと聞いてみたら、練習でも、たとえばスケールを吹くだけでも、「好きな人に聴かせるつもりで吹く」のだ、という言葉。ここまで思い出して、それほどまでに丁寧にやってることが、さいきん何かあったかなあと、急に思ったという話。それだけの話。

Sep 21, 2006

コメント(8)
風の声

昔から、こころはにしき、と言うし、気持ちだけは、スペシャルな感じで、いきましょう。昨日は気持ちよく晴れたので娘二人と散歩。家から程近い川沿いの道。風を感じるためか、両手をやや広げた娘・４歳が「かぜもさんぽしてるみたいー。」などと詩的なことを言う。「そうやねえ。」少し強く吹く風は秋らしくすずしくて、本当に心地良い。数のふえはじめた小さなトンボが金色に光るはねを震わせ、つと近寄ってきて、空と平行のままほんの数秒、私たちの間に静止し、また意外なほどの速さで通りすぎていく。風も散歩してる、か、悪くないなあ。そんなふうに考えているところへ、「ひびちゃんは、かぜのこえもきこえるよ。」なんて言うので、「何？なんてゆうてる？」と勢いこんでたずねると、「びゅー、びゅーって。」・・・それは、風の声じゃなくて風の音だろう、と心の中でつっこみながらも、「・・・ほんまやねえ。きこえるねえ。」そういえば、最近名前を呼ぶと元気に片手を上げて「あーーい！！」と言えるようになった娘・１歳が、先ほどからやたらと大声で「あーーーい！！」を連発しているのは、それこそ風の声が聞こえて、何度も名前を呼ばれているのかもしれない、などと思う。

Sep 19, 2006

コメント(8)
何日かぶりに晴れた日

何日かぶりに晴れた日緩めたくちもと硬質な風吹く陽光の下好きな色：みずいろ・鮮やかなブルー好きな花：香りはバラ・姿はカスミソウ・名前はすみれ好きな木：ラクウショウ（名前は嫌い）好きな食べ物：じゃがいも・白ねぎ・ミクニのフォアグラ丼好きな飲み物：ギブソン・ビール（断然、ピルスナータイプ！）好きな本：リチャードバック・森博嗣・伊坂幸太郎・太宰治・江國香織・梨木香歩の著作などたくさん好きなアーチスト：スガシカオ・サンボマスター・キリンジ・ときどきスキマスイッチ好きなピアニスト：山下洋輔・小島良喜・Richard Tee（Stuffの）好きなひと：よく笑って、自信があって、優しい人。好きな動物：犬・チンチラ（おっさんみたいな顔のと一緒に暮らしていたことがある）・鳥なら、すずめ好きな俳優：森山未來好きな季節：初夏好きな天気：雨あがり好きな時間：陽が昇る直前・陽が落ちた直後好きな言葉：smile（冷笑の意味も含めて）好きなこと：歌う・鍵盤楽器を弾く・出かける・寝る好きな場所：何もない広いところ好きな匂い：夜の匂い好きな夢：飛ぶ夢好きなコード：シャープナインスそれらを好きな理由：わからない。ほんとうには。急にそんな気になってやってみたのだけど、好きなものをどんどん書き出す作業はなかなかおもしろいものだ。なんか、：プライスレス、みたいなまとめ方になってるけど・・・。ま、いっか。

Sep 14, 2006

コメント(11)
ふうりん

もらったふうりんを今頃ベランダにつるす。ちりん、ただの一音急に思い出したように薄いガラスは夕方の空気を震わせた。季節はずれのもの、というのは風情があるような気がしてけっこう好きだ。春の雪、秋のひまわり、冬の花火。別にそういうのを狙ったわけではないけれど、実家で私の祖母にもらってきた風鈴を今頃思い出して、晴れているからといって風にあててみた。限りなく薄く透明にちかい、シャボン玉色の虹を持つぽわんとしたガラスに青いガラス球が括りつけてあって、風を受ける部分は切りっぱなしの麻の布、といういたってシンプルなものだが、これが思いのほか高い空に似合うので驚いてしまう。涼しい風によりそうようにして揺れているふうりんはまるで空の一部のよう、でも突然、自分が何者であったのかを思い出して、ちりん、と鳴ってみたりする。歌うように、つぶやくように。ときたま歌っても風鈴なら、ときたま笑っても私、なのだろう。・・・でも、やっぱあれだな、食べ物は旬がいいですね。秋には秋刀魚がおいしくなるし。ＰＳ　この週末は、母宅に居候することに決まりました。

Sep 8, 2006

コメント(6)
九月の空

たとえば夕立はすごく夏らしいけど、その温度とか匂いとかは同時に夏の終わりを思わせる。夏の終わりを思わせるものは他にもたくさんあって、どれも風情があるけど心もとなさを運んでくる分だけ、ちょっとずつ好きじゃない。夏の終わり、風が急にすずしく心地よく、でもその分すこしだけよそよそしくなって、なんだかすん、とさびしくなる夕方、地上の熱を押し込めるようにして、あんなに近くにあった空も今は遠くて、雨のあと、それを口をぽかんと開けて見上げている自分が、Ｔシャツの上に無意識になんか羽織ってたりして。「九月の空」、という、芥川賞を受賞しているような本があって、タイトルに惹かれるものがあって、でも結局今まで読んでいない。九月の空は、まだ夏を引きずっている心には、そっけなくて、無責任にきれい過ぎるのだ。この、たわいの無い、取り残されたような感じを、本のなかでまで味わいたくない。いや、どんな話かも、知らないのだけど。どんなに、すごしやすくなったって言われても、涼しい顔した秋なんか嫌いだ。

Sep 1, 2006

コメント(6)
生きる

人は生きて、ただ生きて、死ぬまで生きる。それだけだ。（光野桃「ソウルコレクション」）街路樹が影をつくる小道に、公園の脇に、セミの死骸がぽとりと落ちている。何年も土の中で過ごし、空の真下で数日、激しく身体を震わせて鳴いて、そうしていまは、ただの石っころみたいになって地面に落ちている。短い夏を、生きおおせたのだろう。さいきん生と死にめざめた娘・４歳は「おおおじいちゃんはなんでしむだの？」にはじまり「ひびちゃんもいつかはしむの？」などと聞いてくるので困ったものだ。簡潔かつ哲学的な答えなど自分のなかには見当たらず、嘘をつくこともできず、「うー・・・ん、まあ、にんげんだからね、いつかはね、」と言ってしまい、悲しそうな顔をされて、「でもね、いつしぬかとかよりね、そこまでのあいだにどれだけひとにやさしくできるかとかね、どれくらいきらきらできるかとかがね、だいじなんだとおもうよ、」などといろいろ付け足してみる。あせってこっちまで「死む」などと言わないように気をつけながら。もちろんそれも嘘ではないけれど。でも、夏のセミが鳴くだけで生きるように、人は生きるだけで生きる、生きおおせる、それでいいんだけどなあとも思う。生きるということは、それ自体がきらきらしたことなんだから。そうしてその間、生と死の思索など何の関係もない娘・１歳は、姉の保育所用のリュックの片方のひもを肩にかけて、２、３歩あるいたりハイハイしたりを繰りかえしてリビングをつっきり、台所に到着していすにリュックがひっかかって動けなくなって泣き出すという日課に精を出している。物心つく前の今から、かばんを肩にかけて移動するのが好きらしい。この娘の生きざまを想像するに・・・なんか、すこーし、いやな予感。

Aug 31, 2006

コメント(12)
月とアスファルト

喧騒に散った言葉を捨てたまま見上げた空に欠けている月昼の名残りのぬるい空気のなかを歩く、夏の夜が好きだ。昼間、移動する車や電車の窓から祭りの準備をしているのが見えると、いてもたってもいられない気持ちになるのも、夏になると急に夜中にコンビニに行く用事が増えるのも、それが原因だと思う。昼のドアは、開けたとたん外の世界が家のなかへ、陽の光とともに射し込んでくる感じがするけど、夜になると開けたドアの外には、ずっと遠くまで続いている空間の広がりを感じる。街灯がつくる自分の影を追い越したり、またそれに追い越されたりしながら抜けていく細いみち、大通りへ出ればどこかへ急ぐ車の列が落としていく光の鎖、全部、こっちへ向かってくるのではなくて、先へ先へと繋がっているだけだという気がする。放たれた自分。さいきんは、アスファルトがためた熱で、なかなか涼しくならなくても、パチンコ屋のひかりで夜の端っこがへんに明るくて、星も見えなくても、それでも空気はちゃんと夜の匂いがして、「そりゃあね、夜だからね、」と気楽なふうだ。私はぷらんと腕をおろして、ぐんぐんとたらたらの間ぐらいの速さで歩く。夜風にあたるっていうやつ。本当は用事なんてどうでもいいのだ。

Aug 9, 2006

コメント(10)
夏のしるし

木々の葉が道に落とす、密度を増した濃い影は夏のしるしだ僕らの背中を押さえつけてひっきりなしに落ちてくるセミの声も夏のしるしだそうして君たちが片手でさげているビニールバッグも今しかない大切な夏のしるしなんだよ急に夏の暑さがやってきて、わあ、そういえば夏ってこんなものだった、と思い知らされている。期間に入ってもしばらくは見かけなかった「夏休み気分の子供たち」も、町に一気に溢れだした感じだ。彼らの顔にはまた夏か、なんて書いていない、何のためらいもなく陽の光のなかに駆け出してきて、まぶしさにちょっと顔をしかめるだけだ。遅い朝、家の近くを歩いていると、一目でそれと分かるプール用のビニール製のバッグをさげた子供たちが三々五々賑やかに通り過ぎていく。ああ、あったなあ、夏休みのプール開放。きっとあれだ。見慣れた夏のこどもの格好に、水着とタオルと出席カードみたいなものだけ入れた、色とりどりのビニールバッグ。帰りには少し重くなって、涼しい場所に着いて放り出すと一気に眠くなるあの。プールから帰る足はなんか、地面を歩くのにそぐわない感じにふにゃふにゃして、髪からは塩素消毒のにおいがして、そんなプール後のけだるい感じを想像して、夏だなあと、まったく夏だなあと、べビーカーで暑そうにしている娘を気にして早足で歩く。今日はボニーピンクのベスト版を買いに、保育所の帰り、ちょっと遠回りしてしまったので。

Jul 27, 2006

コメント(10)
ちょうどいい言葉

ちょうどいい言葉を探しでも言葉ではたりなくて小石を蹴った夏空の下小さな子供が言葉を覚えるのは、テレビとか、保育所とかもあるけどやっぱり家庭でだと思う。なんといっても直接話しかけられる機会が多いから。そうすると、家庭内にあるその家独特の文化圏といってもいいような話題や語彙のかたよりを、親としては少し気にしてしまう。たとえば音楽の話ばっかり出てくるとか。（娘・４歳は車に乗ると「やのあきこ」をリクエストする。）たとえば地名があんまり出てこないとか。（私に地理的な話をしても通じないから。）家によってはたとえば、夫婦の間で社会的な話題が多かったり、料理の名前がたくさん出てきたり、おばあちゃんがいてことわざをいっぱいつかったりとか、子供が言葉を覚える環境はそれぞれだと思う。うちで晩御飯の前後の６時とか７時ごろ、子供がアニメなんかを見ているとき、私が横で見ていても面白いと思えるものって（NARUTO以外）ほとんど無いから、パソコンに向かったり、ピアノ弾いたり、たまにはお笑いのＤＶＤをこっそり見ていたりもする。娘・４歳はテレビが気になりながらもこっちによってきて「（アンジャッシュの）うさぎとかめのねたみせてー」などと言って邪魔してくる。「いま、みらくるみみか、みてるんでしょ」「うさぎとかめも、おもろいもん、りょうほうみれるもん」。その娘は一般的な「話」のことを「ネタ」と言ってしまう。「お母さんの子供の頃の話をしてほしい。」というべきところが、「おかあちゃんのこどものときのねたやってー。」となるのだ。なんでやねん。・・・あなたの母は、お笑い芸人ではないのだよ。でも、こういう言葉づかいを覚えてしまう家庭文化圏を作ったのはおもに、私なんだよなあ。

Jul 10, 2006

コメント(15)
麦茶

本当の気持ちを冗談のフリして笑い飛ばし気楽なふうを装いながらなんだか元気のない君よ君の無責任な発言忘れていったCDまっすぐな視線その他いろいろのふつうのことが僕らの明日を少しずつ変えていく良い方へか悪い方へか今は判断のしようもないけれど夫はこのごろ帰ってくるとすぐに冷蔵庫の麦茶を飲み干し、新しいのを淹れるのを習慣としている。私は「お茶なんて買ってくればいいじゃん」という感じでいるので、こうやってわざわざ毎日淹れてくれるというのは、ありがたいことだ。２リットルのお茶ってけっこう重たいし。彼の中ではこだわりがあって、一回分ずつ紙のお茶パックに入った便利なものではだめなのだそうだ。やかんの中にざらざらと麦の粒を振り入れ、中で黒い粒々が踊るのでないと感じが出ないのだという。この、「パックじゃない麦茶」が近所のスーパーなどには売っていないのでなかなか厄介だ。でも、ほうけたようなぬるい空気の中、漂ってくる麦茶の香りは確かに夏らしくて、思わず小さくほほ笑んでしまう。だからといって私が毎日麦茶を沸かすようになるかと言うと、そうはいかないと思うけど。

Jul 6, 2006

コメント(6)
アジサイも乾くような陽射しに

アジサイも乾くような陽射しに外へ出るのをあきらめ君と扇風機の前ぬるい空気をかき回すだけのでも、君にとっては魔法のような装置さすがにいちばん暑い時間にベビーカーをひっぱり回すのもはばかられる時期になってきたので、お出かけはなるべく朝と夕方にしている。なかなか機嫌のいい子で眠くなければどこに行くのもたいして問題はない。ベビーカーが動いていれば。これが家の中だとそうはいかない。勝手知ったるリビングにはＣＤ以外珍しいものはそうない（手の届かないところに上げてある）、ということで、ハイハイが達者になったのをいいことに活動範囲を広げつつある。気になったものはつかまり立ちで取ろうとするから、ものの避難が難しくなってきた。何が怖いといって、彼女は何でも噛んで確かめるから困っているのだ。大人ならば、食べ物以外に対しての反応は見る、さわる、後は匂いをかぐ、があるぐらいだが、彼女はこのあと必ず味わう。なめる。噛む。かみちぎる。よだれでべとべとにする。彼女によって被害を受けたもの。ベッドの柵（噛んで塗装がはげた）。大量のティッシュペーパー（笑わせて口の中から取り出すのがまた大変）。ＣＤ。（アルファベット順の並びがぐちゃぐちゃになっただけでなく、取り出してまで噛まれたものも）。娘・４歳の絵本各種（ふにゃふにゃになったもの多数）。冷蔵庫に張ってある紙（いつのまにか落とされる。磁石もどこかへ持っていかれてなくなる）。ボールペン（歯を磨いた）。新聞紙（鳥の巣のようになった）。などなど。外で歩き出すぐらいになるまでには、日本語を解するようになっていて欲しいものだと切に願う。でも、娘・４歳も物心ついていたはずの去年、チョコレート色のバスの背もたれをいきなり噛んだものなあ。・・・彼女を取り巻くものたちの受難は続く。親がなんとなく楽しんでるからよけいに。

Jun 30, 2006

コメント(6)
花から見ると

しゃがんでごく、ごく低い姿勢になってみる。花から見るとこの場所はこんな感じ、なのですね。歩道脇に植えられたアベリアが白く咲き誇る場所からちょっと離れて、ごく、ごく小さな、名前も知らない花が凛と咲いているのをみると、この花はどんな景色を見ているのだろうと確かめてみたくなる。確かめてみたくなると思わずやってしまうのが私で、まわりの人がいないのを確認してしゃがんでみてしまう。たいがい、近くの草の葉っぱに邪魔されて空が見にくいのがちょっといやなのだが、花の顔？は真上を向いていることも多いから、木の葉っぱの重なりの向こうに、案外すっきりと空が見えているのかもしれない。ちょうど、地面に寝転がったみたいな感じで。しばらくそうしてみた後、あ、ごめんなさいと、すこーし気まずくなって顔をはなす。近づきすぎたかなと思って。花は、人の顔なんて見ていないけど、もし見えるなら、近づきすぎた私はどんな風に見えるのだろう。その点、花は完璧だ。いくら近づいても、花だ。

Jun 28, 2006

コメント(6)
公園

雨があがって僕らは元気になった。やりかけの仕事をほっぽりだし駅へと駆ける予測されうる最悪の事態も気にするものか僕等には見えかけて見えない明日があるだけだ。昼が長くなってくると思い出すのは、幼い頃遊んでいた公園だ。中途半端な傾斜の滑り台は、スピードを出すため水を流して立って滑って転び、手首をねんざしたもの。ぶら下がって揺らして遊んだ、みずいろの、鎖でできたジャングルジムのようなもの。今ぐらいの季節に、急に暗くなるのが遅くなって、夕方、ぬるくなった空気に、なんとなくもう帰る時間だと気付いているのだけれど、しかられないかな、もう少し大丈夫かな、まだ明るいし、と、やや心もとないながらいつまでもジャングルジムの上にいる。ジャングルジムは無敵だ。自分の部屋にもなれば宇宙船にもなる。知らないおじさんが近づいてきて下から、「もう7時やで。帰りや。」と言ってくれたりして急に、自分を取りまく現実　　　　宿題がまだだということ、もう夕ごはんのしたくができているであろうこと　　　　などの、ちいさな現実世界に引き戻される。帰るべきドアの向こう、台所のオレンジ色の灯り。あの頃と比べて、自分の世界が格段に広がったとも思わないけど、今はあれに気をとられたりこれに手を出したり、それについては忘れたふりをしたり、とにかくやることは増えて、そうして、公園は要らなくなった。子供のために公園に日参しても、気づかれないように、小さく途方にくれるばかりだ。

Jun 21, 2006

コメント(8)
夏まであと１７日！

何かに向けて心傾くその速さよりその大きさよりそのときの、たとえば風の色なんかをよく覚えているのは、何故だろう。夏まであと○日、と、私は簡単にカウントダウンできる。７月１日からは、夏だからだ。梅雨があけようがあけまいが関係ない。同じように、３月からは春と決まっている。好きな季節は勝手にはじめてしまおうという魂胆だ。ここから秋、とかここから冬、という線引きはないのだから勝手なものだ。ところで新しいかばんをネットショップで買うとき限定の楽しみのひとつに、自分のいつもの格好にそのかばん持っているところを絵に描く、というのがある。ボールペンでりんかくをとるだけでは飽き足らず、娘のクレヨンとか色鉛筆を借りてきて、調子に乗ると服装をかえ、ポーズを変えて何枚も何枚も描く。絵は全然うまくないからたいして参考にはならないけど、楽しいからやってしまう。同じようにして７月には１日から勝手に夏のイメージを塗ってしまう。楽しいから。７月に雨ばっかり降ってたりするとすこーし疑いそうになるし、６月でも晴れまくっていると疑問を感じたりもするが、もう決めちゃったんだから仕方がない。この線引きがいちばん揺らいだのはたぶん、大学生の頃だと思う。軽音楽部の合宿で毎年７月のはじめに白馬に行く。梅雨明けまぢかの近畿圏から、冬はスキー客でにぎわっているはずで、でも今は閑散として、仕方がないからバンド客を相手にしている夏ロッジ（スタジオ付き、こういうところはけっこうある）、なんかに着くと、一週間ほどして帰るときまでだいたいずっと、雨のなか機材をひっぱりまわすというイメージである。大阪に帰ってきたらいきなりかんかん照りの青い空。でも、それでも、私の夏は７月にすでに始まっているのだ。だから、今年の夏まではあと、１７日！

Jun 14, 2006

コメント(6)
水際の足跡

水際の足跡かわく気配しておなじ速さで夏駆けてくる娘・４歳のプール開きが今月中ということで、昨日は水着を買いに行ってきた。保育所の水着はいわゆるスクール水着ではなくて、ビキニみたいなセパレートタイプでなければ何でもいいよ、ということになっていて、選ぶのがなかなか楽しい。ピンク好きの娘が今年選んだのは、ちょっとキラキラした感じのうすいピンク色の、ウサハナちゃんもようの、ひらひらのスカートが２段ついたもの。片方の肩とぼうしにリボンもついてる。でも去年の夏、私の出産のため実家にいた娘は、プールに入る機会があまりなくて、ほぼ毎日入っていたクラスのほかの子達と差ができちゃったんじゃないかなあ、などとひそかに心配する私は、風呂でちまちまと顔つけの練習に付き合ったりしている。浴槽にお湯を足しながら片耳だけでも水面につけると、こぽこぽ、という音がさあっと自分を取り巻いて、水の底にいるような気分になる。ちょこんと置き去りにされたような感じ。水中メガネでもかけて潜れば、水底に揺れる光の筋なんかも見えるのかもしれない。

Jun 8, 2006

コメント(8)
らしくあれ

「らしくないね」「らしくあれ」などと簡単に言うけれど誰それらしさ、なんて不確かなもので元気いっぱいならばあの人らしいのか口の端に笑みを浮かべてれば自分らしいのかほんとに？　と、ときどき誰彼かまわず確かめたくなる。日傘をさす人を多く見かけるようになると、あ、そろそろ帽子の季節かなと思う。もともと、視界が狭まる感じがあまり好きではないのだけど、真夏に紫外線対策を怠って母の家に行ったりすると、「その年になって日傘もささず帽子もかぶらずに、・・・」と嘆くので、近年は夏にちょっと遠くに出かける時は、くしゃくしゃっと丸めた帽子を持ち歩くぐらいのことはするようになった。両手が自由なんだから日傘よりはましだ。ことしは、オフホワイトの夏帽子を買ったから、帽子をかぶるのも少し楽しくなるかもしれない。いわゆる麦藁帽子に同素材のほそーいリボンがぐるっと結んである。くたくたした感じがいい。なんか、草原っぽくていいかなあと。ふつうに街中を歩くにも、広々とした場所を歩くような気分になるのを期待しても、いいかなあと。それに何より、夏らしいかなあ、と。でも、もうそろそろかぶるべきだろうと思われる今、まだあんましかぶってないんだけど・・・。やっぱりちょっと、空が見えにくいし・・・。

Jun 5, 2006

コメント(6)
病気に名前をつけるのは

夏がすぐそこまできているのをいちばん感じるのは陽射しの強さ、そのものではなくて道に落ちる木の影の濃さによって、っていうことが私は多い。でも、影は光を際立たせるためにあるんじゃなくてそれ自体にきっと、意味がある。それは、嘘が本当を、願いが現実を際立たせるためにあるんじゃないのと同じだ。この道にもいつかは、セミの声が落ちてくる。病気に名前をつけるのは、なかなか意味のあることだと思われ、たとえば「特定できかねますが何かのウイルスに感染して咽頭が炎症を起こしてますね」と言われるより「カゼですね」と言われたほうが気が楽だ。結局どんなウイルスにやられているのかわからず、また、薬も対処療法でしかないのに、なんだカゼかよ、正体見たり、みたいな気持ちになってしまう。上の娘がはじめて足のしびれを訴えたとき、だから私はすぐに「しびれがきれたんやねー」と言ってやるべきだったのかもしれない。でも、「あ、あしが、しわしわになってしゅわしゅわするー・・・」と言う感性がすてきにかわいくて、思わず「しびれがきれた」という言い方を教えるのを遅らせてしまった。病気とか体の状態だけじゃなくて心も、ある言葉に当てはめるとなんとなく落ち着く、ということはよくある。待ちどおしいとか、落ち着かないとか、緊張するとか、せつないとか。でもその言葉を知ってしまったことで、もっと微妙なニュアンスを表す機会を失ってしまったようにも感じて、一言であらわせる事を長々と説明してみたりする。名前をつけるのがもったいなくて。

May 30, 2006

コメント(4)
キュウリの匂い

淡い　星の気配のするほうへ歩いていこう雨のあと夜の手前まっすぐ道が続いていくほうへ近所の陽あたりのよいところには、春先から、たくさんの花が咲き誇る。とはいっても、ほとんどが雑草と呼ばれる、ちいさなちいさな花たちで、摘むことも、私の力量ではきれいに写真を撮ることもできないほどのサイズなのだが、そういう花ってよくみると本当にかわいい。あたたかい日の空を映したような青いのが好きだ。有名どころではオオイヌノフグリ。１センチぐらいのうす青い花で、陽の当たる所ならいたるところに生えているが、何と、ヨーロッパ、アフリカ原産の帰化植物だそうだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（☆詳しい説明は、野の花図鑑へ・・・。）キュウリグサもかわいい。パステル調のみずいろで内側は絵のようにきいろ、でも２ミリぐらいの花だ。しゃがまないと見えない。「葉や茎をもむと、キュウリのようなにおいがします」って、かわいそうでできないよ・・・。そういえば、以前、きゅうりの嫌いな友人に聞いたのだが、「何が嫌いってきゅうりの匂いが嫌い」で、「きゅうりが背後に近づいてくると、匂いで分かる」というのだ。私には背後にあるきゅうりの匂いなんて分からないし、きゅうりがそれほど匂いの強い食品だということはないと思うけど、とにかく嫌いなのだろう。この花の匂いも嫌いだろうか。それにしても、好き嫌いとは不思議なものだ。違う嗜好の人に説明すると、いくら思い入れが強くてもいまいち説得力に欠ける。

May 27, 2006

コメント(6)
洗濯、あらためイメージバトン

好きな季節は、だんぜん、夏だ。陽射しがクラクラするくらい明るいのも、空が近いのも、Ｔシャツで外へ出られるのも、洗濯物がすぐかわくのも、ぜんぶ好きだ。だから、たしかな陽射しを感じるとわくわくしてしまう。で、近頃「洗濯物を干す」のがかなり楽しい。晴れていれば、の話だけど。脱水し終わって小さくなってるいろんなお気に入りたちを、端までぱんぱん、とのばし、うんうんきれいになった、いい匂いになったとにこにこしながらどんどん干していく。ベランダであほみたいに歌をうたっているときすらあって、このときのテンションは、おいしいもの食べたさにしかたなくごはん作っている時とはぜんぜん違う。そうして夕方、気持ちよくかわいた洗濯物を、少しすずしくなった風のなか、ばさばさと集め、一足先に薄暗くなりつつある部屋のなかに放りこむ。外の気配もいっしょに。×　　　　　×　　　　　×・・・と書いていたら、coji0117さんからイメージバトンがまわってきました。って平静を装って書いてみましたがバトンって、はじめてなんですー。どきどき。海－川－水雨－雲－空－青－ポカリスエット－スポーツ飲料－潤う－汗－夏－クーラー－寒い－冬－雪－雪だるま－白－白熊－カキ氷－祭り－混雑－ラッシュアワー－電車－通勤－会社－深夜残業－夜営業－コンビニ－新商品－春物－ピンクの唇－かわいい－犬－ワンパク－子供－宝物－思い出－写真－笑顔－黄色－ひまわり－太陽－麦畑－麺－時計台－味噌ラーメン－もやし－日陰－涼しい－クーラー－夏－ビール－枝豆－冷奴－豆腐－大豆－納豆－水戸－水戸黄門－印籠－薬－風邪－発熱－インフルエンザ－ワクチン－注射－刺す－針灸－あちこちガタがきてる－老化-年齢－数字－算数－足し算－引き算－掛け算－割り算－割り勘－飲み会－焼き鳥－地鶏－刺身－マグロ－中トロ－寿司－江戸前－チャキチャキ－はさみ－かに－旅行－海外－ハワイ－力士－チョンマゲ－SAMURAI侍－ジーコJAPAN－サッカー－鹿島アントラーズ－柳沢敦－柳沢信吾ーあばよーねるとん－公開番組－ラジオ放送-オールナイトニッポン－学生時代－部活学生時代って言ったら、もう、部活です。中・高時代陸上、大学では軽音。クラブのために、学校行ってましたっ。（いや、好きなコに会うためってときもあったかな。）・・・で、これを、３人に回すって？・・・わわ、だれかやってください・・・。

May 22, 2006

コメント(4)
さむくない夜に

さむくない夜に昼間のかっこに一枚だけシャツをはおって外に出るのは気持ちいい。この雨があがったら長く伸びた自分の影を追いかけて、追い越して、また追いかけて星の匂いをかぎに行こうか・・・。　・・・と書いていた昨日の夜がそうだったんだけど、夜に窓を開けて、たいして寒くないと感じる最初の日は、とてもうれしい。そのまま窓を開けっぱなしにしておくと、たいていは部屋より温度の低い外から、下のほうを這うように冷気が入り込んでくる。　ふとんの上で、夜風の匂いをかいで寝るのは自分にとって、新しいかばんにものを詰めこむときや、ピアノソロを調子よく弾くときや、やたらまっすぐな道をドライブするとき、子供がこっちに向かって走ってくるとき、おいしいものを食べるとき、等とならんで、人生の至福の時ベスト１０ぐらいには入ると思う。いや、１０ではないかな？　こうやっていると楽しいことは次々思いうかんで、簡単に２０個ぐらい出てきそうな気がする・・・。　とにかくそうやって、外からの風のなかで寝ていると、なんとなく、真夏の夜にアスファルトの上でそのまま、あお向けにに大の字になって寝転ぶのを想像してしまう。不可能じゃないけど、まずやらないとは思うけど・・・。　その辺まで考えて、窓を閉めて寝ました。また風邪をひかないように。

May 17, 2006

コメント(0)

全49件 (49件中 1-49件目)

ジャンル別一覧

人気のクチコミテーマ

音楽のお仕事♪

デビルギター

(2024-10-02 06:00:16)
防弾少年団(BTS)のパラダイス

防弾少年団バンタン公式グッズジ…

(2024-10-07 00:00:24)
吹奏楽

第15回　松商学園吹奏楽部ＯＢ・ＯＧ…

(2024-09-29 21:31:23)

ピアノを弾くMaryAnn♪ - Mary Ann pianoplayer -

[季節] カテゴリの記事

メリークリスマス、と それと、

君とうたった歌

gin-clear

ちょうど真ん中で、

みずいろの花

あかるいオレンジの

タンポポ

秋の夜長

Toccatina

桜

ここから

風に怒りをぶつけても

鈍色の空の下

夕方のすこし手前

トンボとりの王様

金色の空

夏の空気

「なつやすみ」という季節

夜桜と正義

それだけぶんの、

アスファルトの匂い

あすから、３月

暦の上では

ユキヤナギ

猪肉を焼く

クリスマス！！

風がほどけて、

雨でも体操服

キンモクセイの匂い、寒くなりかけた朝

夕焼け

風の声

何日かぶりに晴れた日

ふうりん

九月の空

生きる

月とアスファルト

夏のしるし

ちょうどいい言葉

麦茶

アジサイも乾くような陽射しに

花から見ると

公園

夏まであと１７日！

水際の足跡

らしくあれ

病気に名前をつけるのは

キュウリの匂い

洗濯、あらためイメージバトン

さむくない夜に

ピアノを弾くMaryAnn♪　- Mary Ann pianoplayer -

メリークリスマス、と　それと、