『地脈』
あ、新しい店ができた。久しぶりに通った道に、居酒屋ができていた。この場所は、その前は、輸入小物の店。その前は、子供服。その前はスポーツ用品店。くるくる経営者が変わっている。駅からの商店街と大通りをつなぐ路地で、大きな電化店が先にあり、場所はいいように見えるのだが。どうして、こうもつぶれるのだろう。この辺は、急速に人口が増えて、昔を知らない住民が多い。私が子供のころは、バスの通る大通りと、それに平行して地元商店街。大通りに面して電化店ができる前は、この路地は全くの裏通りだったのだ。昔、ここには祠があった。何を祀っているのか、誰も知らない。地主が代替わりして、売ったのだと思う。大通りと商店街をつなぐ路地に、どんどん新しい店ができ、それなりに栄えていたのだが。景気が悪いのは、不況のせいと、誰もが思う。だが、ここに店ができて、人の流れが変わってから、どういうわけか、大通りの電化店もつぶれてしまった。そんなふうに、“入れ替わりの多い場所”が、この路地の続きのあちこちにある。通りとしては便利なので、解せない話だ。今となっては、ここの祠が、なんだったのか、誰も知らない。