えべっさんと亡き父の思い出
今年も西宮戎神社の福男レースのニュースが流れています。このニュースを見るたび、亡き父を思う私です。小学生の頃、阪神沿線に住んでいたので、よく父は西宮戎の「えべっさん」に連れて行ってくれました。それは、決まって10日の本戎。この日は父の誕生日でもあったのです。塗装工だった父。景気や天候に左右され、収入の安定しない暮らしの中で、「今年こそええ年にしてくれなはれや。」そんな願いを持ち、笹を買い、お参りをしていたのでしょう。屋台で熱燗を買い込み、すずめの焼き鳥をほおばる父を見て、「すずめなんてよう食べるわ。」と思いながら、何をねだろうかと、にぎやかな夜店の屋台を眺めていた私。ばんりが一歳になる直前、15歳から住み慣れた関西を離れ、母とともにそれまで一度も足を踏み入れたことのなかったオホーツクに父はやって来ました。雄大な自然、温泉、おいしい海産物…3年前、突然がんでなくなるまで6年間の北海道生活を大いに楽しんでいました。福男レースのニュースは、私にとって「誕生日だね。」とひそかに父の冥福を祈るスイッチになっています。