「マジェスティック」を観て
人生に絶望した男が記憶をなくし、辿り着いた小さな町で、住人たちとの交流を通じて、次第に希望を見出していく姿を描いた、ちょっとファンタジー&コメディがミックスされたヒューマンドラマです。 “「ショーシャンクの空に」であきらめない“希望”を 「グリーンマイル」で“希望”が生み出した奇跡を そして2002年、 フランク・ダラボン監督が贈る3つめの希望のものがたり” (公開時のキャッチ・コピーより)全米では2001年、日本では2002年6月に公開されました。≪ストーリー≫1951年のハリウッド。新進の脚本家ピーターは、見事ハリウッドデビューも果たしたが、当時、猛威をふるっていた“赤狩り”のメンバーと誤解されてしまう。新作の映画化も見送られ、絶望したピーターは、泥酔したまま、当てもなく車を走らせ、橋の上で事故を起こし川に転落する。頭を強く打ち意識を失ったピーターは、見知らぬ海岸に流れ着き、偶然、通りかかった老人に助けられる。けがの手当をするため、ローソンの町へと案内されるが、記憶をなくしていたピーターは、第2次大戦に出征したまま、行方不明になっていた町の英雄ルークと間違われ、ルークの父、そして町中の人たちから大歓迎されるのだったが・・・。監督・製作は、フランク・ダラボン、製作総指揮はジム・ベンク、脚本はマイケル・スローン、撮影はデヴィッド・タッターサル、音楽はマーク・アイシャム。キャストは、ピーター(ルーク)にジム・キャリー、父ハリーにマーティン・ランドー、他にローリー・ホールデン、アレン・ガーフィールド、アマンダ・デトマー、ボブ・バラバン、ブレント・ブリスコー、ジェフリー・デマン、ハル・ホルブルック、デヴィッド・オグデン・スタイアーズ、ジェームズ・ホイットモア、ロン・リフキン、ジェリー・ブラック、キャサリン・デントなど。「ショーシャンクの空に」(監督・脚本) 2時間23分「プライベート・ライアン」(脚本) 2時間50分「グリーンマイル」(監督・脚本) 3時間8分「マジェスティック」(監督) 2時間33分ダラボン監督の代表作は、いずれも長編大作ですね。どれも映画館では観ていませんが、内容の良し悪しは別にしても3時間を超える作品は、いい座席の映画館じゃないとキツイかも。(笑)どの作品にも共通して言えるのは、キャラクターの心情や想いがじっくりと描かれていることではないかと思います。ジム・キャリーもハチャメチャなオーバーアクションのコメディもすごく楽しくて、ノリノリの“十八番”と言えるかと思いますが、こういう作品で見せる“役者”っていう感じも似合っていると思います!戦争で多くの若者を失った町の人たちには、深い悲しみや失望があり、戦死した息子の写真を窓辺に飾り、心の傷が癒されることはなく・・・。そんな未来すら失ってしまったような町に、突然、行方不明だった、ルークにそっくりのピーターを、ルークの父親はもちろんのこと、町中のほとんどの人たちがルークに間違いないと思い込んだのも、“明るい希望”を求めていたからのことだと・・・。冒頭でピーターが共産主義の“赤狩り”の問題に巻き込まれ、また、終盤で堂々と立ち向かう姿もアメリカの史実があってのこと。それは、映画の世界でも実際に大きな影を落としていました。1999年のアカデミー賞授賞式で栄誉賞を受けたエリア・カザンが壇上に上った時、会場の反応は2つに大きく分かれました。ほぼ半分の人たちは立ち上がって拍手を贈っていた中で、座ったまま冷ややかに眺めていた人たちも多かったそうです。厳しい表情で腕組みをして、否定の意志を表したニック・ノルティ、スピルバーグ監督は、拍手はしていたものの席を立とうとはせず、また、リチャード・ドレイファスは反対声明を出したそうです。それには、“赤狩り”の時代に、エリア・カザンが共産党員を売り、その裏切りによって、映画に携わっていた多くの人たちが弾圧され、優秀な映画人たちの才能が奪われ、失ったという出来事がありました。栄誉賞を授与するにあたって、映画芸術科学アカデミーの理事が、「芸術に政治が入り込む余地はない。 ならば、優れた作品を残したカザンは賞に価する」と述べたそうです。先日観た「グッドナイト&グッドラック」では、その“赤狩り”の中でも有名な“マッカーシズム”について鋭く描いていましたが、60年以上経っている今でも、アカデミー賞の受賞式であったり、新たな映画であったりとアメリカではその史実が根深く残っていることを感じました。共産党員だったことを自らの過去として告白しているそうですが、エリア・カザンも犠牲者の1人ではなかったのかと・・・。