伊良湖ライナーに想う
12月は袋井市を中心にコンビニ店をサポートしていたんだけど、普段は採算不振店とかオーナー不在の仮直営店舗をまわることが多かった中、ここは隣が工場とあってなかなか忙しい店で、三交替制のせいか朝4時半頃にピークがくるのが特徴。しかも静岡とくに遠州地域は海外から日系人の就労人口が高いので、そうした方々のニーズに合わせた品揃えもしなければならない。タバコの注文だって「マールボロゥ、ヒトゥツゥ、クダスァイ」とマールボロの発音がかっこいいのだ。パッと見は日本人と変わらないのにね。で、この年末年始はとても休めそうになく、年末は27と28の両日が最後の休みで年始も2日だけ。その後は七草7日まで休みなし・・。まぁ、客商売ですからね、諦めてますけど。で、以前からバス好きのほっけが気になっていたのは1月14日の運行をもって廃止となる「伊良湖ライナー」の存在。このバスは豊橋鉄道(以下 豊鉄)がJR東海バスと共同運行により、文字通り渥美半島の先の伊良湖岬と東京駅を結んでいた夜行バスのことで、開設当時は昼行便まであったのだ(しかも昼行・夜行とも運賃同額)。それとは別に、豊橋駅と伊良湖岬を結んでいたダブルデッカー(2階建バス)による「伊良湖ライナー」もあった。幻に終わったが、豊鉄自体が鉄路で三河田原から伊良湖岬を計画していた歴史もあったし、現在でも豊鉄バスでは豊橋と伊良湖岬を結ぶ路線を"伊良湖本線"と称しているぐらいの幹線路線である。こちらは伊良湖岬ターミナルのタクシーのりば。すでに閉園した「フラワーパーク」の文字が寂しい。そんな幹線から「渥美花の村」や「フラワーパーク」などの周辺観光地をかかえていたが、そうした施設はすっかり姿を消してしまい、路線バスを利用して訪れる観光客も激減したのも、廃止の背景にあると考えられる。ちなみに現在の「フラワーパーク」跡地まではまだバスが乗り入れているが、そのバス停の名は昨年4月に「浜辺」と改称された。そのきれいなイメージとは裏腹な、廃墟以外には人家も少ない場所を以前訪れたことがあるが、虚しさだけが残った。私が特段にこの夜行系統に思い入れが深いのは、夜行便なのに東京から豊橋まで5千円以下で結んでいたこと(当時4900円だったので、豊橋から名鉄に乗り換えて名古屋に帰っても、ドリームなごや号より安かった)、それに加えて15年前の東名高速系統では珍しい3列独立シートであったこと、そして東京駅のバスターミナルを一番最後に出発する(23:50)ので都内での滞在時間が長く取れたことなどの理由があるからだ。このメリットを生かして、私が主宰していたラジオ番組のサークルの東京でのイベントには、参加リスナーを募ってこの便をほぼ貸切状態で予約したこともある(おカネのない学生さんには片道大垣夜行(現ムーンライトながら)を使っていただいたりした)。まぁそんなわけだから、廃止前にもう一度乗っておきたかったのである。これは12月27から28日にかけて乗車してきた記録なのですが、もう2月になってしまったので(苦笑)、運行最終日付けでUPしております。現在の伊良湖ライナーは、車両が更新された上に着席定員の確保から2人がけ2列のポピュラーな配列に戻されてしまったが、運賃は豊橋-東京間で4500円とさらに安くなっている。終点伊良湖岬まででも5100円だ。当然ラストまで乗るつもりだし、海辺の朝日を見たいからあえて東京発の下り便を選んだ。となると、まずは始発地の東京駅まで行かねばならない。27日の夕方、掛川駅から新幹線に乗り込んだ。とはいっても、次の静岡駅でいきなり途中下車である。17時09分。この後の東海道線上りは特急が2本続行で出発する。画像はその1本目の「ふじかわ11号」甲府ゆきで、この特急が出た後に私の乗る「東海4号」東京ゆきが入線する。新幹線から在来線の特急・急行に乗り継ぐと特急(急行)料金が半額になるので、あえて静岡から在来線に乗り換えることにしたのだ。さて、特急の出発まで少し時間がある。東京に着くまでも時間がかなりある。改札でも出て、あったかいファーストフードでも買ってこようと自動改札に乗車券を投入したところで、思わぬアクシデントに出遭う。乗車券が、出てこないのだ。アタマのいい自動改札機の場合は、機械が自動判別して途中下車のきっぷを出口で吐き出すのだが、静岡駅のはいっこうに出てこない。しょうがないから事情を話して、駅員を呼んでくる。「あ~、これはいけませんね。前途放棄になっちゃいますよ」私は耳を疑った。前途放棄とは読んで字の如く「その先は乗りません」という意味だ。もちろんそんな気はない。特急券を指し示し意思を伝えると、「回数券はね、途中下車できんのよ」・・・・そうだった。すっかり忘れていた。旅費ケチって金券屋で回数券にしたんだった。しかもSFカードを使うクセで、ご丁寧に連続する2枚の回数券をを投入している。仕方ないから売店ですっかりアイテムの少なくなった駅弁から一つを買い、特急に乗り込んだ。旅の恥はかき捨てとはよくいったものだが、どちらかといえば鉄道ファンらしからぬ「弘法も筆の誤り」である。駅員が書き入れた「誤投入」の文字が情けない。もちろん、酒も欠かさない。ちなみに、磁気データも「前途放棄」が記録されているのはわかっているので、東京駅では有人改札をでなければいけない。さて、せっかくの東京駅である。廃止間近の「伊良湖ライナー」も大事だが、この春廃止といえばこちらもそうだ。寝台特急「出雲」である。06年春のダイヤ改正での廃止が既に発表されたあとなので、このように方向幕を携帯電話で撮影する姿があちこちでみられた。これも時代である。ちなみに東京駅では、機関車がホームの最西端の先っちょにあるため、寝台特急のヘッドマークを撮影するのが困難。あとの獲物は客車の「出雲」マークぐらいだ。ちなみに、名古屋と奈良を結ぶ急行「かすが」も廃止が決まっている。さて有人改札を出て、ひとまず八重洲南口のバス乗り場へ。昼行便もつくば方面へのバスがまだ発車しているのだけれど、ひときわ目を引いたのがこちら。羽後本荘ゆき「ドリーム鳥海」号である。当時羽越本線は突風による特急列車横転事故で不通、その影響で寝台特急も運休だから実質的に振替輸送を担う役目を果たしており、おまけに帰省ラッシュも加わって、バスのりばは大賑わいである。こちらは繁忙期と週末のみに運転されている「スーパードリーム大阪1号」。スーパーと名がつくだけあって、シートもゆったり。通常のドリーム大阪号より300円高い運賃設定(8,910円)になっている。スーパードリーム号も出発すると、いよいよ私の乗車する「伊良湖ライナー」の乗車時間がせまってくるが、実はこのバスが最終便というわけではない。「伊良湖ライナー」と同時に、浜松駅ゆきの「ドリーム静岡・浜松」号が出発し(上の画像、実際には"伊良湖岬"と"静岡・浜松"が交互に表示されている)、そのあと日付が変わった0時半発、常磐高速線つくばセンターゆきの深夜バス「ミッドナイトつくば」号が最終となる。深夜運賃ということで料金は2千円。通常運賃はつくばエクスプレス(TX)と競合するので同運賃の1150円だが、TXよりも遅い終便ということで人気も上々である。さて、「伊良湖ライナー」に乗り込む。きっぷうりばでは満席だったが、若干の空席がある。おまけに0時を回ったというのに、まだ出発していない。これは、神田駅での事故発生のために京浜東北線が運転見合わせとなってしまい、本来ドリームなごや号に乗るべきだった乗客がまだ立ち往生しているという連絡が入ったからである。0時10分過ぎ、乗り遅れた4人の女性客を"救済"し、約20分遅れで発車した。しかし、今回の例は極めてまれなケースとしても、この「伊良湖ライナー」がなくなったら、どう救済するのだろう。名古屋に行きたいのに、今後は浜松止まりの夜行バスしか残されていない(浜松までの運賃は4,800円)。その上、さらに名古屋まではこだまで40~50分、在来線でも80分以上かかる。さらに運賃もかかる。乗客も余裕をもってバスのりばに来てほしいとは思うが、どうにも歯がゆい。夜明け間近の保美(ほび)バス停(田原市)。ここが豊鉄バスの車庫である。私以外の乗客は、すべてここ保美で下車した。伊良湖岬まで行ったあと、この保美の車庫で夜まで休息。JRバス車両が伊良湖までやってくる、そんな風景も、もう見られない。夜も明けてきた。車庫の職員に引継ぎをしたあとは、終点伊良湖岬までラストスパート。しばしの貸切状態を、先頭席で堪能である。6時45分、終点の伊良湖岬バスターミナルに到着。運転士は伊良湖岬から静岡インターまで乗務したあと、東京からの便を同インターで引継ぎ再び伊良湖岬まで戻ってくるそうで、話によれば2週間に一度程度この行路を担当したそうである。静岡を境に東京側をJR東海バス、豊橋側を豊鉄バスが担当していたのである。1台をまさに2社での「共同運行」であった。「もうこの(JR)車両に乗務する機会もないでしょうからね」と、彼自身もケータイに写真を取り込んでいたのが印象的だった。岬に着いたが、この先鳥羽・師崎方面への船舶は8時過ぎまでない。寒風吹きすさぶ中、途方に暮れた。