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木曜日に、国立能楽堂に、「狂言ござる乃座 55th」を観にまいりました。 この日の番組は、狂言「附子」・「清水座頭」・「弓矢太郎」。 狂言「附子(ぶす)」。 所用で出かける主人(野村太一郎)が太郎冠者(野村裕基)と次郎冠者(野村遼太)に留守を言い付けると、 附子の入った容器を出してきて、 ここから吹く風に当たるだけでも「死んでしまうぞ」と2人に言い残して出かけて行きます。 ~「ぶす」とは、トリカブトから採れる毒薬だそうです。~ 最初は、附子におびえる2人でしたが、 やがて太郎冠者が恐いもの見たさで、附子の蓋を開けてしまいます。 そこに入っていたのは、 どんみりとした黒い塊…でもなぜか美味しそうな匂いが…。 中に入っていたのは、砂糖でした。 2人は夢中で舐めてしまい、 すっかりなくなってしまった附子の言い訳は…。 今回は、萬斎さんの長男の裕基君、従弟の遼太君、そして故野村万之丞さんのご子息の太一郎君と、 野村一門の若手3人が演じたフレッシュな「附子」でした。 ~故野村万之丞さんのご子息の野村太一郎さんが、野村万作家の演者として出演するということは、 万蔵家と万作家の関係からすると、かなり意外なことですね。 太一郎さんは、若くしてお父様である万之丞さんを亡くされて、 かなりご苦労をされたのでしょうね。 体格も良く、ハリのあるお声、 野村万作家の演者として、これからの活躍を期待いたします。~ 狂言「清水座頭」。 瞽女(盲目の女性・野村萬斎)が清水寺に参詣し、将来の幸いを祈ると、 続いて現れた座頭(野村万作)も、清水寺を訪れ。妻が欲しいと願います。 参詣人で賑わう堂内で2人はぶつかり口論になるのですが、 互いに目が見えないことがわかって誤解が解け、酒を酌み交わします。 やがて2人はそれぞれまどろむと、夢に中に観世音が現れ、 西門に行けば、願いが叶うとのお告げが。 それぞれ西門に向かった2人でしたが、 改めて2人は出会い、晴れて夫婦に。 そして、2人で一つの杖に寄り添いなら、帰ってゆくのです。 狂言には、お告げによって、清水寺の西門に向かう…は、よく出てきます。 清水寺の西門は、日没を眺めて西方の極楽浄土との縁を結ぶという霊験あらたかな所だそうです。 座頭と瞽女の2人は、ささやかな願いが叶い、これからの人生を供に… というあたたかい狂言でした。 狂言「弓矢太郎」。 天神講の当屋(当番)になった男(石田幸雄)の家に集まり、 まだ来ない太郎(野村萬斎)を脅かす算段をしています。 太郎は、とても臆病者で、それを隠すために、空威張りして常に弓矢を携え、 田畑を荒らす鳥獣を討ち取ったと豪語しているのです。 ~ちなみに天神講とは菅原道真の命日にあたる2月25日や毎月の25日に行う天満宮のお祭りだそうです。~ 太郎に夜に天神の森に行き、扇をおいて来れば、金をやろうと持ちかけ、 その太郎を脅かすために、当屋は鬼の姿をして太郎を待ち伏せようとします。 ところが、太郎も、妻に知恵を付けられ、鬼の装束で出かけます。 当然、鬼同士の2人は天神の森でバッタリ…。 野村一門総出で賑やかに演じられました。
2017年04月02日
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やっててよかった公文式。今月からCMが新しくなりました。 野村萬斎さんと、裕基君の親子共演です。 裕基君、ホント、大きくなりましたね…。
2017年02月16日
土用日は、きゅりあんに、「蝋燭能~みちのく鬼女伝説~」を観にまいりました。 この日の演目は、仕舞「山姥」、狂言「附子」、能「安達原」。 最初に、観世流シテ方の小島英明さんによる見どころ解説がありました。 小島さんの解説はいつもながら、わかりやすく楽しいです。 今回面白かったのは、 本来、みちのくの鬼女というのは、 「みちのくには、きれいないい女がいる~」というようなことだったらしいのですが、 それがいつのまにか、恐ろしい鬼女がいる~という伝説になってしまった~ということでした。 仕舞「山姥(やまんば)キリ」。観世喜之。 「山姥」は山に住む鬼女ですが、 仙女のようでもあり、森羅万象の自然そのものとも思われ、 その山姥が、春夏秋冬にそれぞれ花・月・雪を尋ねて山巡りをする様を表現。 狂言「附子(ぶす)」。 主人(中村修一)が、太郎冠者(野村萬斎)と、次郎冠者(飯田豪)に留守番を言いつけます。 そして大事なものを預けていきます。 桶の中にはいったそれは、「附子」と言って、 その方から吹く風にあたるだけ死んでしまうというほどの猛毒です。 ~そんなもの家の中に置いておくのが不思議ですが~。 それで、決して近づかないにようにと言い残して主人は出かけてしまいます。 ですが、恐いもの見たさ…。 やっぱり2人は、中を見ようとします。 必死で扇を扇いで近づき、つい蓋を開け、中を見ると、 なにやら、甘~~い香りが。 そう、命を落とすほどの猛毒とは、黒砂糖だったのです。 当然、2人は、全~部食べてしまいます。 さて、主人への言い分け。 早速、主人の大事な掛け軸を破いて、天目茶碗を割ってしまいます。 眠気覚ましに、2人で相撲を取ったら、大事なものを壊してしまったので、 猛毒を飲んで死んでお詫びをしょうと…。 定番中の定番といえる狂言ですが、 久しぶりに見ました。 何度も観ているので、内容はもちろん、台詞までも覚えてしまっているくらいの狂言ですが、 やっぱり面白い。 おどけた動きも、美しさの中にあるからですね。 能「安達原(あだちがはら)」。 諸国巡りの山伏(ワキ・野口能弘)は、陸奥の安達ケ原で辺りの人家に一夜の宿を頼みます。 その家の女主人(シテ・小島英明)は、旅の慰みにと、枠桛輪(わくかせわ)という糸を操る道具を使い、 糸にちなんだ唄を歌いながら、糸を操って見せてくれます。 やがて女は、暖をとるために山に薪を取りに行くのですが、 山伏たちには、留守中に自分の寝室を覗かないようにと念を押してゆくのです。 ここで中入。 山伏たちに視線を送りながら、去って行く後ろ姿。 この見所も凍り付くような間合いが、いつみても恐いんですよね、このお能は。 山伏たちは、寝室を覗くつもりなどなかったのですが、 同行の能力(アイ・内藤連)が、好奇心から覗いてしまうんですね。 そこには、恐ろしい光景が…。 手足と胴が切断された死骸が、天井まで山と積まれていたのです。 そう、ここは、鬼が住むという「黒塚」だったのです。 報告を聞いた山伏たちは慌てて逃げ出します。 そこへ山から戻った女主人は、鬼女(後シテ)の本性を現して追っかけてきます。 約束も破ったのだから、容赦しません。 が、山伏たちの懸命な祈りで、なんとか鬼女は退散。 身体能力の高い小島英明さんの鬼女は迫力がありました。
2017年02月07日
1月2日(月)に、東京国際フォーラムに、「J-CULTURE FEST にっぽん・和心・初詣 FORM]を観に参りました。 ホールB7で開演された舞台。 この会場は初めてでしたが、こぶりのホールでした。 正面中央につくられた能舞台。 開演すると、野村萬斎さんの声の案内とともに、舞台奥に強大な映像が映し出されます。 ここ、有楽町は、江戸時代は江戸城内。 画面に映し出された映像も、まさに江戸城内、 いくつもの部屋を通り抜け、やがて、江戸城奥の能舞台に。 その能舞台に描かれている松の絵が、そのまま舞台奥の松の絵として納まりました。 半能「高砂 八段之舞」 正月にふさわしく、「高砂」の後半が演じられました。 住吉明神(シテ・観世喜正)は、長寿と平和を寿いで、舞(神舞)を奏し、 天下泰平を祝福します。 「八段之舞」の小書きがありましたので、 神舞に緩急がつき、強く激しい特別な演出で行われました。 その舞いに合わせて、舞台奥の松を彩る照明も変化するという演出でした。 「三番叟 FORM]。 神が地上に降りたち、五穀豊穣を祈願するいう、やはり、お正月によく舞われる「三番叟」。 日本文化に内在するFORM(型・様式)を照射し、 日本古来のFORMの普遍性を、 新たな日本の"美"として表現する全く新しいスタイルの伝統芸能「三番叟 FORM]がコンセプトでした。 野村萬斎さんが舞う三番叟の後ろでは、今まで見たことのないような映像が映しだされます。 宇宙空間のようにも見えるし、 細胞の分裂のようにも見えるし、 点と線で表現された萬斎さんの舞う残像が変化して金属にようになっていったり‥。 あくまでの、私の見解ですが…。 めまぐるしく変化する、美しくもあり、激しくもあり、不思議な空間に誘われるようなダイナミックな映像でした。 けど、正直、 この日の萬斎さんの「三番叟」は、相変わらず、 キレキレッで素晴らしく~、 私としては、萬斎さんの舞いに集中したかったですが、 映像が強すぎて、ちょっとなあ~残念でした。
2017年01月06日
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木曜日に、宝生能楽堂に、「野村万之介七回忌追善 第76回野村狂言座」を観に参りました。 この日の番組は、小舞「蝉」、狂言「二千石」・「鏡男」、素囃子「早舞」、狂言「鉢叩」。 解説は、野村萬斎さんでした。 今回の会は、万之介さんの七回忌ということで、万之介さんのゆかりの曲を選ばれたそうです。 「鏡男」の上演は珍しいなあと思っていたのですが、 万之介さんの得意な曲だったので、選ばれたのですね。 「鏡男」についての思い出話も語られました。 以前、萬斎さんが主宰なさっていた「新宿狂言」の折り、 この「鏡男」を上演予定でしたが、 開演の30分前に、万之介さんが急病で来られないとの連絡が入り、 急きょ、萬斎さんが演じることに。 他の演目と違い、万之介さんが専門に演じられていたので、 めったに演じたことがなく、30分で覚えて…。 大変だったそう。 そして、この「鏡男」」の舞台は、新潟県の松の山。 とても山深い所で、ここで毎夏、狂言の会を開いていたという事でした。 実は、私は、この「新宿狂言」で、萬斎さんがあたふたしながらも、 見事に「鏡男」」を演じた舞台も拝見しましたし、 また新潟の松の山で開催されていた狂言の会も、毎年行っていました。 なので、思わず、私自身の観劇の歴史を思い起こしていました。 小舞「蝉(せみ)」。野村裕基。 僧の前に現れた蝉の亡霊が、烏に殺された最期の有り様や地獄の責め苦の様を舞います。 裕基君、また、大きくなりましたね、多分180センチ近くあるのではないかな。 初舞台の時の小さなお猿さんが今でも目に浮かびます。 狂言「二千石(じせんせき)」。 無断で外出していた太郎冠者(高野和憲)が帰宅したと聞いて、 主人(野村万作)は、太郎冠者の私宅に叱りに出かけます。 昔は、勝手に出かけてはいけないのですね。 太郎冠者は都見物に行ったことをひたすら謝るので、 主人は許して、都の土産話をさせます。 都で流行っているとう謡を太郎冠者が謡いだすと、なぜか主人は怒り心頭。 その謡は、主人の祖先が源義家の奥州征伐に従軍した時に、酒宴で謡い、 ほどなく敵を滅ぼすことができたため、 謡いのおかげだと恩賞を賜った大事な謡いなので、 唐櫃に封印し、神聖な乾(北西)の方角に保管したものだそうなのです。 それを持ちだして、都で流行らせたのだろう…、許せん~と太刀を振り上げます。 あわや~ですが、その時、太郎冠者はなぜか感涙。 その太刀を振り上げたお姿が先代に生き写しだと。 まあ、親子なんだから当然なんですが。 それを聞いて主人も感涙。 と、めでたし、めでたし。 謡いの由来を語る所がこの狂言の見せ場ですが、 さすがに万作さん。 めでたい良い狂言でした。 狂言「鏡男」。 訴訟のため、長く在京していた越後の松の山の男(石田幸雄)が、 訴訟が無事に済み、ようやく帰国できることになっため、 妻(竹山悠樹)への土産を買いに行きます。 そこで、鏡売りの男(岡聡史)から、 女性にとっては重要な道具だからと鏡を進められ、大金を払って買って帰ります。 久々に帰宅した夫に妻は喜び、美しい飾りがほどこしてある鏡までもらって上機嫌~なのですが… 実は、生まれて初めて見る鏡…、 妻はとんでもない反応を示すのです。 15分の休憩時間が終わって、素囃子「早舞」、 のはずでしたが、なかなか始まらない。 だいぶたってからアナウンスが入り、「早舞」は割愛するとのこと。 演者になにかあったのかな。 このあとの狂言にも、囃子は入るので大丈夫かな~と思っていたのですが。 狂言「鉢叩(はちたたき)」。 都に住む鉢叩僧たち(野村萬斎他一門)が、北野天神に参詣します。 末社の瓢の神は、鉢叩の氏神なので、 その前で瓢箪や鉦鼓を叩き乍ら念仏を唱えていると、 瓢の神(野村万作)が姿を現し、人々に富貴栄華を約束するのでした。 テンポのよいこれもおめでたい狂言でした。 万之介さんの初舞台は、「靭猿」ではなく、 この「鉢叩」の瓢の神だったそうです。
2016年12月18日
日曜日に、国立能楽堂に「万作を観る会」を観に参りました。 この日の番組は、語「奈須与市語」、狂言「棒縛」・「楢山節考」。 語「奈須与市語(なすのよいちかたり)」。内藤連。 能「屋島」の替間(間狂言の特別演出)で、語られる語り。 屋島での平氏と源氏の戦さの時に、 平家の軍船から漕ぎだしてきた船に乗っていた一人の美女。 その手には扇が掲げられ、射よと挑発してきます。 その時に義経に選抜されたのは弱冠二十歳の奈須与市。 そして、扇を見事射抜きます。 その場面を語るのがこの「奈須与市語」。 今回は、万作の会の門下生の方が初役に挑むという事で、この日は内藤連さんでした。 狂言「棒縛」。 太郎冠者(野村萬斎)と次郎冠者(野村遼太)が、自分の留守に酒を盗み飲むことを知った主人(竹山悠樹)は、 太郎冠者が稽古している棒術の型を披露させて、 肩に棒を担いだ時に、両手を縛ってしまいます。 それを見て、笑っていた次郎冠者も、後ろ手に縛られてしまいます。 これで一安心と、主人は出かけて行きます。 しかし、こんなことでめげない2人。 縛られても、酒蔵に入り込み、協力して酒を飲み合い、 揚げ句は、気分よく謡えや、舞えや~。 最初に見た14年前から、私の好きな狂言のひとつです。 萬斎さんの棒を担いでの舞いの切れ味、 14年経っても変わりませんね。 狂言「楢山節考」。 信濃国のある貧村にもうすぐ70歳を迎えようとする老婆・おりん(野村万作)がいました。 いつも貧しく食料不足の時代です。 この村では70歳になった老人を楢山に捨てるという暗黙の掟がありました。 楢山まいりの日が近づき、おりんは、 残していく家族に気を配り、 旅立つ日の振舞い酒の準備をして…。 そしてその日、息子に背負われて楢山に入ったおりんに、 しずかに雪が舞い始めます。 「楢山節考」は、深沢七郎の短編小説で、 民間伝承の棄老伝説を題材と した作品。 野村万作さんが、この小説が発表されてすぐに、狂言の技法で舞台化したのは26歳の時だそうで、 それが、昨年、58年ぶりに再演されて、とても感動した作品です。 「楢山節考」は、本も読みましたし、映画も見ました。 この狂言を見て、映画で見た様々なシーンが思い出されましたが、 映像で表現したものを、 この狂言の舞台装置も何もない舞台で、演技だけで見せていくのはやはりすごいと思います。 一言も台詞のない万作さんのおりん、 野村萬斎さんの黒い烏~これは象徴的なものでしょうが~。 深田博治さんの息子・辰平~親思いの息子がよく演じられています。~、 高野和憲さんの孫のけさ吉~若さゆえのわがままな孫~、 月崎晴夫さんの銭屋の又やん~楢山行きを嫌がり、結局息子に捨てられしまう…映画と同じです。~ 石田幸雄さんと若手役者の村の人々~映画でも一番印象的だったシーン、集団心理の恐ろしさ~ 短いシーンによく表現されています。
2016年12月02日
木曜日に、国立能楽堂に「万作を観る会 ~七回忌・野村万之介を偲んで~」を観に参りました。 この日の曲は、語「奈須与市語」、小舞「名取川」、狂言「無布施経」、仕舞「藤戸」、狂言「武悪」。 語「奈須与市語(なすのよいちかたり)」。岡聡史 能「屋島」の替間(間狂言の特別演出)で、語られる語り。 屋島での平氏と源氏の戦さの時に、 平家の軍船から漕ぎだしてきた船に乗っていた一人の美女。 その手には扇が掲げられ、射よと挑発してきます。 その時に義経に選抜されたのは弱冠二十歳の奈須与市。 そして、扇を見事射抜きます。 その場面を語るのがこの「奈須与市語」。 この場面は、高校の古文の授業で読んだのを覚えています。 今回は、万作の会の門下生の方が初役に挑むという事で、初日は、岡聡史さんでした。 小舞「名取川(なとりがわ)」。三宅右近。 比叡山で名をいただいた僧が、袖に書き付けておいた名を、 川を渡る時に深みにはまり、書き付けが消えてしまい 名取川で名を取られてしまったという舞い。 故野村万之介さんの従弟の三宅右近さんが舞われました。 狂言「無布施経(ふせないきょう)」。 ある僧(野村万作)が、毎月檀家に読経に呼ばれています。 この日も、読経を済ませ帰ろうとするのですが… この日に限っていつも決まっていただくお布施を施主(石田幸雄)は出そうとしません。 来客やら何やらで取り紛れて忘れてしまっているのですね。 今月くらいいいか~と思いつつも、これが習慣になっても困るし…。 ということで、また檀家に戻り、 なんとか思い出してもらおうと、「フセ」という言葉をたくさん入れて話をしますが…。 やはり、これは万作さんが演じられて~の曲だと思います。 仕舞「藤戸(ふじと)」。野村四郎。 能「藤戸」より。源平合戦の時に、佐々木盛綱の武功の陰で悲惨な死を遂げた若い猟師のお話の舞い。 万之介さんのお兄さんの野村四郎さんが舞われました。 狂言「武悪」。 怒気鋭く主人(野村萬斎)が登場し、 太郎冠者(深田博治)を呼び出して、不奉公者の武悪(高野和憲)を成敗して来いと命じます。 いつになく緊張の面持ちで恐い顔の萬斎さんの登場。 あれええ~、萬斎さんだ‥。 あっそうか、今日は主人役なんですねえ、いつも武悪の役のほうが多いので、ちょっとびっくり。 パンフレットもプロブラムも見てなかったんですねえ、私。 太郎冠者の機転で武悪を逃がし、主人には成敗したと報告します。 すると、主人は、武悪の霊を弔うために清水へ詣でます。 一方、武悪も都を離れる前に清水参りをと。 そこで、ばったりと遭遇。 出会ったところは、鳥野辺。 ここは、昔からの埋葬地。 そこで太郎冠者は、今のは武悪の幽霊だったと言い張り、 改めて武悪に幽霊の格好をさせて出てこさせます。 この幽霊が、なんとなく恐可愛い。 高野さんの幽霊、なかなかよかったです。 この3人の配役は初めて拝見したような気がするのですが、とてもよかったと思います。 今回の会は、「七回忌・野村万之介を偲んで」ということで、 万之介さんに縁故のある方たちと、追善にふさわしい演目を選ばれたそうです。 万之介さん、亡くなられて、もう7年も経つんですね。 今でも、あの飄々とした舞台のお姿が浮かんできます。 あらためて、ご冥福をお祈りいたします。
2016年11月28日
木曜日に、国立能楽堂に、「狂言ござる乃座 54th」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「萩大名」、「連歌盗人」、「首引」。 狂言「萩大名」。 都での訴訟を済ませ、近々田舎に帰る大名(野村萬斎)。 都をゆっくり見物してから帰ろうと、萩の花見に行くことに。 ですが、そこの庭園を訪れると、萩の花について歌を詠まなければならないのです。 歌の素養がない大名、しかたなく太郎冠者(中村修一)に教えてもらうのですが、 五七五七七…31文字さえも覚えられない。 仕方なく、太郎冠者にカンニングをさせてもらうことにしたのですが、 いざ、本番となると、しっちゃかめっちゃか。 最後の句を言い終わらないうちに、太郎冠者はあきれ果てて、大名を見捨ててしまうのです。 「萩大名」といえば、やはり、故野村万之介さんのとぼけた大名を思い出します。 こういう役は、お似合いでした。 萬斎さんは、とても丁寧に演じられていました。 狂言「連歌盗人」。 ある男(野村萬斎)が、連歌の会の当番に当たったのですが、 貧しいため、準備ができないのです。 連歌の会って、参加者にお食事を出したり、大変だったようです。 そこで同じ境遇の男(石田幸雄)と、 知り合いの金持ちの家に盗みに入ることにするんです。 さて屋敷に忍び込んでみると、 何かの会でもあったらしく、茶道具類も出しっぱなしで、 発句が書かれた懐紙が座敷に置き去りにされています。 連歌が大好きな2人、 ついつい添え発句、脇句と、夢中になってしまうんですね。 と、そこへ運悪く、屋敷の主(野村万作)が戻ってきます。 泥棒が入ったと知って、刀を抜いてかけつけた主でしたが、 2人の連歌のやり取りが聞こえてきて、ついついそちらに興味が。 結局、知り合いの2人が連歌の会のための準備金ほしさに盗みに入ったことを知った主は、 自分の大小の刀を2人に与えます。 みんな、ホントに連歌が好きなんですね。 ベテラン3人の舞台、 それぞれの役どころもぴったりで、見ごたえがありました。 狂言「首引」。 播磨の印南野を通りかかった鎮西八郎為朝(飯田豪)の前に鬼(深田博冶)が現れます。 娘の姫鬼(内藤連)に人の食い初めをさせたいパパ鬼に、 為朝は、娘と勝負をして負けたら食べられようと提案します。 パパ鬼は、娘鬼を説得して、 為朝と、腕押しやら、すね押しで勝負をさせるのですが、 さすがに為朝にはかないません。 最後の勝負として、首引きをさせるのですが…。 万作の会、門下生さんたちだけの舞台でした。 イケメン武士、為朝の飯田豪さん、 溺愛パパ鬼の深田博冶さん、 わがまま娘鬼の内藤連さん、 とっても、面白かった~です。
2016年10月24日
「サントリー緑茶 伊右衛門 特茶」の新しいCMが始まりました。 野村萬斎さんが出演されています。 1桁だった体脂肪が、 40代後半で、2桁になったとおっしゃっていましたが…。 でも、限りなく、1桁に近い2桁でしょうね。 素敵なCMになっています。 こちらでご覧なれます。 サントリー緑茶 伊右衛門 特茶
2016年10月09日
日曜日に、宝生能楽堂に「雙ノ会」を観に参りました。 この日の演目は、狂言「武悪」、能「遊行柳」。 12時半から、武蔵野大学教授の三浦裕子さんの解説でしたが、 ここ2日間忙しかったので~たまっていた家事で~ 開演ギリギリに着いたので、 拝聴できませんでした。残念! 狂言「武悪(ぶあく)」。 主人(野村万作)が太郎冠者(野村萬斎)を呼び出して、 不奉公を重ねる武悪(石田幸雄)を成敗して来いと命じます。 太郎冠者は、武悪の病気も快方に向かっているので、近日中に奉公に出るだろうととりなすの ですが、主人は聞く耳を持ちません。 それどころか、武悪を成敗しないのなら、太郎冠者自身の命もないと脅され、 太郎冠者は、仕方なく、主人の刀を借り受け、武悪の自宅に向かいます。 騙し打ちにしようと考えた太郎冠者は、 武悪に主人宅に来客があるので、それに出す川魚を進上するように勧め、 一緒に川に出かけます。 そして、川に入って魚を追う武悪の背後から斬りつけようとします。 ここまでは、狂言らしからぬ緊迫した雰囲気で話が進みます。 この狂言は、スタートから、名ノリもなく、 厳しい顔つきの万作さんの「誰かいるかあ」から始まります。 緊迫感! しばらく見ていなかったので、「そっか、武悪って結構シビアな話だったなあ~」と思い出しました。 普段の狂言には、あまり生死は出てこないのです。 ですが、子供の頃から、供に奉公してきた武悪を、やはり、太郎冠者は斬れないのです。 そこで、主人には成敗したことにして、武悪には都を去ってもらうことに。 主人に報告をすると、 さすがに主人にも後悔の念が…。 そこで、太郎冠者とともに、武悪を弔うために清水寺に向かいます。 そして、また、武悪も都に去るにあたって、最後の清水詣に向かいます。 と、ここで鉢合わせ。 太郎冠者の機転で、清水寺は、古来からの墓所である鳥辺野に近いことから、 武悪が幽霊になって、出てきたことにさせます。 主人と幽霊武悪のやり取りが始まります。 後半は、ようやく狂言らしい展開になり、ほっとします。 「武悪」は1時間に及ぶ大曲で、見ごたえがありました。 能「遊行柳」。 遊行上人(ワキ・森常好)と従僧(ワキツレ・舘田善博、森常太郎)が六十万人決定往生の札を人々に授ける行脚を続けるうち、磐城国白河の関あたりに着きます。 すると一人の老人(前シテ・田崎隆三)が現れ、 ここをかつて通った遊行上人を案内した古道をおしえましょうと申し出ます。 古道は川に沿う街道で、そこには朽木の柳という名木があるというのです。 老人に導かれた上人は、 古塚の上に蔦葛の纏う柳を見て、由緒を尋ねます。 老人は、昔ここを訪れた西行法師が この柳の下で、涼をとり、和歌を詠んだことを話します。 すると、老人は柳の木に近寄ると姿を消してしまいます。(中入) そこに所の者(アイ・石田幸雄)が現れ、 上人の問いに、先程の老人は、老柳の精であろうと語ります。 上人が念仏を唱え始めると、 白髪に烏帽子を被り、狩衣を着た老柳の精(後シテ)が現れ、 仏果を得た喜びを述べ、柳にまつわる故事を並べ、報謝の舞いを舞います。 やがて夜が明け、上人は夢から覚めるのでした。 宝生流シテ方の田崎隆三さんと、和泉流狂言方の石田幸雄さんのお二人で主催してきた「雙(そう)ノ会」は、 今回で、休会ということで、昨日が最後の会だったそうです。 最後の会に、良いお席をいただきありがとうございました。
2016年09月28日
15日(水)に、寒川神社に「第47回相模薪能」を観に参りました。 途中で、雨が降るかも…と心配でしたが、 持ちこたえました。 例年通り、祝詞奏上、謡「四海波」、玉串奏上、 そして、火入れ式と続きます。 能「俊成忠度」。 一の谷の合戦で薩摩守藤原忠度を討ち取った岡部六弥太(ワキ・殿田謙吉)は、 見つかった和歌が書かれた短冊付きの矢を見せに、 忠度の和歌の師匠・藤原俊成(シテツレ・佐久間二郎)を訪ねます。 俊成が弔っていると、忠度の亡霊(シテ・中森貫太)が現れます。 そして、「千載集」に選ばれた自分の歌が「読み人しらず」となっていることを嘆くのです。 帝に背く謀反人の名を載せることはできなかったと話すと、 忠度は納得し、互いに和歌を語り合い、舞いを舞います。 しかし、突然忠度の態度が変わり、殺気だった様相となり、 虚空に向かって叫びだすのです。 修羅の刻になってしまったんですね。 修羅道とは、人を殺したものが落ちるところで、 「修羅の刻」と言う一日六度、 とある時間になると、当然現れる敵と討ち死にするまで戦い続けさせられ、 何度も死の痛み、苦しみを味わう地獄だそうです。 恐いですねえ。 狂言「二人袴」。 婿入りの日、婿(野村裕基)は、父親(野村萬斎)に付き添ってもらいます。 親が門前で婿が待っていると知った舅(石田幸雄)は、 太郎冠者(月崎晴夫)に呼びに行かせようとすると、 婿は慌てて自分で呼びに行きます。 正装用の袴がひとつしかないんですね。 今度は、親が袴をはいて、舅の前に出ると、今度は婿はどうした~と。 親子は、舅に呼ばれるたびに、交互に履いていたのですが、 2人一緒にと言われ、困った2人は、とうとう袴を2つに裂いてしまいます。 これからは、この配役で上演することになるのでしょうねえ。 能「杜若 恋之舞」。 三河の国八橋で杜若に見とれていた旅人(ワキ・殿田謙吉)は、 美しい女(シテ・観世喜正)に声を掛けられ、庵に誘われます。 やがて光り輝く衣を着、初冠うを付けて現れた女は、杜若の精と名乗ります。
2016年08月19日
木曜日に、宝生能楽堂に、「第75回野村狂言座」を観に参りました。 この日の番組は、小舞「景清後」、狂言「蝸牛」・「名取川」・「弓矢太郎」。 小舞「景清 後」。 能の「景清」は、盲目の琵琶法師となった悪七兵衛景清とその娘との再会を描いた作品で、 景清が娘に向かって語る 屋島の合戦で源氏の兵を蹴散らした時の武勇伝の様子を舞います。 ダイナミックな舞いで、岡聡史さんが舞われました。 狂言「蝸牛」。 大峰・葛城での修行を終え、出羽の羽黒山に帰る途中の山伏(野村裕基)が、 長旅の疲れから、藪の中で一休みしています。 そこへ、長寿の薬として祖父に贈るための蝸牛(かたつむり)を獲ってくるよう 主人(深田博治)から命じられた太郎冠者(野村萬斎)が、藪にやってきます。 蝸牛をみたことない太郎冠者。 主人から蝸牛の特徴を聞き、大きいものは人間ほどもあると教えられてきました。 そこで、特徴とよくあった?山伏を蝸牛だと思い込んでしまうのですね。 山伏も面白がって、蝸牛になりすまします。 なんせ、スマホも無い時代、検索もできないから仕方ない。 萬斎さんは太郎冠者。 ~「花戦さ」の撮影のために坊主頭にされていた髪もだいぶ伸びてらっしゃいました。~ 「蝸牛」といえば、萬斎さんの山伏役が多いですが、今回は裕基君。 また、背が伸びたような…。 お顔が小さいので、山伏の肩の張った装束を着ると、八頭身に見えました。 今回はいつもと違うエンディング。 いつもは、山伏がかっこいいパフォーマンスで退場するのですが、 今回は、山伏が逃げ、主人と太郎冠者が「やるまいぞ」で追っていきます。 この演出は、多分初めて見たと思うのですが…、あっ、1回ぐらいどこかでみたかな? こちらのほうが本来の演出なのだそうです。 狂言「名取川」。 遠国の僧(野村万作)が、比叡山で修行して帰る途中、 さる寺で、「希代坊」という名と、予備に「不正坊」という名をつけてもらいますが、 このお坊さん、とても覚えが悪いので~そんなんで、お経を覚えられたかなあ、と思ってしまいます~。 袖に名前を書きつけてもらい、 道々、色々な節をつけながら、名前を覚えて歩きます。 でも、ここが役者さんの見せ場のひとつですが。 ところが、大きな川を渡ろうとして、 深見にはまった拍子にせっかく覚えた名前を忘れてしまうのです。 そして、水につかったのですから当然ですが、 袖に書いた名も消えてしまうのです。 しかし、僧はあきらめません。 流したばかりの名前なのだから、まだ遠くへは流されていないだろうと、 名前を一生懸命掬いあげようとします。 そこへ男(石田幸雄)が通りかかり、 この川の名が「名取川」だということ教えてくれます。 狂言「弓矢太郎」。 天神講の夜、仲間たちが当屋(竹山悠樹)に集まるのですが、 太郎(高野和憲)だけまだ来ません。 いつも弓矢を構え、自分は強いと豪語している太郎なのですが、 皆は、実は、太郎は臆病者でないかと疑っているのです。 そんなことは知らず、今日も、勇ましい姿で現れた太郎でしたが、 仲間たちのホラー話を聞かされて、目を回してしまうのです。 起こされた太郎がなおも強がりを言うので、 天神の森の松の枝に扇を掛けてこられるかどうかという肝試しをすることに。 当屋は、鬼の面をつけて、太郎を脅すことに…。
2016年08月01日
日曜日に、世田谷パブリリックシアターに「マクベス」を観に参りました。 先週の木曜日に拝見して、2回目の観劇でした。 時は1040年、舞台はスコットランド。 国王ダンカンは、ノルウェー王と手を結び、国を乱していた反乱軍が、 マクベス将軍とバンクォー将軍によって鎮圧されたことを喜び 謀反人だったゴーダー領主の首をはねて、 その領地を恩賞として、マクベスに与えるのです。 戦いを終えて帰還中のマクベスとバンクォーは、荒野で3人の魔女と出会います。 そして、マクベスはやがて王となるという予言を与えられ、 次第に野望を抱き始めるのです。 今回は、尺八、津軽三味線、太鼓の生の演奏が入ります。 太鼓は、舞台の左端のごみ山の後ろでの演奏。 木曜日は、左側のお席でしたので、太鼓の音が、体中に響いてきました。 日曜日は、右寄りのお席でしたので、感じてくる音はだいぶ違います。 ですが、木曜日にはゴミ山の後ろで見られなかった、太鼓を打つ姿が拝見でき、 体中を使った、迫力ある演奏姿に見惚れてしまいました。 そして、その演奏に合わせた萬斎さんの殺陣は、 今回かっこいいです。 木曜日の終演後に行われたポストトークで、 4拍子に合わせて殺陣なので難しいとおっしゃっていましたので、 つい、カウントしながら見ていましたが、 チャチャチャくらい(1分間に30小節)の速さかな。 太刀のシーンもかっこいいですが、 あの速さで、長刀とともに回転する殺陣は、ホントにかっこいいです。 鈴木砂羽さんのマクベス夫人は 私の中から、秋山菜津さんのイメージが払しょくされたのか、 鈴木砂羽さんのマクベス夫人の世界にはいっていくことができて、 とてもチャーミングなマクベス夫人で、よかったです。
2016年06月24日
木曜日に、世田谷パブリックシアターに「マクベス」を観に参りました。 野村萬斎さんの構成演出による「マクベス」。 今回で、4度目の公演です。 今回から、マクベス夫人が、秋山菜津子さんから、鈴木砂羽さんに代わるという事で、 楽しみにしていました。 時は1040年、舞台はスコットランド。 国王ダンカンは、ノルウェー王と手を結び、国を乱していた反乱軍が、 マクベス将軍とバンクォー将軍によって鎮圧されたことを喜び、 謀反人だったゴーダー領主の首をはねて、 その領地を恩賞として、マクベスに与えるのです。 戦いを終えて帰還中のマクベスとバンクォーは、荒野で3人の魔女と出会います。 そして、マクベスはやがて王となるという予言を与えられ、 次第に野望を抱き始めるのです。 劇場内に入ると、今回は舞台の両端に大きなゴミ袋の山。 そして、中央にも、大きなゴミ袋が3つ。 魔女は、ゴミ袋からの登場なのね、きっと…。 さらに驚いたのは、音。 前回までは、ポエム調の語りで始まっていたと思うのですが、 今回は、耳をつんざくような轟音。 ものすごかったです…。 それが次第に暴風雨の音、そして雨音になっていきました。 毎回、進化を重ねる「マクベス」。 今回、大きく変わったのは、音楽に生演奏が加わったことです。 尺八の藤原道山さんはじめ、津軽三味線、太鼓もすべてイケメンのカルテットです。 舞台左右のゴミ山の後ろで演奏されてます。 そして、その生演奏に合わせての萬斎さんの殺陣。 音に合わせて付けられたのでしょう。 カッコよくて、とてもステキです。 新マクベス夫人の鈴木砂羽さん。 強い悪女というより、けなげな妻を演じていたと思います。 ただシェイクスピアの台詞は、言葉も難しそうで、ご苦労なされたのではないかな。 正直なところ、私自身意外だったのですが、 秋山菜津子さんのマクベス夫人で多く見て来たので、 秋山さんの台詞回しやトーンがかなり印象に残っていたのです。 秋山さんは、舞台女優なので、やはり、舞台での台詞回しや、トーンの使い方が、 かなりお上手だったなと改めて思いました。 鈴木砂羽さんらしいマクベス夫人の進化を楽しみにしたいと思いました。
2016年06月18日
木曜日に、宝生能楽堂に「第74回 野村狂言座」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「粟田口」・「痩松」、小舞「春雨」、狂言「小傘」。 まずは、高野和憲さんの丁寧な?解説からでした。 狂言「粟田口(あわたぐち)」。 近頃世間では道具比べが流行しています。 それで、今度は「粟田口」を比べることになったので、 大名(深田博冶)は太郎冠者(中村修一)に命じて、 都に「粟田口」を買いに行かせるのです。 が、ここで問題のなのは、太郎冠者は「粟田口」がどういうものなのかを知らないんです。 そして、ナント大名も知らないのです。 それで、果たして探せるのか…。 仕方なく、大声で叫びながら探していると、 声を掛けて来た男がいました。 太郎冠者が「粟田口」を知らないと見て取ったすっぱ(詐欺師・内藤連)でした。 すっぱは、自分が「粟田口」だと言い、まんまと太郎冠者をだまして、 一緒に大名のもとへ。 大名は、「粟田口」は知りませんが、なぜか説明書は持っているのです。 そこで、説明書と太郎冠者が連れてきた「粟田口」を照らし合わせてみると すべてがぴったり。 しかも、上質の「粟田口」だと判明。…ここも、すっぱに騙されているのですが。 「粟田口」とは、刀の銘のことで、京都の地名でもあるそうです。 この地に刀工が住み、平安時代後期から鎌倉時代にかけて数々の名工を輩出したそうです。 人を疑わないおっとりとした大名という役どころでしたが、 深田さん、装束が似合われてきたように思いました。 狂言「痩松(やせまつ)」。 丹波国の山賊(月崎晴夫)が、この頃、獲物が少なく稼ぎが悪いので、今日こそは何とかしなくては~と、 谷間に隠れて人がやってくるのを待っていました。 そこへ実家に帰るために通りかかった一人の女(飯田豪)。 山賊は長刀で女を脅し、女から荷物を奪うのですが、 夢中で中身を吟味しているうちに、 なんと、女に長刀を奪われてしまうのです。 形勢逆転。今度は、女に脅かされて、身ぐるみをはがされてしまうのです。 ちなみに、山賊の合言葉で、実入りの少ないことを「痩松」といい、 その逆は「肥松」というそうです。 小舞「春雨」。野村万作。 差した傘の柄を伝う雨が袖を濡らしたので、袖まくりをして空を眺めた という短い小歌に合わせた舞い。 確かに、短い舞いで…もう少し、万作さんの舞いを拝見したかったなあ。 狂言「小傘(こがらかさ)」。 田舎の男(石田幸雄)が、新しく建立した草堂の堂守を雇おうと、大きな街道までやってきます。 昔は、こうして人を探したのでしょうかねえ。 そこへ博打で一文無しになったため、仕方なく僧になった男(野村萬斎)と、 その従者(高野和憲)がやってきます。 この曲、いつも、このお2人がペアで演じられますね。 この二人、出家はしたものの、お経のひとつも読めなくて、 生活も苦しく、どこかで田舎者をたぶらかして寺でも手に入れようと、 博打場で覚えた傘の小歌をお経らしく聞こえるように練習しているんです。 確かに萬斎さんがうたうと、お経に聞こえます。 そうとは知らない田舎者は、ちょうどよい僧が通りかかったと、喜んで2人を連れ帰り、 在所の人々を集め、堂供養の法事を始めます。 僧は、人々に布施物を出させて、でたらめ経を唱えていくのですが、 やがて、そのテンポにのせられて、踊念仏となり、 人々が踊っているうちに、まんまを布施物を持って、2人は逃げ去ってしまいます。 萬斎さん、一段と冴えてこられたような。 また、昨日は、私の誕生日。偶然とはいえ、最前列の本当に良いお席をありがとうございました。
2016年04月17日
水曜日に、靖国神社に「夜桜能」を観に参りました。 毎年、この桜の季節に靖国神社で、3日間開催される「夜桜能」。 今年は、第三夜を観に参りました。 昨年は、雨の中、合羽を被っての観劇でしたが、 今年は、天気にも恵まれ、美しい桜吹雪の舞う中、拝見することができました。 まずは、薪能なので、火入れ式が厳かに行われました。 最初の番組は、素囃子「融(とおる)」。 仕舞・大坪喜美雄、大鼓・柿原光博、小鼓・田邉恭資、太鼓・金春國直、笛・一噌隆之 嵯峨天皇の十二男として生まれた後、臣下に下り、 東六条に広大な屋敷を建て、風流・豪奢な生活を送った源融。 今は、荒れ果てたその屋敷で、幽霊となった融の舞う場面を演じられました。 狂言「苞山伏(つとやまぶし)」。 山人~木こりかな?~(飯田豪)が鎌とお弁当の飯苞を持って山に仕事に行く途中、 夜明け前に家を出たので眠くなったと、道端で一眠り。 そこへ羽黒山から来た山伏(岡聡史)がやってくるのですが、 長旅で疲れたとやはり道端で寝てしまうのです。 そこへまた、通りかかった近くの男(野村万作)が山人の飯苞に目を付けて、 なんと、盗んで食べてしまうのです。 山人が目を覚ましそうなのに気付き、 あわててこともあろうに飯苞を山伏の横に投げ出して、寝た振りをしてしまいます。 目覚めた山人は、飯苞がないのに気づいて、男を疑うのですが、 男は、山伏の傍らにある飯苞を示して、山伏が怪しいと言い張るのです。 疑いを掛けられた山伏は、犯人探り出してやろうと祈り出します。 すると、不思議、男の体はすくんで動けなくなってしまうのです。 能「鉄輪(かなわ)」。 映画「陰陽師」にも出てきた、嫉妬のあまり、生成り~生きたまま鬼になる~女性のお話。 のせいか、後ろのお席の女性が、同行者にあらすじを説明されていて、 「~だから、安倍晴明が出てくるから、多分、萬斎さんが演じられると思うのよねえ。」 という話声が聞こえてきちゃいました。 残念ですけど… お能の「鉄輪」の安倍晴明は、ワキ方が演じる役どころで、 狂言方の萬斎さんがアイで演じるのは、主役の女性に余分なこと言っちゃう社人(神社に勤めてる人)なんだよねえ~ と、心の中でつぶやいているうちに始まりました。 夫に裏切られた女(前シテ・宝生和英)が夜更けの貴船神社を訪れると 社人(アイ・野村萬斎)が、明神の不思議な知らせを告げます。 赤い着物を着て、顔に丹を塗り、頭に鉄輪(五徳)を戴いて 三本の脚に火のついたろうそくを灯して 怒る心を持てば、生きながらの鬼となって望みが叶うというのです。 その説明を聞くうちに、女の様子が変わってくるのです。 妻を離別して新しい妻を得た夫(ワキツレ・御厨誠吾)は、悪い夢ばかり見るので安倍晴明(ワキ・宝生欣哉)を訪れますが、 前妻の怨みで今夜限りの命だと告げられ、安倍晴明に祈祷を頼みます。 晴明が祈祷棚に夫と妻の形代を置いて祈祷すると、 女の生霊(後シテ)が告げ通りの鬼女の姿で現れ、 形代に向かって夫の心変わりを責め、 後妻の髪をつかんで激しく打ち据えるのですが、 晴明が招いた神々に撃退され、 時期を待とうと言い残して消え去るのです。 このお能を見ると、いつも思うのですが、 これって、To Be Continuedですよね。 女の怨みは、消えないのです。 前シテの女は、笠をかぶって登場。 とてもたおやかな女性に見えたのですが、 笠をとってみると、顔色わる~っ。! これは、宝生流で使う「鉄輪女」という「鉄輪」の前シテの専用面だそうです。 後シテで使う面は、顔の半分が鬼となった橋姫という専用面だそうで~ 確かに、本成り(全部鬼になること)になった般若の面より、ある意味怖いかも。 アイの萬斎さんは、今回は鮮やかな緑のお召し物で登場。 以前、拝見した時には、白っぽいお召し物だった気がするのですが…。 ホントに、きれいでした。
2016年04月10日
ハッピーバースデー!今日は、野村萬斎さんのお誕生日。 今年で、50歳を迎えられました。 今後も、ますます、充実したお仕事を重ねていけますよう、応援いたします。
2016年04月05日
日曜日に、国立能楽堂に、「狂言ござる乃座 53th」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「梟山伏」・「見物左衛門」、素囃子「早舞」、狂言「鬮罪人」。 狂言「梟山伏(ふくろやまぶし)」。 山から戻ってきた弟の太郎(中村修一)が、物の怪が憑りついたようで様子がおかしいのです。 心配になった兄(深田博冶)は、山伏(野村裕基)を訪ね、祈祷を頼みます。 兄の家に赴き、太郎の頭で脈をとった山伏は 強力な邪気が憑りついていることを見抜きます。 早速、祈祷を始めると、 太郎は、奇声をあげて鳴き出します。 太郎が山で梟の巣を木から降ろしてしまったと聞いた山伏は、 梟が害を与えていること確信して、祈祷を続けるのですが…。 症状は、一向に収まらず、ひどくなる一方。 ついには、兄にも、のり移ってしまうのです。 そして、最後は、なんと山伏にも…。 とても、シュールな狂言です。 雄基君また、背が伸びたような。 ついつい、3歳の時の初舞台を思い出してしまいますが、 ホントに、大きくなりました。 子方が終わったこれからが頑張りどころですね。 狂言「見物左衛門(けんぶつざえもん) 花見」。 地主の桜が花盛りであることを聞いた見物左衛門(野村萬斎)は、 花見にぐづろ左衛門を誘おうと出かけるのですが、すでに出かけた後でした。 仕方なく、一人清水寺に出向き、 地主の桜を眺め酒を飲み、 小謡や小歌を謡い、 福右衛門の舞いを見ます。 西山の桜も満開であると聞き、太秦の太子の社を通り嵐山に行きます。 そこでも桜を愛で酒を味わい、小謡や小舞を謡い舞い、 舟遊びから聞こえてくる雅楽の楽器をまねて楽しみます。 すると柿本の渋四郎左衛門から御室・北野・平野の桜見物に誘われるのですが、 疲れたことを理由に断り、 名残を惜しみつつ帰ってゆきます。 と、これだけの内容をたった一人で演じ切るのが、この狂言です。 たっぷりと謡いあり、舞いありで、萬斎さんのワンマンショーのようで、 ラッキー!!的な感じですが、 ほとんど場面を語りで聞かせるので、 演じ手にとっては、大変な曲かと思います。 以前、拝見した時よりも、語りが、ずっと深くなられた~そんな感じがしました。 素囃子「早舞(はやまい)」。 大鼓・亀井洋佑、小鼓・森澤勇司、太鼓・大川典良、笛・小野寺竜一。 「早舞」は、貴族の霊が游舞に興じる場面や、女性が成仏した喜びを見せる時に舞う曲。 狂言「鬮罪人(くじざいにん)」。 祇園会を控え、山を世話する頭(とう)に当たった主人(野村万作)が、 仲間を集めてその相談をしようと思い立ちます。 太郎冠者(野村萬斎)を呼んで、誘いの使いに出します。 やがて一同が主人を訪れ山の構想を出し合うのですが 太郎が、その都度、口をはさんでくるのです。 実は、太郎冠者は、でしゃばりな性格なので、以前から、主人にたしなめられていたのですが 全然、いう事をききません。 一同の議論が出尽くしたところで、太郎冠者に意見を聞くと、 山を二つ築き、鬼が罪人を責め立てるところを囃す~ という、なかなか奇抜なアイデア。 一同は賛同し、各役を決めて、練習することに。 役は、鬮で決めるのですが、 なんと、鬼は太郎冠者、そして罪人は主人に当たってしまうのです。 演者も多く、見どころの多く、楽しい狂言です。 が、昨日の萬斎さんは、いつにもまして、パワーアップされていたような~でした。
2016年03月31日
木曜日に、宝生能楽堂に「都民劇場能」を観に参りました。 都民劇場は、創立70周年だそうで、また、「古典芸能鑑賞会」は、100回公演記念能ということで、能楽界の重鎮を方々を集めた会に。 確かに、見ごたえのある会でした。 この日の番組は、狂言「二人袴」、能「鷺」、狂言「福の神」。 狂言「二人袴」 和泉流。 最上吉日に婿入りする若者(野村萬斎)が、親(野村万作)に連れられて舅(石田幸雄)に連れられて舅の家の入口まで来て、親に手伝ってもらい長袴を着せてもらいます。 心細いので、親を門前に待たせたまま奥へ通りますが、運悪く、舅方の太郎冠者(竹山悠樹)に見つかってしまい、親も座敷に行かなければならなくなりました。 しかし、袴がひとつしかないので、親子で代わる代わる袴を着けて舅の前に出ているうちに、2人揃ってと言われてしまいます。 やむなく、袴を二つに裂いてそれぞれが身に着け、後ろを見せないようにして舅の前に出ます。 前日も、「二人袴」を見たばかりでしたが、前日は、太郎冠者以外の配役が違いました。 婿が萬斎さん、親は万作さん、そして石田さんの舅。 以前は、よくこの配役でなさっていましたが、最近はなかったんですねえ。 さすがに萬斎さんも今年で50歳、もしかしたら、この配役での「二人袴」は、見納めではないかと思い、観に参りました。 能「鷺」 観世流。 夏の夕方、帝(シテ・観世清和)は夕涼みのために臣下を連れて神泉苑に赴きます。 池の汀で涼をとっていると白鷺(シテ・野村四郎)が一羽下りてきます。 帝は蔵人に命じて鷺を捕えさせようとしますが、鷺は驚いて飛び立ってしまいます。 そこで蔵人は鷺に向かって帝の命令だと言葉をかけると、鷺はふたたび下りてきたのです。 帝はその様子に感じ入り、鷺にも蔵人にも五位の位を授けます。 鷺は喜びの舞いを舞います。 帝の命に従ったこの鷺は、再び帝の命で放たれ空に飛び去るのでした。 白い鷺の装束が本当にきれいでした。 鷺の舞いを舞われたのは、万作さんの弟で、萬斎さんには伯父にあたる野村四郎さんでした。 狂言「福の神」 大蔵流。 福の神の社に恒例の年越しをしようと、二人の参詣人(山本泰太郎、山本凛太朗)が連れだって出かけます。 参詣を済ませ豆をまき始めると、明るい大きな笑い声をあげて福の神が現れます。 驚いた二人。 思わずお神酒の奉納を忘れていると、福の神からの催促。 様々な徳を説いたあと、自分のような福の神には美味しいお神酒や供え物をたっぷりせよと、謡い舞い、朗らかに笑って帰っていきます。 本当に、目出度い狂言です。 大蔵流の山本家、久しぶりに拝見しました。
2016年02月29日
水曜日に、大田区民プラザに「万作・萬斎 狂言の会」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「川上」・「二人袴」。 まずは、深田博冶さんの解説&ワークショップ。 今回は、老若男女30人もの人が舞台に並びました。 「花の袖」の謡と小舞の動きを少しお稽古。 舞いの動きは、もう少し、説明を聞きたかったなあ。 狂言「川上」。 吉野の里に住む盲目の夫(野村万作)が、霊験あらたかという川上の地蔵に参詣します。 参篭の甲斐があって、ナント、目が見えるようになります。 が、地蔵のお告げによると、「連れ添う妻が悪縁ゆえ、離別せよ」ということでした。 それを聞いた妻(石田幸雄)は、当然、腹を立て、絶対に別れないと言い張るのです。 まあ、当然ですね。 結局、夫は離縁はしないことを決心するのですが…、その途端に、また、目は見えなくなってしまうのです。 目の不自由な夫が、杖の音を響かせながら、登場してくるシーン。 そして、再び、目の見えなくなった夫の杖に代わり、支えて2人で退場してくるシーン。 何度見ても、名場面だといつも思います。 狂言「二人袴」 婿入りの日(結婚後、妻の実家に始めて挨拶に行く事)。 舅(深田博冶)の家では、準備を整え、婿(内藤連)が来るのを心待ちにしています。 婿は、一人で行くのは心細いからと兄(野村萬斎)に舅の家の前まで付き添ってもらいます。 弟に礼装の長袴をはかせてやり、兄は外でこっそりと待っていたのですが、太郎冠者(竹山悠樹)に見つかってしまい、兄も一緒にということになってしまいます。 しかし、長袴はひとつだけ。 仕方なく、1枚の袴を二つに割いて、前だけ取り繕って、舅の前に出ます。 今回は、萬斎さんと内藤さんということで、本来、父子ということで演じられるのを、兄弟にしたのでしょうけれど。 やはり、親子という設定で、面白い狂言かなと思いました。
2016年02月28日
先週の木曜日に、宝生能楽堂に、「第73回 野村狂言座」を観に参りました。 この日の番組は、素囃子「神舞」、狂言「松楪」・「磁石」・「節分 替」・「仁王」。 素囃子「神舞」。大鼓・柿原光博、小鼓・森澤勇司、太鼓・観世元伯、笛・一噌隆之。 今回は、珍しく、狂言が、3本も。 狂言「松楪(まつゆずりは)」。 摂津の国のお百姓(内藤連)と丹波の国のお百姓(中村修一)が、年貢を納めに行く途中で道連れになります。 領主の館に到着すると、奏者(月崎晴夫)の取次ぎで、それぞれ松と楪を納めます。 すると、年貢の品にちなんだ和歌を二人で一首詠めと命じられるのですが、2人で協力して、見事にクリア。 そこで、褒美として2人に1つの烏帽子をいただくのですが、一緒にその烏帽子をつけて来いとの難題を言い渡されます。 さて、どうするか…。 へえ~、なるほど…。まあ、確かに2人でひとつの烏帽子を被っているように見えるかも…。 「三方」を使いました。 というところで、最後は、両人一体の目出度い「三段之舞」を舞います。 難題をクリアしたり、一つの舞いを2人で一体となって舞うという珍しい趣向が織り込まれた狂言でした。 楪(ゆずりは)とは、新葉が成長してから古葉が落ちるのでこう呼んでいるそうです。 世代交代を現す縁起よい樹木とされ、新年の飾り物に使われるそうです。 狂言「磁石」。 遠江見附の国府の男(野口隆行)が、国を追われて上方に行く途中、大津松本の市に立ち寄ります。 そこへ人商人(野村又三郎)が近づいてきて、男を自分の知り合いの宿に連れて行き、男が寝込んだすきに、宿の主人(奥津健太郎)に、男を売り飛ばしてしまいます。 人商人とは、人買いなんですね。 しかし、その話を盗み聞きしていた男は、逆に人商人が受け取るはずの代金を持ち逃げしてしまいます。 後を追ってきた人商人と鉢合わせしてしまった男は、刀を振りかざす人商人に向かって、実は自分は磁石の精だと名乗り、逆に脅かします。 今回は、名古屋の野村家一門のご出演。 野村又三郎さんのはりのあるお声で、しつこく田舎者の男に言い寄っていく様は、なかなか。 万作家の「磁石」と、物語のメリハリのつけ方が微妙に違うようで、新鮮でとても面白かったです。 狂言「節分 替」。 節分の日、夫が出雲大社へ年籠りに出かけたので、女(高野和憲)が一人で留守番していると、蓬莱の島から鬼(野村万作)がやってきます。 鬼は、美しい女に心を奪われ、何度も言い寄るのですが、女はいう事を聞きません。 冷たくあしらわれた鬼は、とうとう泣きだしてしまいます。 ここに出てくる鬼は、鬼が人間に怖がられているという自覚がないのですね。 ですから、おろおろしたり、女にこっぴどく叱られたり。 鬼を演じられた万作さんのお年と体力を考慮して、今回は通常出ない地謡を出すという演出構成だったそうですが。 いやあ、万作さんの舞いは、すごい。 とても、80歳を超えてらっしゃるとは思えない素晴らし舞いでした。 狂言「仁王」。 負け続きで、すべてを失った博打打ち(石田幸雄)が、他国へ逃げる前に、世話になった知人の男(深田博冶)のもとへあいさつに出かけます。 すると男は、仁王に化けて、参詣人から供え物をだまし取ってはどうかと提案します。 とんでもないですねえ。 ですが、中世では、お地蔵さんの天下り~なんて信じられていたそうです。 男は、博打ちを上野に立たせ、仁王が降らせられたと触れ回り、大勢の参詣人を引き連れて来ます。 参詣人たちは、刀や帯など供えて拝み、博打打とは大儲け。 しかし、多くの参詣人が帰った後、さらにびっこをひいた新たな参詣人(野村萬斎)がやってきます。 この参詣人は、お供え物に、なぜかおっきな草鞋の片方だけを供えます。 そして、仁王のご利益をうけようと、仁王の体を触りまくるのです。 今回は、あまりお好きでないとおっしゃっている仁王役でなくて、よかったですね、萬斎さん。
2016年01月19日
先週の水曜日に、国立能楽堂に、「国立能楽堂定例公演」を観に参りました。 今年最初の観劇です。 お正月にふさわしく、大きな鏡餅が飾られていました。 この日の番組は、能「金札」、狂言「鴈雁金」。 能・金春流「金札(きんさつ)」。 桓武天皇が都を平安に移した、天下泰平の時代。 天皇が伏見に神社を造営せよとの宣旨を下し、勅使が使わされます。 平安時代の話なんですねえ。 随臣(ワキツレ・則久英志、御厨誠吾)を伴って伏見に到着した勅使(ワキ・殿田謙吉)は、行列の前を進む宜禰(きね~神官のことだそうです~)の老翁(前シテ・櫻間右陣)と出会います。 櫻間さんの扮する老翁は、厳かな気品が漂います。 勅使が何処からきたのかと尋ねると、伊勢国あこねの浦から来たのだと答えます。 老翁は、神社造営にちなんで、切る物尽くし・木尽くしの歌を謡います。 翁が謡う傍で社殿の造営が進むと、不思議なことに、天から金札(金色の札)が降ってきます。 ~ここは、扇を金札に見たてて演出します~ 翁は、伏見が日本の異称であって、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が、高天原の御殿に伏して見出したのがこの地であったため「伏見」を命名されたことを話します。 ~へえ、なるほど~。 そして、勅使の手から金札を取って姿を消し、虚空から、自分が伊勢神宮の使者・天津太玉(あまつふとだま)の神(面白い名前ですねえ)であることを明かして、このまま神社造営を邁進するように言って、雷が鳴り響く光の中に入って行きました。 この辺は、謡での説明ですので、シーンを想像します。 実際には、舞台上のお作りの社の中に消えます。 ここでアイの登場、 今回は、深田博冶さんの末社の神で、ここまでの説明役です。 深田さん神役だったんですね。 舞台で拝見してた時は、神風(?)装束でもなかったので、神官かなあと思ってたんですが。 後場は金色の宮の扉から、天津太玉の神が光を発しつつ来現し、弓矢を射て悪魔を降伏させます。 外敵がいなくなり、天下泰平の御代となったことを言祝いだ神は、再び社殿にお戻りになられます。 舞台上で神が矢を射るという珍しい演出です。 そして実際に弓弦をはずすことによって、外敵の脅威がなくなり、平安の時代が訪れたことを象徴しているのだそうです。 昨夏、観世流の「金札」を見た時には、橋掛かりから、本舞台に実際に弓を射られていましたが、今回は、舞台から、橋掛かりに矢を向けて、射らずに、弓を下に落とすという演出でした。 新春にふさわしいお目出度い曲でした。 狂言「鴈雁金(がんかりがね)」。 津の国の百姓(野村萬斎)と、和泉の国の百姓(石田幸雄)は、新年の慣習で、上頭(うえとう・京の荘園領主)に年貢の初鴈(その年初めて捕獲した鴈)を納めるために都に上ります。 その途中で出会った二人は共に京に行くことにします。 2人とも、竹竿の先に藁苞を下げています。 あの中に鴈が入っているという事なのでしょうけれど、ちょっと納豆に見えてしまいました。 都に着くと、和泉の国の百姓は「初鴈」を、奏者(取次役・野村万作)を通して、津の国の百姓より、先に捧げます。 和泉の国の百姓が自分と同じものを納めたことを知った津の国の百姓は、名を変えて納めようと考え「初雁金」と言って捧げます。 奏者は、二人の百姓が同じ鳥を違う名前で呼ぶ理由を述べよ、という上頭の命を伝えます。 二人の百姓は、それぞれ鴈・雁金と呼ぶ根拠を、様々な詩歌・故事を引用して語りだします。 物語の展開は、「佐渡狐」の別バージョン風ですね。 ですが、「佐渡狐」のように張り合いにならず、双方ともに褒められ、仲良く舞ってエンディング。 全員で喜びを分かち合うということで、やはり、新年にふさわしい狂言でした。 最初に出てらした萬斎さん。 爽やかですっきりした雰囲気に包まれていました。 よい年を迎えられたのかな。
2016年01月12日
羽生結弦選手の「SEMAI」と、野村萬斎さんの「晴明」のミックス映像がありました。 羽生結弦選手の美しい動きと、14年前の陰陽師の萬斎さんが見られます。※2015年12月30日(水)22:00~22:50 NHK-BS1『羽生結弦×野村萬斎 表現の極意を語る』放送予定・
2015年12月29日
先週の木曜日に、宝生能楽堂に、「第72回 野村狂言座」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「八幡前」、「川上」、「米市」。 まずは、解説から。 今回は、野村萬斎さんでした! 狂言「八幡前」。石清水八幡宮の山下に住む有徳人(三宅右近)が、一人娘の婿として一芸に秀でた者を募集するという高札を打ちます。 それを見た婿志願の若者(三宅近成)は、婿入りするために何か芸を教えてもらおうと、知人(三宅右矩)のもとを訪ねます。 知人は一計を案じ、まずは弓の名手だと言って、近くの放生川で鳥を射て、射損じたら、歌を詠めといいます。 すると優れた歌詠みだということで、婿入り間違いなしだと。 ところがこの若者、この短い和歌さえ覚えられないんですね。 仕方がないので、知人も、川に行って、見物人に紛れてこっそり教えようとするのですが…。 久しぶりに、初見の狂言でした。 三宅一門の出演、三宅右近さんは、いつ聞いても、はりのあるお声です。 狂言「川上」。吉野山に住む盲目の男(野村万作)が、霊験あらたかな川上の地蔵に目を向けてもらおうと参詣に出かけます。 地蔵堂に籠ったその夜、男は御霊夢を賜り、念願かなって間が見えるようになりました。 大喜びで帰宅するのですが、実は目を開けてもらうには、長年連れ添った妻との離別が条件でした。 その話を聞いて腹をたてた妻(野村萬斎)が、絶対に別れないと言い張るのです。 男は、結局妻と別れられず、また、眼も見えなくなり、妻に手を取られて去って行きます。 何度も、見ている狂言なのですが、昨日は、圧巻だったように思います。 2人しか出てこない芝居、一人で情景を語る芝居。 日本独自のこの狂言という演劇の神髄だったように思います。 萬斎さんに手を取られて、寂しげに橋掛かりを去る万作さんの姿は、見所全体が強く引き込まれていました。 狂言「米市」。目をかけてくれる有徳人(深田博冶)から、いつも米の援助を受けて年を越している貧しい太郎(石田幸雄)。 今年に限って米が届かないので、有徳人の家に催促に出かけます。 もう蔵を閉めてしまったので、蔵の外に出ていた分の米俵をやろうということで、太郎は俵を背負って帰ることにします。 また、毎年貰っている妻への小袖の古着ももらい、それを俵にかけてもらうと、まるで人を背負ったように見えるので、もし通行人に声を掛けられたら、 「俵藤太の娘米市御寮人の里帰り」と答えるようにと教えられます。 上機嫌で歩く太郎に目を付けたのが、通りかかった若者たち。 太郎の背中にいるのが米市御寮人だと聞くと、ぜひともお盃を頂戴したいと言い出します。 これも、初見の狂言でした。 何とか、無事に越したい年末、年の瀬らしいしみじみとした狂言でした。 萬斎さんの舞台、今年最後の観劇でした。 今年も、素晴らしい舞台をありがとうございました。
2015年12月08日
日曜日に、国立能楽堂に「万作を観る会」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「千鳥」、小舞「鮒」、狂言「楢山節考」。 狂言「千鳥」。 主人(内藤連)が太郎冠者(野村萬斎)を呼び出し、あすの祭りの酒を買って来いと命じます。 ですが、酒代はずっと未払い。 酒屋(石田幸雄)を騙して酒を持ってくるしかない~太郎冠者は、しぶしぶ引き受けます。 案の定、酒屋は支払いが済まなければ酒は渡せぬと。 そこで太郎冠者は苦心算段。 今年は米が豊作なので、今届きます~それまで面白い話をと、尾張の津島祭に行った時に、子供が浜で千鳥の生け捕りをしてました~とか。 でも、この話では、酒屋の隙がなく失敗。 そして、今度は流鏑馬の話。 酒屋に的にする扇を持たせ、見えないようにして、その隙に…。 小舞「鮒」。野村遼太。 能「白髭」のアイで登場する舞い。 近江国の社、白髭明神のつかわした鮒で、勧進聖の助っ人として湖上に現れ、寄付をかき集め、舟の高速曳航までする水神なんだそう。 その活躍を現した舞い。 遼太君、26歳なったそうです。 小学生の頃から見ているので…大きくなったなあ。 狂言「楢山節考」。 おりん(野村万作)、辰平(深田博冶)、けさ吉(高野和憲)、又やん(月崎晴夫)、又やんの息子(中村修一)、村人(石田幸雄、岡聡史、内藤連、飯田豪)、語り手・烏(野村萬斎)。 昭和32年に上演された新作狂言で、58年ぶりの再演だそうです。 「楢山節考」(ならやまぶしこう)は、深沢七郎の短編小説で、民間伝承の棄老伝説を題材とした作品、1983年に映画にもなりました。 私は、本も読みましたし、映画も観ました。 どちらも、今でも強く印象に残っている作品でしたので、狂言の舞台で、どのように再現されるのか、と楽しみにしていました。 最初の萬斎さんの語りの朗読で、すでに映画のシーンが想い起こされました。 限りなく集約された場面であり、淡々とした展開であるのに、本や映画での様々なシーンがよみがえってきます。 他の演劇では、もっと役者の演技らしい演技でみせるのでしょうが、おりん役の万作さんは、一言も台詞を発しない…のです。 この作品を58年前、万作さんが26歳で上演なさったというのは、すごいと思う。 語り手の後、烏になった黒装束の萬斎さん。烏の形態描写もさすがでしたが、後ろ姿の美しさ…、また、見惚れてしまいました。 是非、もう一度見てみたい素晴らしい作品でした。
2015年12月03日
日曜日に、矢来能楽堂に、「第10回 碧風會」を観に参りました。 矢来能楽堂は久しぶり。 神楽坂にあるこの能楽堂は、1952(昭和27)年に建てられた古い能楽堂。 椅子席と座敷席があり、こじんまりとしていて、私は好きな能楽堂です。 昨日の番組は、仕舞「放下僧」・「富士太鼓」、狂言「鍋八撥」、能「望月」。 観世清正さんによる見どころ解説がありました。 いつもながらの丁寧で面白い解説。 子方で、「望月」に出演した時の失敗談。 台詞のタイミングが遅れて…子供ながらに大反省して、その日のご褒美~子方当時は舞台に出るとご褒美がもらえるようですね~を辞退したとか。^^ 仕舞「放下僧(ほうかそう)」 観世喜之。 牧野兄弟が、父の敵を討つため、放下僧と放下になりすまして仇討ちを果たします。 敵を油断させる舞の部分で、直後に仇討ちが決行される緊迫した場面です。 仕舞「富士太鼓(ふじだいこ)」観世喜正。 天皇の管弦の催しに、2人の太鼓の楽人が対立し、富士という楽人が殺されてしまいます。 残された妻と子は、敵討ちをしようとするのですがあきらめて故郷に帰ります。 観世喜正さんの舞いは、本当に端正な舞いだといつも思います。 狂言「鍋八撥(なべやつばち)」。 目代(岡聡史)が新しい市を開くことをふれ、一番先に到着した者を市の代表者と認めて免税にするとの高札を立てます。 一番のりしようと鍋売り(野村万作)が市場に来たのですが、すでに鞨鼓売り(内藤連)が先に来て眠りこけていました。 そこで、鍋売りは、一番乗りのフリをして、鞨鼓売りの前に陣取り、そこで眠ります。 目を覚ました鞨鼓売りは、びっくり仰天。 もちろん順番争いとなります。 そこへ目代が来て、双方の言い分を聞きますが、ラチがあかないので、勝負をさせます。 この勝負が見どころ。 振り合い~鞨鼓売りは、鞨鼓を括りつけていた棒を見事に振りますが、鍋売りは、鍋を振ります。あぶな~。 次は、たたき合い~鞨鼓はもちろんたたくものですが、鍋売りは、鍋をたたくしかありません。あぶな~。 最後の見どころは、鞨鼓売りが舞いながら、水車(側転)で退場するとことろ。 内藤連さんの水車は、勢いがありました。 …萬斎さんの水車はきれいでしたねえ、もうやらないだろうな。 そして、その水車を真似ようとした鍋売りは回り切れずにうつぶせに倒れてしまいます。 その下には鍋が…。 もちろん割れて粉々に…が通常バージョン。 割れない時と割れた時では、最後の決め台詞が違うそうですが、今回も、見事に割れました。 ちなみに、割れてないバージョンは、まだ見たことがありません。 能「望月」。 信濃国の安田友治は口論の末、望月秋長(ワキ・森常好)に殺害されてしまいます。 主を失った安田一族は離散。 友治の妻(ツレ・永島充)と子・花若(子方・黒沢樹)は、故郷を逃れて、流浪の身となります。 友治の家来・小沢友房(シテ・小島英明)は、都にいました。 主人の大事を聞きながらも、自身の命も狙われていたので、国帰れず、近江国の「甲屋(かぶとや)」という宿屋の主人となっていました。 そこへ寂しげな親子が一夜の宿を求めてやってきます。 それは、殺された友治の妻子でした。 友房は、自身の名乗りをし、3人は再会を喜びあいます。 そこへ、偶然にも、帰京する望月秋長が、この甲屋に宿泊するのです。 秋長は、その名を隠していたのですが、伴人(アイ・野村萬斎)が迂闊にもバラしてしまいます。 3人は、秋長をもてなす芸尽くしをしながら、宴の席で、敵討ちを成し遂げます。 昨日、萬斎さんは、狂言には出られず、能のアイでのご出演でしたが、「望月」のアイは出番が長いし、おシテが小島英明さんでしたので観に参りました。 「望月」は、現在進行形のドラマ仕立てのハラハラドキドキ能。 見ていてとても面白い能ですが、演じる側にとっては、なかなかの重い習いなのだそうです。 おシテの小島さん、強い覇気が感じられて、よい会でした。
2015年11月20日
先週の木曜日に、よみうり大手町ホールに、「第1回 よみうり大手町狂言座」を観に参りました。 よみうり大手町ホールの観劇は、初めてです。 このホ-ルは、昨年春に、多様なジャンルに高度に応える多機能型の音楽ホールとしてオープンしたばかりだそうです。 客席は、500席ほどで、能樂堂と同じくらいですね。 舞台上には、結構本格的な能舞台がしつらえてありました。 この日の番組は、狂言2番「木六駄」と「業平餅」。 芸を見せる「木六駄」と、能仕立ての出演者の多い華やかな「業平餅」と、なかなか豪華なラインナップです。 まずは、平岩弓枝さんのお話がありました。 とても、小柄な方で、あれだけのヒットドラマを次々と送り出したパワーはどこからくるのかしらと思うくらい。 初めて、知ったんですが、生家は、代々木八幡宮なのだそうです。 古典芸能は、仕舞のお稽古から始まって~1回でやめたそうですが~、万作家の舞台は長年見ていらしたそうです。 狂言「木六駄」。 主人(中村修一)は、山ひとつ向こうの都に住む伯父(石田幸雄)へのお歳暮として、炭を六駄と木を六駄、それに上等の樽酒を届けるように太郎冠者(野村万作)に命じます。 雪の降る中、荷を積んだ十二頭の牛を追い、ようやく峠の茶屋に辿り着いた太郎冠者は、酒を所望するのですが、あいにく切らしていてありません。 そこで、届けるはずの樽酒に手をつけ、茶屋(野村萬斎)と酌み交わすうちに全部飲み干してしまいます。 さらに酔った勢いで木六駄まで茶屋にやってしまい、太郎冠者は、残りの炭六駄をのせた牛を引いて伯父のもとへ向かいます。 第1回目ということで、この番組をだされたのでしょうか。 降るしきる雪の中、一本の追竹だけで十二頭の牛を追う太郎冠者~万作さんのお得意の役ですね。 素囃子「男舞」。大鼓・佃良太郎、小鼓・鳥山直也、笛・小野寺竜一。 狂言「業平餅」。 美男かつ色好みで知られる在原業平(野村萬斎)が、伴を連れて玉津島明神の参詣に出かけます。 途中で空腹になり餅屋(深田博冶)に入りますが、殿上人の業平は代金の持ち合わせがなく、食べることができません。 仕方なく餅尽くしの話で気を紛らわせていると、業平の素性を知った餅屋が娘の宮仕えを願い出ます。 娘(高野和憲)を一目で気に入った業平は、自分の妻として娶ると言い出します。 とは言っても、衣を被っていて娘の顔を見ていないのす。 あとで、顔を確認した業平は…。 美男かつ色好みの在原業平~萬斎さんにピッタリの役どころ。 やはり、ほとんど萬斎さんが業平を演じられますね。 今回は、目の覚めるようなきれいなオレンジ色のお召し物で、ステキでした。
2015年11月17日
日曜日に、国立能楽堂に、「橘香会」を観に参りました。 この日の番組は、能「定家」、仕舞「盛久」・「七騎落」、狂言「蝸牛」、仕舞「清経」・「駒之段」・「笹之段」、能「石橋」。 馬場あき子さんの「定家」に関する丁寧な解説から始まりました。 定家の生きた時代~源平の戦乱が始まろうとする時期。 歌人としても有名な式子内親王ですが、後白河法皇の皇女で、斎院と務められた後の住まいに定家が訪れていたそうですが、10歳も年齢が離れていたそうです。 能「定家」。 旅僧(ワキ・福王和幸)の前に現れた里女(前シテ・梅若万三郎)は、藤原定家が建てた時雨の亭や式子内親王の墓を案内します。 里女は墓前で内親王と定家の秘められた恋と、内親王の死後その墓に定家葛が這いまとわるようになった事を物語し、姿を消します。 定家葛 所の者(アイ・野村萬斎)がさらに、そのことを深く語ります。 僧が法華経を読み上げると墓から内親王の霊(後シテ)が現れ、経の力で定家葛の呪縛から解き放たれたことを喜びます。 霊はその報恩のために舞を舞いますが、自らの醜い姿を恥じ墓へと戻ると、再び定家葛が墓を覆うのでした。 ワキの旅僧!あれ?萬斎さん?! と、一瞬思ったくらい横顔がおきれいなワキ方さんで。 あんな若くて、背が高い、ワキ方いらしたかしら…? ワキを務められた福王和幸さんは、少し前まで、関西中心に活動してらしたそうで、私は初めて拝見しました。 萬斎さんもアイで出てらしたんですが、今回は、思わず、ワキ方に見惚れてしまいました。^^ 仕舞「盛久」・青木一郎、仕舞「七騎落」・中村裕。 狂言「蝸牛」。羽黒山の山伏(野村萬斎)が藪の中で昼寝をしていると、主人(月崎晴夫)に命じられて蝸牛を探しに来た太郎冠者(石田幸雄)に起こされ、蝸牛に間違われます。 太郎冠者をなぶってやろうと考えた山伏は蝸牛になりすまします。 「蝸牛(かぎゅう)」は、楽しい曲。 ですが、山伏になかなかの動きがあるので面白く好きな曲です。 相変わらず、萬斎さんの動きはシャープでおきれいでした。^^ この後の番組は 、時間がなく、残念でしたが、拝見せずに帰りました。
2015年10月29日
木曜日には、国立能楽堂に、「第12回 萬歳楽座」を観に参りました。 この日のの番組は、狂言「狸腹鼓」、能「羽衣 和合之舞」。 この会を拝見したのは、久しぶりでした。 まずは、主催者である笛方藤田流宗家、藤田六郎兵衛さんの解説から。 いつものとおり、お顔に似合わず~ごめんなさい~お優しい声です。 狂言「狸腹鼓(はらつづみ)」。 秋の月夜、弓矢を携えた猟師(石田幸雄)がやってきます。 この猟師さん、殺生大好き。 つい最近、身重の狸を捕まえ損ねたので、今日こそはと野原にやってきました。 そこへ、雌の狸(野村萬斎)が。 実は、夫の狸が2,3日前から戻ってこないので、心配して、尼に化けてやってきたのです。 しかし、そこで猟師に出くわしてしまいます。 尼(実は狸)は、殺生が面白いという猟師に向かって説教をします。 釈迦の教えの五戒の中でも、一番戒めているのは殺生戒で、これは、念が深いので、その怨みは子々孫々までにおよぶと話し、狐や狸を捕るのは罪深いことだと語ります。 猟師はそれを聞いて、今後は改心し、殺生はしないと誓います。 狸は猟師と別れて、再び、夫を探しに行くのですが、菊の茂みに寝ていた犬を夫と間違え、危うく喰われそうになり、柴垣の陰に隠れます。 そこへ猟師がやってきて、狸だと見破り矢をつがえます。 狸は、腹の子を不憫と思って助けて欲しいと頼みます。 そこで猟師は腹鼓を打って見せるなら助けようと言います。 この狂言は、「一子相伝」と言われる重い習いの狂言だそうで、なかなか演じられないそうです。 昨年の「狂言ござる乃座」の50回記念で、萬斎さんが演じられ、私も観るのは2回目。 昨年も思いましたが、確かに、この曲が秘曲なのがよくわかります。 身重の雌狸の動きは、「釣狐」と同じくらいに修練が必要なのではないかな。 忙しいこの秋によく演じられたと思います。 狸は、橋掛かりでの演技も多いので、今回は橋掛かりに近いお席をいただけてラッキーでした。 能「羽衣 和合之舞」。 春の朝、三保の松原に住む漁師・白龍(ワキ・宝生閑)は、仲間(殿田謙吉、大日方寛)と釣りに出た折に、松の枝に掛かった美しい衣を見つけます。 家宝にするため持ち帰ろうとした白龍に、天女(シテ・観世清和)が現れて声をかけ、その羽衣を返して欲しいと頼みます。 白龍(はくりょう)は、はじめ聞き入れず返そうとしませんでしたが、「それがないと、天に帰れない。」と悲しむ天女の姿に心を動かされ、天女の舞を見せてもらう代わりに、衣を返すことにします。 羽衣を着た天女は、月宮の様子を表す舞いなどを見せ、さらには春の三保の松原を賛美しながら舞い続け、やがて彼方の富士山へ舞い上がり、霞にまぎれて消えていきました。 さすがに、藤田さんの会で出演者が豪華。 宝生閑さんも久しぶりに拝見いたしました。 観世清和さんの天女は本当に美しく~面のはずなのに、その瞳は瞬きをしているような~、まさしく天女の舞いでした。。
2015年10月18日
水曜日に、世田谷パブリリックシアターに、「MANSAI●解体新書 その弐拾伍 解析 ~伝統芸能×テクノロジー~」を観に参りました。 この企画は、現代芸術の世界を構成しているさまざまな分野・要素をパーツに分け、それぞれの成り立ちと根拠をあらためて問い直すシリーズ。 野村萬斎さんが企画されて、もう25回、10年以上続いています。 が、平日の夜の開催が多く、また、開始当初は、チケットの一般販売がなく、抽選のみでしたので、チケットの入手も困難だったということもあり、もう25回もやっているのですが、私はほんの数回しか観に行ってないのです。 今回は、日程の調整がついたので、久しぶりに参りました。 今回のゲストは、クリエーティブ・ディレクターの菅野薫さん、NHKのクリエーティブ・ディレクターの森内大輔さん、ライゾマティクス社の堂本悠介さん。 様々なデータを解析し、それをまたいろいろなアプローチで可視化させていく専門家です。 東京駅の駅舎にほどこされたイルミネーション映像などを手掛けたり。 フェンシングの太田雄貴さんの剣の通り道を可視化映像したり。 空間でありながら、常に正確に同じコースをたどるのがわかります。 すごいですね。 そして今回のテーマは、「解析」。 萬斎さんを解析しちゃうのです。 萬斎さんが身体にプログラミングしてきた「型」。 そこにひそむデジタル的側面を可視化。 萬斎さんの舞う「三番叟」がなぜ美しいか。 「三番叟」を舞う萬斎を何台もの4Dカメラで撮影したものを点と線のみの解析映像してみました。 点と線になっても美しいものは美しい。 ぶれない中心軸が、より鮮明になります。 足の置く位置、手の高さ、中心線の運び方とか、勉強するにはああいう解析映像はいいでしょうね。 少しでも、萬斎さんの動きを理解して近づけるかも。 ですが、どんなデーターをとって解析しても、萬斎さんの美しさはご本人しかできないでしょうけれど。 ダンスでもそうですが、データーや理屈では解析できないものがありますから。 以前の映像ですが、美しい「三番叟」を。
2015年10月03日
野村萬斎さんのテレビのCM,「ヤマサ 鮮度の一滴“マイしょうゆ”篇」がオンエアされました。 予告もなしに、いきなり始まりました。 部下の女性と小料理屋にやってきた萬斎さん。 博物館の部長らしい。 部下がお醤油を差し出すと、それを断って、奥さんお手製の赤いポーチから、「マイ醤油」を出します。 最後の「ヤマサ」ポーズが可愛いです。 それに、スーツ姿がとっても素敵。 オンエアーは、1ヶ月くらいの限定だそうです。 こちらでご覧になれます。
2015年09月26日
先週の木曜日に、宝生能楽堂に、「第71回 野村狂言座」を観に参りました。 昨日の番組は、小舞「菊之舞」、狂言「鳴子」・「腰折」・「牛盗人」。 解説は石田幸雄さん。 始めは、マイクを使おうとされたのですが、やはり生声のほうが聴きやすいということで、マイクを使わず。 そのとおり、さすがによく通るお声です。 小舞「菊之舞」。月崎晴夫。 寒菊、猩々菊、鴛鴦菊などの菊の名を連ね、重陽の節句に菊の酒を捧げると謡う秋らしい曲。 月崎さんの舞いをゆっくり拝見する機会はあまりなかったかも。 ちょっと短かったような。もう少し拝見したかったな。 狂言「鳴子(なるこ)」。主人(竹山悠樹)から、山田を荒らす鳥を追い払うように命じられた太郎冠者(高野和憲)と次郎冠者(深田博冶)は、早速田へ出かけ、鳴子を引いて鳥を追い始めます。 二人が庵に入って一休みしていると、主人が見舞いに訪れ、差し入れに酒樽を置いて行きます。~優しいですねえ~。 二人はありがたく酒を頂戴し、ほろ酔い気分で鳥を追い、楽しく飲んで、謡ううちに、いつのまにかぐっすりと寝込んでしまいます。 そこへ、2人の帰りが遅いのを心配した主人が迎えにやってきますが…。 最後は、当然ながら、主人に怒られますが、この狂言に出てくる主人は優しいですね。 この狂言は謡が長く、謡いながらの動きも多いので、後半はお2人とも 少し大変そうでした。 以前、この曲を見た時には、萬斎さんと深田さんと演じられ、あの時は、萬斎さんはNHKの「鞍馬天狗」の撮影で足の親指の生爪をはがした直後の舞台で、足て強く床を踏みならす所作は、どれだけ大変だっただろうかと、思い起こしました。 狂言「腰折(こしおり)」。大峯、葛城での修行を終えたばかりの若い山伏(岡聡史)が本国に戻り、祖父(野村万作)に家に立ち寄ります。 祖父は、久々に会う孫を大喜びで迎えますが、その腰が曲がっているのを見た山伏は、祈って伸ばしてやることにします。 祖父の腰はだんだん伸びますが、伸びすぎて反り返ってしまい、もう少し屈めようと祈ると、今度が前に折れ曲がってしまいます。 怒った祖父から、腰を元に戻せと言われてしまいます。 腰を曲げたり、伸ばしたりの所作は、結構大変です、さすが万作さん。 狂言「牛盗人(うしぬすびと)」。法皇の車を引くを牛を盗まれたので、鳥羽離宮の牛奉行(石田幸雄)が、犯人を訴え出た者に何なりと褒美を与える、という高札を出します。 すると、一人の子供(金澤桂舟)が、犯人は藤吾三郎(野村萬斎)であると訴えでます。 太郎冠者(中村修一)と次郎冠者(内藤連)は三郎を捕えてきますが、三郎は罪を認めません。 そこで訴え出た子供に対面させると、なんと2人は親子。 三郎は思いがけない我が子の裏切りに驚き、親の法事の費用のために牛を盗んだこと白状します。 獄へ引いていかれそうになったその時、子供が牛奉行に褒美をねだります。 その褒美とは、父・藤吾三郎の赦免だったのです。 以前見たときは、子方は裕基君で、まだあどけなく小さかったのですが、今回の子方はかなりしっかりとしてました。 子供に裏切られて、子供への思いを語る部分は、狂言ではないような愁嘆みちたシーン。 萬斎さんの語りで、また、今回も泣かされてしまいました。
2015年09月24日
日曜日に、軽井沢・大賀ホールに「軽井沢夏の狂言」を観に参りました。 この大賀ホールは、今年で開館10周年だそうです。 そういえば、私が前回訪れたのは、もう9年前くらいで、開館した次の年だったように思います。 前回は6月で、東京はもう暑かったのに、軽井沢は、とても肌寒く震えていたのですが、今回は、心地良い涼風の吹くさわやかな夏の軽井沢でした。 高野和憲さんの解説の後、3本の狂言が上演されました。 狂言「苞山伏(つとやまぶし)」。早朝から山に薪取りにきた山人(飯田豪)が、疲れて寝ていると、旅の山伏(深田博冶)が通りかかり、山人の寝ているそばで昼寝を始めます。 そこへ、さらに通りかかった男(石田幸雄)なんですが、あろうことか、山人の枕元に置かれていた昼食用の藁苞(弁当)を見つけ、それを食べてしまいます。 山人が目を覚ます気配に、男は慌てて寝た振り。 まもなく目を覚ました山人は、昼食が亡くなっていることに気づいて、大騒ぎ。 寝ている男~正確には寝た振りをしている男ですが~を起こして問いただすと、男は、ナントそばに寝ていた山伏に罪をなすり付けてしまいます。 あらぬ疑いをかけられた山伏ですが、そこはさすがに修行を積んでいる行者なので、法力で真犯人を明らかにしようと祈祷を始めます。 山伏のおなじみの「ぼ~ろん、ぼ~ろん」の呪文。 狂言に出てくる山伏は、いい加減な~が多いのですが、この山伏は、見事犯人を見つけ出します。 狂言「隠狸(かくしだぬき)」。主人(高野和憲)に隠れて狸を捕っている太郎冠者(野村万作)。 多分、小遣い稼ぎをしているのでしょうね。 噂を聞いた主人は、客に狸汁を振る舞いたいと告げるのですが、太郎冠者は狸など獲ったことはないとしらを切るので、それならば、市場で買ってくるようにと命じます。 ところが、実は、太郎冠者は、昨晩も狸を捕まえていたのですね。 主人に黙って売ってしまおうと市場へ出かけるのですが、太郎冠者を怪しんでいる主人も市場へ様子を見に出かけ、案の定、ばったりと遭遇してしまいます。 太郎冠者は、持っている狸を必死で隠すのですが、主人は太郎冠者に酒を飲ませたり、舞いを舞わせたり。 狂言の人物は、舞いが好きなんですね。 始めは気を付けて舞っているのですが、そのうちに舞いに夢中になってしまう~だいたいこのパターン。^^ この狂言は小舞が3曲、「兎」・「花の袖」・「鵜飼」も見られます。 万作さんの舞いのシャープさは相変わらずでした。 狂言「鈍太郎(どんたろう)」。3年ぶりに西国から帰京した鈍太郎(野村萬斎)。 早速妻(飯田豪)と女(愛人でしょうか。中村修一)を訪ねますが、長い間音信不通だったので、2人とも本物の鈍太郎だとは思わず、玄関払いを。 落胆した鈍太郎は、出家してひとり修行の旅にでることを決意します。 ところが後で本人と知った妻と女はが、慌てて鈍太郎に出家を思いとどまるように頼むと、鈍太郎は身勝手な提案をし始めます。 この狂言、いつも見るたびに思うのですが、鈍太郎さんって、いい男なんですね。 3年もほおっておかれても、戻ってきたら、大事にされるんだから。 まあ、だいたい、萬斎さんが演じられますけどねえ。 キャラクターは、チャラ男さんですが、舞いの部分には見どころがあります。 最後の女性2人の作った手車に乗る前に舞う舞いですが、さりげなくジャンプが入ります。 簡単そうにヒョイを飛ぶのですが、いつもかなり高さがあるのです。 今回、脇正(舞台横のお席)から拝見してましたので、、高さがよく見えました。 舞台正面のお席の方からも、感嘆の声が上がっていたので、正面から見ても、素晴らしい飛び方だったのでしょう。 さすが、萬斎さんです!!
2015年08月20日
土曜日に寒川神社に、「大東亜戦争終戦70周年記念 第46回相模薪能」を観に参りました。 終戦記念日、毎年恒例の相模薪能。 今年は、終戦70周年記念ということで、プログラムに昭和天皇の御歌が載せられていました。 戦なき 世を歩みきて 思い出づ かの難き日を 生きし人々 ~天皇陛下御製~ 心地良い~よりは少し強めの風の吹く中、例年どおり始まりました。 まずは、舞台四方のお清め、祝司奏上、謡「四海波」奏上、そして火入れ式。 今年初の試みで、長唄「鳥の千歳」で花柳眞理子さんの踊り。 「鳥の千歳」は、実在した白拍子の名だそう。 この曲には「水の風景」がたくさん歌い込まれ、汲んでも尽きることの無い水の様に、日本が永く平和が続くようにとの思いが込められているそうでした。 能「金札(きんさつ)」。神が悪魔を射払う神事芸能を舞台化した能だそうです。 平安京を造営された桓武天皇が伏見に大社を建てようと勅使(ワキ・殿田殿吉)を派遣。 奇跡は起こり天太王命(観世喜正)が出現、弓矢をもって悪魔を降伏させ、八百万の神を従え、御代を守る誓いをします。 舞台で、実際に弓を射て、弦を外したり。 おシテの観世喜正さんは、本舞台から橋掛かりに見事に矢を射ぬいてらっしゃいました。 実際の所作を行う珍しい能だそうです。 狂言「簸屑(ひくず)」。宇治橋の供養で人々に振舞いたいと主人(中村修一)は、太郎冠者(野村萬斎)に茶の簸屑(ふるって残った屑)を挽かせます。 しかたなく茶を挽くのですが、しきりに眠いのです。 使いから戻った次郎冠者(深田博冶)がなにかと相手をするのですが、とうとう眠り込んでしまいます。 次郎冠者は、眠る太郎冠者に鬼の面をかぶせてしまいます。 そこに戻った主人は鬼がいることに驚いて~まあ、当然ですが~追い出そうとします。 能「海士(あま)」。大臣藤原房前(片倉翼)は、大臣藤原不比等の子として生まれながら母をりません。 侍臣の失言を手掛かりに、四国の志度に赴いた房前は、海士の言葉から出生の秘密を知り驚きます。 海士は父大臣の求めに応じて竜宮に奪われた宝珠を命を掛けて奪い返した様子を語り、母の亡霊であることを明かして去ってしまいます。 中入。 盛大な法要の中、成仏して菩薩となった母は、喜びの舞いを舞います。 後シテの、菩薩は、かがり火に照らされた面がはっとするほど美しく、また淡い緑色の長絹と、下に着られた金糸の縫い取りで飾られた深い緑色の装束の色合いが本当に素晴らしかったです。
2015年08月19日
木曜日に、世田谷パブリリックシアターに、「敦~山月記・名人伝~」を観に参りました。 日曜日は、プレビュー公演でしたが、本日は本公演。 萬斎さんのことなので、細部を練り直して上演されていることでしょうから、日曜日に拝見した時よりも、全体が鮮明な感じになっていたように思いました。 今回の座席は、席順でいえば、5列目でしたが馬蹄形のこの劇場ですと、左端のお席は2列目にあたり、また一段高くなっていて、ちょうど舞台と同じ高さに客席があるので、よく拝見できました。 日曜日は、左側の最前列で、客席が舞台よりした下でしたので、見上げて見てました。^^ 4人の敦(野村萬斎、深田博冶、高野和憲、月崎晴夫)が、劇中の人物として登場しながらも、観客?あるいは自分自身?に問いかけていくのは、前回同様とても面白い。 4人とも、写真の敦さんにそっくりです。 音楽は、前回同様に、大鼓の亀井広忠さんと、尺八は藤原道山さん。藤原道山さんって、ほんとにいい男さんですね。 尺八は、敦の心中を表す切ないメロディーを奏でたり。尺八の音色が、こんなに美しいのかと改めて思います。 大鼓は、素晴らしい効果音にもなります。 「山月記」では、李徴(野村萬斎)と大鼓の、能の「道成寺」の「乱拍子」ような息詰まる場面もありました。 今回の公演のプログラムは、上演台本が掲載されていますし、萬斎さんのポートレートが、ナント3枚もおまけについてくるのでお勧めです。 ※世田谷パブリックシアターにて、明日まで上演中です。
2015年06月20日
日曜日に、世田谷パブリリックシアターに、「敦~山月記・名人伝~」を観に参りました。 2005年、2006年以来の再演です。 「山月記」。唐の時代、隴西(ろうさい)の李徴(りちょう・野村萬斎)は博学才穎(さいえい)にして、官吏であることに飽き足らず、詩人として名を成そうとその道を選ぶのです。 しかし名声はなかなか上がらず、生活に窮した李徴は、再び地方の官吏になるのです。 ですが、もともとの性格もあるのか、周囲とも融合せず、絶望と挫折感に苛まれ、ついには発狂して行方知れずに。 翌年、李徴の旧友袁傪(えんさん・石田幸雄)は公用の旅の途中、人食い虎がでるという駅吏の忠告を斥けて、残月の光を頼りに、山中に足を踏み入れます。 すると、一匹の猛虎が叢の中かから躍り出て、袁傪に襲い掛かろうとしたのですが、なぜか身を翻し、再び叢の中に消えたのでした。 やがて聞こえて来た声に、袁傪はそれがかつての友人、李徴の声であることを悟ります。 そして、袁傪の問いかけに、李徴は自分の数奇な運命と苦しい心の中を語りだすのです。 前回、李徴は、万作さんが演じられたのですが、今回は、萬斎さんが演じられました。 虎になった時の萬斎さんの動きのシャープさに目を奪われて、李徴の苦しみにシーンに集中できなかったみたい…反省。 「名人伝」。趙(ちょう)の国の紀昌(きしょう・野村萬斎)は、天下一の弓の名人になろうと志を立て、弓矢をとっては比肩するものなしという飛衛(石田幸雄)に弟子入りします。 飛衛の教えに従いひたすら修練を重ねた紀昌は、めきめき上達し、やがて天下一の名人になるために、飛衛を討とうとたくらみます。 しかし、両者互角の勝負になり、危うく難を逃れた飛衛は、この危険な弟子に新たな目標を与えます。 この道を極めようと望むのなら、霍山(かくざん)の甘蠅(かんよう)老師(野村万作)を訪ねよと告げます。 紀昌は、すぐに旅立ち、目指す霍山の頂に辿り着くと、彼を迎えたのは、羊のように柔和な目をした、齢百を超えようかという、腰が曲がり、白髪を地に引き摺って歩くよぼよぼの老人でした。 ですが、このおじいさん、ただものではありません。 紀昌は、自分の弓の腕前を披露するのですが、弓を使って射るのは、まだまだ未熟。 本当の名人は、「不射之射」、つまり弓を使わないのです。 確かに、この老人は、弓を使わず、鳥を射落としたのでした。 紀昌は、そんな、名人のものとに、9年留まり、山を下りるのです。 がその時に紀昌(野村万作)は、穏やかな全くの別人になっていました。 前回は、名人&老紀昌は、亡くなられた万之介さんが演じられました。 飄々としてとぼけた名人は、万之介さんにピッタリの役だと思いましたが、今回の万作さんの名人もまた素晴らしい。 この作品のために作られた、本舞台の上に載せたスローブ状の橋掛かり的な舞台。 そして、劇中のナビゲーターであり、役者でもある4人の敦。 初演で見た時に、この作品の萬斎さんの演出の素晴らしさに感嘆しましたが、今回も素晴らしいと思います。 ただ、昨日は、最前列でしたが、この舞台、客席ととても近いので、最前列だと見えにくい場面が…。 まあ、自分で最前列を取ったのだから仕方ないですが。 どうしても、よりそばで見たいので…、時々あるんですよね、こういう失敗。
2015年06月17日
NHK番組発掘プロジェクトから「発掘ニュース」。 35年前の5月5日“こどもの日”に放送された番組。 ナント、野村萬斎さんの中学生の時の狂言の舞台。 まだ本名の野村武司君で、狂言 『附子(ぶす)』のシテ(主役)を演じています。 可愛い!! こちらでご覧くださいになれます。 動画でないのが残念ですが。 http://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/news/detail.html?id=058 ついでに、萬斎ニュース。 今週土曜日朝、TBS「サワコの朝」にご出演されます。 http://www.mbs.jp/sawako/
2015年06月04日
土曜日に、関内ホールに、「狂言の現在 2015」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「蝸牛」、「二人袴」。 まずは、レクチャートーク。 野村萬斎さんでした。 「今日は出ずっぱりです。」とおっしゃってました。 まさに、そのとおり。 狂言2番に、トーク。 普通は、御着替えがあるので、トークから出ずっぱりは珍しい。 当初はその予定ではなかったのですが、演者変更があったらしく…。 チケットが発売されてから知ったので、私も、慌てて購入。 なので、前のほうのお席が取れませんでしたが。 狂言「蝸牛(かぎゅう)」。修行を終えて帰る途中の出羽・羽黒山の山伏(高野和憲)が竹藪で休んでいると、主人(内藤連)の命で、長寿の薬になるという蝸牛(かたつむり)を取りに太郎冠者(野村萬斎)がやってきます。 太郎冠者は、かたつむりを見たこともないので、寝ている山伏をかたつむりだと思い込み、声をかけてきます」。 先週の船橋の会と逆の配役。 萬斎さんがトークをなさったので、御着替えの関係上、後から、登場する太郎冠者をなさったのだと思いますが…。 実は、14年間も萬斎さんの舞台を拝見しているのに、「蝸牛」で萬斎さんが太郎冠者を演じられるのは、初めて観ました。 まるで、太郎冠者がシテのようでしたが。 狂言「二人袴(ふたりばかま)」。 世間知らずの若い聟(岡聡史)が、「聟入り(妻の実家への挨拶)」に一人で行けずに、父親(野村萬斎)に門前まで付き添ってもらいます。 一枚しかない礼装用の長袴を着せてやって父親が外で待っているところを、舅(深田博冶)の家の太郎冠者(月崎晴夫)に見つけられ、息子と交代で長袴を着替えて挨拶に行くのですが、二人一緒に来てくれと言われてしまい…。 仕方なく、1枚の袴を二つに割いて、二人で舅のもとへ。 しかし、この袴、後ろがないので、絶対に後ろを見せられません。 そんなことを知らない舅は、宴たけなわの頃、聟に舞う様に命じます。 この「二人袴」も、長い間、萬斎さんが聟さんで拝見してきましたが…。 最近は、舅役も慣れてこられたような。
2015年05月19日
木曜日に、船橋市民文化ホールに、「野村萬斎 ~狂言の夕べ・船橋公演~」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「舟渡聟」・「蝸牛」。 解説は、野村萬斎さん。 昨日の萬斎さんは、なぜか、とても饒舌。 解説時間も、のびてしまったんじゃないかしら。 髪もだいぶ伸びていらっしゃいました。 「スケベなので早く伸びます」と、ご自分でおしゃってました。 確かに 狂言「「舟渡聟(ふなわたしむこ)」。聟(中村修一)が初めて妻の実家に挨拶に行く途中、琵琶湖で渡し船に乗ります。 酒好きの船頭(石田幸雄)は、聟の持つ酒樽に目を付けて振舞うように迫るのですが、断られると、船を漕ぐのをやめたり、激しく揺らしたりします。 聟さんは、仕方なく、船頭に酒を飲ませ、残り少なくなり軽くなった酒樽を持って舅宅へ。 やがて外出していた舅が帰宅するのですが、舅は聟の顔を見てびっくり仰天。 舅は先程の船頭だったのですね。 舅は妻(深田博冶)に言われ、仕方なく大事にしていた顔の髭を剃りおとし、さらに、顔を隠して対面するのです…。 聟といえば、以前は萬斎さんか、高野さんの持ち役だったんですが。 もう、そろそろ、ご卒業の年齢ですものね。 いつも妻役だった石田さんの船頭も新鮮でした。 狂言「蝸牛(かぎゅう)」。修行を終えて帰る途中の出羽・羽黒山の山伏(野村萬斎)が竹藪で休んでいると、主人(内藤連)の命で、長寿の薬になるという蝸牛(かたつむり)を取りに太郎冠者(高野和憲)がやってきます。 太郎冠者は、寝ている山伏をかたつむりだと思い込み、声をかけてきます。 実は太郎冠者は、かたつむりを見たことがなかったんですね。 それで、主人に特徴だけを聞いてきたんです。 まあ、ご主人様の説明もざっくりなんですが。 人間くらいのかたつむりもいるなんて教えてしまうから。 面白がった山伏はかたつむりになりすまします。 屋敷まで来てほしいという山伏に、囃子言葉に浮かれながらなら行くといい、太郎冠者に囃子言葉を教えます。 「雨も風の吹かぬに出ざかま打ち割ろう~でんでんむしむし、でんでんむしむし。」 囃子物は、昂揚感を与えます。 いつのまにか、二人はノリノリ。 そこへやってきた主人。 最初は苦々しく思っていたのですが、いつのまにか、一緒に囃子はじめてしまうのです。 何回みたかわからないくらい見ている狂言ですが、やはり萬斎さんの山伏は最高です!
2015年05月12日
木曜日に、宝生能楽堂に、「第70回野村狂言座」を観に参りました。 昨日の番組は、小舞「八島」・「桜川」、狂言「二人大名」・「八句連歌」、素囃子「男舞」、狂言「法師ヶ母」。 解説は、石田幸雄さん。いつもながらに、丁寧にはしょった?解説でした。 小舞「八島」。飯田豪。 能「八島」の終曲部で舞われる舞いで、源義経の霊が勇ましく戦う様子を見せています。 謡の声も、舞いも、きりっとしたシャープさがあって、これからが楽しみな演者さんです。 小舞「桜川」。深田博冶。 狂女物の能「桜川」の最大の山場の舞いで、散りかかる桜の花に、生き別れとなった我が子桜子を重ねて懐かしむ母の様子を現した舞い。 なかなか静かな趣のある舞いで、さすがにベテランですね。 狂言「二人大名」。 二人の大名(竹山悠樹、岡聡史)が、連れだって野遊びに出かけます。 二人が春野の景色を楽しみつつ休んでいると、急な使いを言いつかって、先を急ぐ男(月崎晴夫)が通りかかります。 供を連れてこなかった大名たちは、男を供に仕立て、脅して太刀を持たせます。 最初は我慢していた男でしたが、突然怒り出して、太刀で脅して大名の腰刀も取り上げ、着物も脱がせて、揚げ句に、鶏の蹴りあいや犬の噛み合いの真似までさせます。 そして、最後は起き上り小法師の真似を強要されるのですが、なぜか、だんだん大名たちも、ノッテっちゃうんですね。 竹山悠樹さんのこの曲でのシテ(主役)は、初めて観ました。 岡さんの大名姿は、凛々しく美しい…。 狂言「八句連歌」。貧しさのため借金をした男(野村万作)でしたが、なかなか返すことができません。 せめて詫びを言おうと、久々に貸主の男(石田幸雄)のもとに出かけますが、貸主は、また無心されては困ると居留守を使います。 男は帰りがけに庭の桜に目を留めて、花見をしながら連歌を楽しんだ昔を思い出し、発句を詠み置いて帰ろうとします。 もともと連歌仲間だった二人なので、発句を目にした貸主は男を呼び戻して、早速連歌のつけ合いを。 連歌のやり取りをしているうちに、男の借金を返せぬことへの詫び心を感じ取った貸主は、なんと、借金をちゃらにしてあげ、借用書を返してくれます。 連歌の力、畏るべし。 やはり、万作さんと石田さんの掛け合いは絶妙です。 素囃子「男舞」。大鼓・柿原光博、小鼓・鳥山直也、笛・松田弘之。 武士役が颯爽と舞う、テンポの良い曲趣です。 狂言「法師ヶ母 二度之舞」。 酒を飲んで帰宅した男(野村萬斎)は、酔った勢いで妻(高野和憲)の態度に難癖をつけて、暇の印を渡して追い出してしまいます。 妻は子供(狂言ではかな法師と言います)に心を残しながら、泣く泣く実家へ向かいます。 酔いの覚めた男は、後悔のあまり半狂乱。 妻を探し求めて泣きながら歩き回ります。 なら、最初から、するなよ~と思いますが。 ようやく、実家に帰る途中の妻と出会って、懸命に謝り…。 結局、許してもらえますけどね。 後半部分は、能の形式で演じられ、放心のていの男の様子がとても哀れに見えますが、なんといっても、前半のぐでんぐでんの泥酔萬斎さんがお見事です。
2015年04月19日
2010年、「ファウトの悲劇」(演出:蜷川幸雄)で、野村萬斎さんが踊られたタンゴです。 セクシー!?
2015年04月16日
水曜日(4月1日)に、靖国神社能楽堂に「夜桜能」を観に参りました。 雨の予報でしたので、日比谷公会堂での開催になるかと思っていたのですが、予定通り靖国神社で強行?開催されました。 入口でレインコートが配られ…。 ちょうど開始時間に合わせたように雨が降り始め、桜の花びらと雨の雫が舞う夜桜能になりました。 夜桜能は、毎年4月の始めに3日間開催されますが、私は「第一夜」に参りました。 番組は、素囃子「養老」、狂言「棒縛」、能「巻絹」。 素囃子「養老」。大坪喜美雄。 「養老」は、霊泉出現の噂を聞いた都の役人が、美濃の国の養老の瀧を訪れ、そこで霊水を飲んで若返ったという老人に会い、その後、山神が現れ、御代を寿ぎ爽快な舞いを見せる能。 今回は、その山神の神舞。 神舞は、若い男神が颯爽と舞うもので、水が流れるように一気に舞い上げるものだそうです。 雨の雫の中で拝見したので、そんな気もしたかも。 狂言「棒縛」。留守の間に家来が酒を飲んでいること知った主人(岡聡史)は、一計を案じて次郎冠者(石田幸雄)に手伝わせて太郎冠者(野村萬斎)を両腕を広げたまま房に縛り付け、その様子を見て笑っていた次郎冠者も後ろ手に縛って出かけて行きます。 しかし、やはり酒が飲みたい2人。 不自由な格好ながらも工夫して酒蔵を開けて酒を飲み出し、上機嫌で歌い舞っているところへ主人が帰ってきます。 私の好きな狂言のひとつ。 棒で縛られながらも舞う萬斎さんが、とっても素敵です。 …が、今回は「藪原検校」の地方公演を控えているので、坊主頭でした。 ちょっと寒そう! 能「巻絹(まきぎぬ)」。勅命により諸国から千疋(二千反相当)の巻絹を熊野権現に収めることになり、廷臣(ワキ・森常好)が派遣されます。 都から巻絹を運んだ男(ツレ・田崎甫)は、熊野に着くとまず音無天神に詣で、冬梅の香に惹かれて一首の和歌を天神に手向けます。 そのため、巻絹を納める期日に遅れ、縛られてしまった男の前に音無天神(シテ・田崎隆三)が巫女に憑依して現れ、自分に和歌を手向けて遅れたのだからと縄を解くように言い、その証に男が詠んだ和歌を披露し、自ら縄を解きます。 巫女はさらに和歌の徳を述べ、祝詞をあげ神楽を舞ううちに熊野の神々が憑りつくのですが、やがて神は去り、巫女も正気に戻ります。 巫女姿で舞うシテが美しい能でした。 少し雨足が強くなってきたので寒かったけれど。
2015年04月06日
日曜日に、国立能楽堂に、「狂言ござる乃座 51st」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「昆布売」・「宗論」、素囃子「黄鐘早舞」、狂言「祐善」。 狂言「昆布売(こぶうり)」。北野の御手水(おちょうず)への参詣を思い立った大名(野村万作)は、家来が出払っていたため、自分で太刀を持って出かけます。 道中、都に上る若狭国(福井県)小浜の昆布売(野村裕基)と出会い、太刀を持つように頼みます。 刀で脅され、仕方なく太刀を持つことにした昆布売ですが、大名は昆布をすべて買い取り、太刀の持ち方を指南します。 最初はおとなしく従っていた昆布売でしたが、からかわれて激怒し、太刀を抜き、大名に太刀を向け、一腰(腰にさす小刀)も取り上げ、昆布を売るように命じます。 ここからが、見せ場です。 最初は、渋々従う大名なのですが、売り文句を、謡節、樹瑠璃節、踊節で謡わされていくと、実は、昆布売よりうまいのです。 今回は、祖父と孫の共演。 裕基君、とうとう、萬斎さんより大きくなりましたね。 4月から、高校生ですものね。 いまだに、初舞台の時の様子が目に浮かびますが。 狂言「宗論(しゅうろん)」。本圀寺の法華僧(石田幸雄)が、本山の甲斐国(山梨県)身延山(久遠寺)から都に帰る途中、信濃国(長野県)善光寺から戻る黒谷(金戒光明寺)の浄土僧(野村萬斎)と同道することになるのですが、互いの宗派を知って口論となります。 執拗な浄土僧に溜まりかねた法華僧が宿屋(岡聡史)に逃げ込むと、浄土僧が追ってきてまた同室となってしまいます。 そこで宗論をすることになり、双方、自身の宗派の教義を自慢して解釈を説くと、また言い争いに~でも、どっちも、教義は食べ物の話なんですよねえ~。 やがて夜になり仮眠する2人でしたが、晨朝(じんじょう)の勤行(早朝に行う読経)の時刻になり、浄土僧は念仏を、法華僧は題目を、唱えだします。 お互い張り合いながら、まるで喧嘩するように唱えていたのですが、気付けば、浄土僧が題目を、法華僧が念仏を唱えていたのでした。 見るたびに、「宗論」って、こんなに面白かったのかな~と思います。 ですが、いつも以上に、テンポがよかったのでは、と思います。 素囃子「黄鐘早舞(おうしきはやまい)」。大鼓・大倉慶之助、小鼓・鳥山直也、笛・栗林祐輔。 能の舞事を、囃子の演奏だけで上演するのが素囃子です。 「黄鐘早舞」は、妄執に取り憑かれた男の霊がテンポの速い舞を舞う時のものだそうです。 狂言「祐善(ゆうぜん)」。 若狭国六道谷の会下(寺)に隠棲する元・傘張職人の僧(高野和憲)が都に上り五条の油小路に着くと、村雨に逢い雨宿りのために庵に立ち寄ります。 すると、祐善という傘張職人の霊(野村萬斎)が現れ、後世を願って藪の中に姿を消します。 所の者(月崎晴夫)から祐善の最期と、同職の者の前にその霊が現れる噂などを聞き、僧が弔いを捧げていると、傘を手にした祐善の霊が再び現れ、自身の傘が日本一の下手と評され無用に扱われ狂い死にしたこと、地獄に落ちたものの僧の回向で成仏したことなどを語り舞うのでした。 かっちり、能仕様の狂言。 霊の役なので、面をつけたままなのが残念でしたが、萬斎さんの渋い舞いがたっぷり見られました。 今回は、萬斎さんの祖父にあたる六世野村万蔵さんの三十七回忌追善の会でもあったそうです。
2015年04月03日
木曜日に、世田谷パブリリックシアターに、「藪原検校」を観に参りました。 前回は、前半しか見られませんでしたので、今回は、ゆっくり観ました。 十一場「音に聞こえし日本橋」。 江戸の日本橋の風景。物売りの声や、掛け声が、役者さんの声のみで演じられます。 日本橋の越後屋には、呼び込み番頭さんが350人もいたとか…すごいですね。 江戸時代の日本橋は、賑やかだったんでしょうね。 今は、高速の下だけど。 十二場「包丁透し正宗」。 杉の市(野村萬斎)は、塩釜座頭・琴の市(春海四方)と、水戸東照宮の宮侍(大鷹明良)から奪った金で、江戸の大旅籠・長崎屋に逗留。 その裏手にある刀研ぎ屋(春海四方)に、水戸東照宮の宮侍から奪った小刀を研ぎに持っていき、その刀が、名刀正宗であることを知ります。 そこで、研ぎ師を殺害し、その正宗を自分の守り刀に。 十三場「塙保己市と里芋」。 杉の市は、江戸での評判を聞き、学者であり、優れた人物といわれる塙保己市(辻萬長)に会いにいきます。 保己市は、食事中。 里芋を食べています。 本当は、焼き魚が好きなんだそうですが、魚は、めくらが食べると汚してきたなくなる。 だから、箸で刺すだけの里芋を食べるのだそうです。 盲目の人間は、誇り高く生きなければならないというのが彼の理論。 自分とは正反対の人物であると悟った杉の市は、保己市の里芋、こっそり全部食べて帰っちゃいます。 十四場 「強催促(こわさいそく)」。 初代藪原検校(春海四方)のもとに弟子入りした杉の市。 借金の取り立てに特異な才能のある杉の市。 早速頭角を現します。 ここでは、寡婦と娘をゆするシーン。 ちょっとねえ…のシーンです。 十五場「座頭のうわさ」。 橋の下で、酒を酌み交わしながら、3人の座頭が、塙保己一市と杉の市の噂をしています。 橋の上を杉の市が通ります。 そこで、ナント死んだはずのお市(塩釜座頭琴の市の妻・中越典子)と出会います。 お市は、命を取り留めたのですが、杉の市を追って江戸に来たものの、身を売って生活し、揚げ句に、病(多分、梅毒?)を患っています。 そんなお市を、杉の市は大川に突き落としてしまいます。 十六場「検校殺し」。 杉の市は、とうとう初代藪原検校を手にかけます。 殺人者をやとい、自分も切られ、被害者を装います。 十七場「短い花ざかり」。 検視の結果、杉の市の証言が認められ、杉の市は、いよいよ検校の座に。 十八場「守り刀」。 晴れて検校。検校の晴れ着、紫衣を着て出かけた杉の市。 しかし、そこでまた、お市と出会ってしまうのです。 お市は、大川に落とされた後、橋の下にいた3人の座頭に助けられたのでした。 明日は、正式に検校に任命されるはずの杉の市。ここでお市を生かしておけません。 守り刀の名刀正宗で、お市を殺すのです。 ところが、刀が錆びているせいか、なかなかお市の体から抜けません。 そこへ、人々がどんどん集まってくるのでした。 十九場「綱」。 将軍補佐役・松平定信(大鷹明良)と塙保己一市。2人は古くからの友。 緊縮財政、倹約を推し進めたい松平定信は、その方法論を保己市に相談しています。 庶民が自ら倹約にいそしむようにするには、贅沢悪徳の権化を生贄にすべきと提案します。 最高位の検校位であったため、殺人を犯しながらも、寺に預けの身になっていた2代目藪原検校こと杉の市の処刑が決まります。 二十場「三段斬り」。 杉の市の処刑は三段斬り。高い所から吊るした杉の市の胴体を切り離します。 すると、重さで体が反転し、頭が下に。 そこですかさず、頭を。 ここは、もちろん、人形でしたが。 次の日がラクだったこともあり、芝居の密度が前回もよりも増していたように思います。 素晴らしい舞台でした。
2015年03月24日
「 eclat(エクラ) 4月号 」。 ファッション&ライフスタイル情報誌。 「45歳からのおしゃれは微糖スタイル」? …、まあ、ざっくり、45歳以上ですが。^^ 実は、このページのためだけに買いました。 トートバッグがおまけについているからいいか。 試し読みができます。http://hpplus.jp/eclat/magazine/neweclat (エクラ) 2015年 04月号価格:980円(税込、送料別)
2015年03月19日
サントリーのザ・プレミアム・モルツ『マスターズドリーム』のCM. 音楽は久石譲さん、書は武田双雲さん、そして、声は野村萬斎さん。 素敵なお声です。 ビールの販売は3月17日からだそうです。
2015年03月09日
土曜日(2月28日)に、世田谷パブリックシアターに、「藪原検校」を観に参りました。 2012年に世田谷パブリリックシアターで、野村萬斎さんが演じられ、その再演です。 「一場 検校池」 今回ナビゲーターの語り手盲太夫を演じたのは、山西惇。 ドラマ「相棒」で、生活安全部薬害対策課長・角田 六郎を演じている役者さん。 「検校池」は、村に訪れた座頭を放り込んだ池のこと。 盲目の人々の悲惨な人生を語る重い場面ですが、軽快な語り口調が和みます。 「二場 番ヶ森峠殺し」 魚売りの七兵衛(辻萬長)と、妻お志保(明星真由美)の間に生まれた杉の市(野村萬斎)。 七兵衛は、産着の費用を手に入れようと、仙台座頭・熊の市(酒向芳)を殺して所持金を奪うのです。 「三場 白眼」 生まれてきた可愛い我が子。ところが因果応報でしょうか、杉の市は生まれた時から目が見えなかったのでした。 父、七兵衛は、座頭を殺した罪が我が子にふりかかったことに落胆し、首を切って自害してしまいます。、 この場面で歌う子守唄がいいですね。夫婦ともども、いいお声です。 「四場 ブタ草は双葉より近所迷惑」 お志保は、杉の市の行く末を想い、塩釜座頭・琴の市に杉の市を預けます。 しかし、杉の市は、これも因果応報なのか、素直な人間には育ちませんでした。 そして、琴の市の妻お市(中越典子)とイイ仲に。 琴の市が盲目なのをいいことに、琴の市の前で関係を持つ2人。 ムムム…のシーンなのですが、中越さんはお色気が爽やか系なので、前回の秋山菜津子さんより、正直、安心して見ていられました。 「五場 早物語」 座頭が語る奥浄瑠璃のパロディーとして語られる早物語。 この舞台の見せ場のひとつ。 杉の市が、長い物語をアップテンポで語ります。 前回の舞台の語りも素晴らしかったですが、今回はさらにバージョンアップ。 語りだけでなく、今回は振付も。あの、腰の動きはラテンダンサーかしら。 「六場 佐久間検校」 早物語でもらった多額のおひねり。 そこへ突如現れた佐久間検校。 検校の地位を振りかざし、おひねりを横領。 暴力を振るわれ怒った杉の市は、佐久間検校の結解(けっけ・検校の付き人、大鷹明良)を殺してしまいます。 「七場 母親殺し」 つい、成り行きで人を殺してしまった杉の市。 さすがに動揺した杉の市は、母親のもとに。 その時、母親のもとには、情夫(辻萬長)が。 母のお志保は、杉の市を検校にするために、身を売ってお金を貯めていたのでした。 ところが、情夫は、お志保と杉の市の仲を疑い、お志保を罵るのです。 杉の市は、母を罵られたことを怒り、男を殺そうとするのですが、誤って母を刺殺してしまうのです。 母親を殺してしまった杉の市の嘆き。ここも見どころ。 「八場 藪蚊」 杉の市は、お市をそそのかし、琴の市を殺し、50両を盗み、2人で江戸へ。 …のはずでしたが、お市は、琴の市をもみ合ううちに刺されて死んでしまいます。 「九場 阿武隈川舟歌」 江戸へ向かう船の中。 一人、膝を抱えてうずくまる寂しそうな杉の市。 「十場 矢切の錆刀」 江戸の手前、矢切まで来た杉の市。 そこで、具合が悪く道端で苦しむ水戸東照宮の宮侍(大鷹明良)を見つけます。 介護する振りをして、一突き。 死体の懐から、お金を盗み、いよいよ江戸へ。 今回は、ここまで。 前回の舞台よりも、パワーアップしたせいか、上演時間も伸びたようで、後半を観ると、仕事の時間に間に合わなくなるので、泣く泣く劇場をあとに。 前半だけでしたが、萬斎さんのパワフルな舞台を見ることができました。
2015年03月05日
「週刊朝日」2月20日号。 表紙のためだけに買いました。 週刊朝日 2015年2/20号 【表紙】 野村萬斎[本/雑誌] (雑誌) / 朝日新聞出版価格:380円(税込、送料別)
2015年02月15日
木曜日に、国立能楽堂に、「国立能楽堂狂言の会」を観に参りました。 この日の番組は、狂言「鴈礫」・「千鳥」・「賽の目」。 狂言・大蔵流「鴈礫(がんつぶて)」。大名(大蔵彌太郎)が野遊びに出かけて鴈を見つけます。 弓で鴈を射ようと思ったのですが、ちょうどそこへ使いに行く途中の男(茂山良暢)が通りかかり、願をめがけて礫(小石)を投げ、なんと一打で打ち倒してしまうのです。 そして当然ながら、鴈を持ち帰ろうとします。 しかし、それを見て怒ったのは、同じ鴈を弓で狙っていた大名。 自分が射抜いたのだから、鴈を置いて行けと主張します。 ホントは、全然射ることができなかんですよね、下手で。 大名は男に弓を向けて脅すのですが、その時仲裁人(善竹忠一郎)が現れ、両者の言い分を聞きます。 仲裁人は、大名の腕前はたいしたことないな~と考え、大名に死んだ鴈を狙い、命中したら鴈を持ち帰って良いことにします。 死んでしまって動かない鴈…それでも大名は射抜けません。 どこまで下手なんだか。 笑えました。 ちなみに、鴈は、烏帽子を鴈に見たてています。 狂言・大蔵流「千鳥」。主人(若松隆)が太郎冠者(山本則俊)に酒屋(山本東次郎)に酒を買いに行かせようとするのですが、太郎冠者は、酒代のツケがたまっているので、売ってもらえないと話します。 主人は、太郎冠者と酒屋の主人は気心の知れた仲なのだから、適当に言って酒を一樽取って来いと言います。 首尾よく酒を取って来たら、最初に飲ませてやろうという主人の言葉に、太郎冠者は酒屋へ向かいます。 酒屋の主人は、やはり金と引き換えでなければだめだというのですが、酒屋が話好きなのを良いことに、太郎冠者は、主人の供で行った津島祭の話などを始めます。 そして、流鏑馬の話にすすめ、酒屋に流鏑馬の真似をさせて、その隙に酒を持ち帰ります。 大蔵流の「千鳥(ちどり)」は初めて観ました。 和泉流と少しシチュエーションが違いますね。 酒屋の主人にも、流鏑馬をさせて、酒を持ちだすところは、"うまい"と思いました。 そして、久しぶりに拝見した山本東次郎さんの身のこなしの軽いこと!!そろそろ80歳に近いお年だと思いましたが。 狂言和泉流「賽の目(さいのめ)」。ある金持ちの男(石田幸雄)には娘が一人いました。 算術に優れた男を婿にしようと、高札(広場などに高く掲げた告知板)を出し、婿を募ります。 候補となる一人目の男(深田博冶)が現れます。 娘の父が早速出題。「五百具(一具はサイコロの二個だそうです)の賽の目はいくつか」。 婿候補は答えられません。 二人目の男(高野和憲)もやってきますが、算盤がないと解けないと答えます。 そして、三番目の男(野村萬斎)。自分こそは日本一の算術名人だと豪語しています。 そのとおり、先程の問いを見事にすらすらと答えます。 立石に水のような計算ぶりで、あまりになめらかすぎてよくわからなかったケド、とりあえず、さすが萬斎さん。 すぐに男に気にいられ、全財産を譲られることになり、喜びいさんで娘と対面。 さて、美人だと噂されていた娘(竹山悠樹)なのですが、会って見ると…おかめ~でした。 おかめさんは、可愛いですけど、狂言では、とんでもないしこめ(醜女)。 驚いた萬斎さん~ではなく、算術名人は、慌てて逃げ出そうとするのですが、娘に捕まってしまい、娘の背に負ぶわれて連れていかれてしまいます。
2015年02月02日
金曜日に、新宿文化センターに、「新春名作狂言の会」を観に参りました。 この日の番組は、大蔵流狂言「水掛婿」、和泉流狂言「しびり」・「小傘」。 まずは、例年どおり、茂山正邦さんと野村萬斎さんのトークと小舞共演。 今年は、「柳の下」。 同じ曲でも、大蔵流と和泉流では、というより、家によってでしょうか、微妙に違うところが面白い。 狂言」「水掛婿(みずかけむこ)」。隣同士の田を耕す舅(茂山千五郎)と婿(茂山正邦)。 婿が田を見に来ると、水がないのです。 舅の田から水を引いて帰ると、そこへ今度は舅が来て、水を引き返します。 そこへ、また婿が引き返してきて、舅と口論になって…。 水や泥を掛け合った揚げ句に、取っ組み合いに。 仲裁に妻(茂山茂)がかけつけるのですが、父と夫の板挟みになって右往左往…。 狂言「しびり」。来客用の魚を買いに、和泉の堺まで行けと命じられた太郎冠者(野村万作)。 親譲りの足のしびれが出て歩けないと仮病を。 太郎冠者の仮病がわかっている主人(石田幸雄)は、伯父の宴に招かれていると嘘の話をすると、早速太郎冠者は、しびれが治ったのでお伴すると言い出します。 確かに、京都から堺まで行くとなると、交通網のない時代だから、仮病を使いたくなるかもしれませんね。 狂言「小傘(こがらかさ)」。在所に作った草堂の堂守になってくれる僧を探しに海道に出た田舎者(深田博冶)。 食い詰めたバクチ打ち(野村萬斎)が坊主に姿を変え、手下(高野和憲を)新発意(しんぽち・寺の小僧)に仕立てて旅をしているのに出会い、それとは知らずに草堂に連れ帰ります。 偽坊主は、博奕で聞き覚えた傘の小歌をお経代わりに唱え、参詣人たち(内藤連、中村修一、飯田豪、岡聡史、月崎晴夫)が、ありがたい法悦に浸っている隙に、新発意に施物を盗ませて、まんまと逃げだします。 やがて騙されたと気付いた人々が追いかけます。
2015年01月26日