追っかけ日記 NO.163-長島茂の会ー
昨日は、喜多六平太記念能楽堂に、「第10回記念 長島茂の会」を観にまいりました。 自由席を購入のため、3時開演の会でしたが、正午少し前に能楽堂に到着。もちろん、まだ誰もいない。雨の中、待っていると、12時過ぎ頃、楽屋入りする男性が、「雨の中、こんなに早くから申し訳ございません。開場は2時15分なんですが。」「承知しております。お気遣いなく。」ピンク色のYシャツをさわやかに着こなしたその方は、本日の主催者の長島茂さんだったよう。 午後1時近く、雨が降ってますからということで、エトランスホールを長島さんみずから開けてくださいました。上演前のお忙しい時にお気を使わせて申し訳なかったなあ。でもその後、雨が強くなりましたので、助かりました。 2時15分に開場。無事に目的の席を確保して、トイレに行くためにロビーを通ると、綺麗なピンク色のお召し物を着た女性の方に。「長い時間お待たせして申し訳ございませんでした。」と、丁寧にご挨拶されました。えっ!どなた?…ああ、私が雨の中待っているとき、確か、楽屋に入っていかれた女性。多分、長島さんの奥様かしら。それにしても、雨の中で傘をさしていた一瞬でよく私の顔を覚えてくださったなあ。「いえ、こちらこそ、お気遣いいただきまして申し訳ございませんでした。」 昨日の演目は、舞囃子「枕慈童」、狂言「止動方角」、仕舞「三山」・「碇潜」、能「望月」。 舞囃子「枕慈童(まくらじどう)」、友枝昭世。 不思議な霊力をもって、少年のまま700年も生きた少年。友枝さんの雰囲気にはピッタリの舞いだと思います。能の「枕慈童」も一度見てみたいです。 狂言「止動方角(しどうほうがく)」。茶比べの遊戯に行く主人(石田幸雄)は、太郎冠者(野村萬斎)に命じ、伯父(野村万之介)から茶と太刀と馬を借りさせます。伯父は貸した馬は人が後ろで咳払いをすると、暴れる癖があるので、それを静めるための「止動方角」という呪文を教えてくれます。太郎冠者の帰りを待ちかねた主人は途中まで出迎え、労をねぎらうどころか、遅いといってさんざん小言を言い、即座に馬に乗ります。腹を立てた太郎冠者は馬の後ろで咳払いをし、主人を落馬させ、呪文で静めます。馬にこりた主人は太郎冠者を馬に乗せ、自分は茶壷と太刀を持って歩き始めます。太郎冠者はそれをいいことに主人の口真似をして報復します。怒った主人は太郎冠者を馬から突き落とし…。 動きややり取りが面白く、私の大好きな狂言。そして、この3人の役柄がベストメンバーだと思います。萬斎さん、やはり前髪が長くて、振り乱しての熱演でしたけれど。 仕舞。宝生流「三山(みつやま)」、金井雄資。 この「三山」は、一度能で拝見したことがありますが、大和三山にまつわる三角関係の恋愛話。しっとりとした舞いでした。金井さんは、立ち姿が本当にきれいな方でした。 観世流「碇潜(いかりかづき)」、関根祥人。 いきなりの力強い謡でびっくり。槍を持った舞いも力強く豪壮な舞いでした。平知盛の亡霊が、先帝最後の有様や知盛が碇と共に海に沈んだ平家滅亡の様子を見せるものらしく、これも一度能を観てみたいです。 能「望月」。信濃の国安田庄司友治は従兄弟の望月秋長(ワキ・森常好)と口論の末討たれたため、一家は離散し、家臣の一人であった小沢刑部友房(シテ・長島茂)は、近江の国(滋賀県)の守山で、甲屋(かぶとや)という宿屋の亭主になっています。友治の妻(シテツレ・友枝雄人)と遺子の花若(子方・友枝雄太郎)は、旅にでますが、はからずもこの旧臣の宿屋に泊まります。そこに、都に上がっていた望月と下人(アイ・野村万作)も泊まりあわせます。敵討ちの時節到来と、友房の計画で、酒宴の席をもうけ、見事討ち果たします。 私の好きなお能のひとつ。理由はとてもわかりやすく、劇的な展開だからですが。大曲に挑んだ長島氏の思いが伝わってくるようでした。また、久しぶりに、万作さんのアイを拝見いたしました。やはり締まります。 今日の会は、それぞれに見ごたえがあってとても良い会でした。M子さんとArabesqu さんのアイコンタクトに関する論証? 萬斎さんのアイコンタクトは、その日の萬斎さんの役柄、私たちのお席、そして、ちょっぴり萬斎さんのその日の気分によって違う。「全然、見てくださらない時もあれば、“今日はどうしちゃったの?萬斎さん!”と思うくらいに見てくるときがあるわねえ。」とのM子さんのコメント。確かに…。 木曜金曜は、正面席の最前列。実はちょっと近すぎる。役柄の上でも見づらいのはわかっていたのですが、あまり、目が合わないと、“もう見に来ないから…”と、ちょっといじけてみたしりして。 昨日は、脇正面の最前列。「止動方角」の太郎冠者は、前半は、ほとんど脇正の前での演技。近いなあ、うれし~。んっ、でも近すぎない? 萬斎さん、茶筒の葛桶、私のまん前に置いてない?…それはないな。役で立ち位置は決まってますから。 萬斎さんが、馬を取りに行った伯父を迎えに橋掛かりに来た時に、ギロッと目が合いました。と、その後、脇正のほうを向くたびにお目が合う。今日は、かなり露骨なアイコンタクトだなあ~と思わず、苦笑。8回くらいまで数えたのですが…。 本当に“今日は、どうしちゃったの?萬斎さん!”状況 こういう過剰アイコンタクトの時があるから、思わず、能楽堂に通い続けちゃうんですよね。 この後、1ヶ月近くお会いできないから、うれしかった~です。 ありがとう、萬斎さん!