追っかけ日記 NO.339ー能楽現在形 劇場版@世田谷ー
土曜日に、世田谷パブリックシアターに、「能楽現在形 劇場版@世田谷」を観にまいりました。 昨日の番組は、能「安達原」、半能「絵馬」。 能「安達原」。山伏一行(ワキ・森常好、ワキツレ・舘田善博)が修行の道すがら、陸奥の安達原(現在の福島県)にやってきます。そこは、人里離れた原野でした。 そこに一軒の小屋が。 山伏達は一晩泊めてもらおうと、小屋を尋ねます。小屋には、女(シテ・観世喜正)が一人。女は糸車で糸を引いて生計をたてているようでした。 夜も更けてくると、女は山に薪をとりに行きます。その時、決して女の寝室を見るなと言って家を出て行きます。 しかし、山伏の従者の能力(野村萬斎)は、見るなと言われて、見る誘惑に勝てませんでした。山伏に何度も怒られながら、ついに覗いてしまいます。そこは、軒まで死体が積み上げられ、死臭が充満している部屋でした。ここは噂に聞いた鬼の棲む家でした。慌てて逃げ出す一行でしたが、そこに、鬼の姿となった女が追ってきます。 劇場に入ると、真っ黒の舞台には、パンフにあったと同じ顔のない面が。なんだろう。パンフを見たときから気になっていたのだけれど。 いつもより、舞台も低いような気がする。いつもは、最前列だと見上げるような感じなのですけれど。 そして、絶えず、風をきるような、金属をこするような、不思議な音が絶えず聞こえている。何かしらこの音。 囃子方と地謡が、この劇場特有の端の席につくと、舞台に黒いスクリーントーンが下りてきて、そこには「安達原」の文字が浮かび上がりました。 次の瞬間、真っ暗に。客席は闇に取り残されました。 と、舞台の照明に浮かびあがったのは、先ほどの顔のない面。そして、その奥に、女がすわっている(既に恐い雰囲気)。これは、女の家だったのですね。 萬斎さんは、女の寝室を覗く能力。恐い話の中で、アイの演技は、ひときわコミカル。山伏に怒られても、覗きたくて仕方がない。そして、覗いてびっくり。そうですよね、死体だらけなんですから。 顔のない面。それは、女の寝室への入口であり、鬼にならなければならなかった女の心の中の闇を表していたのでしょうか。 半能「絵馬」。天照大神(シテ・梅若晋矢)が天の岩戸に閉じこもって、世界が闇の中に入ってしまいます。アマノウズメノミコト(ツレ・坂口貴信)が岩戸の前で舞いを舞うと、天照大神が岩戸をちょっと開いて見ようとします。それを機会にしてタヂカラオノミコト(谷本健吾)が力まかせと岩戸を開いて、世界はふたたび太陽の光にあふれます。、 闇の世界と、太陽の光に溢れた世界。照明効果が、とても、よかった。最後は、まぶしいくらい光に満ち溢れた世界でした。 こういう効果は能楽堂ではできないですね。 「能楽現在形 劇場版」は、萬斎さんが、どう演出するのか、とても楽しみなんですが、今回も、とても、面白く観させていただきました。