大奥
日曜日に、映画「大奥」を観に行きました。 「十三人の刺客」の稲垣吾郎さんの暴君も見たかったのですが、"女将軍にかしずく3,000人の美しき男たち"に、つい、つられてしまいました。 江戸時代。なぜか、一度かかると、10人中8人は死に至ると言う男にしかかからない伝染病が日本国中に蔓延。男性の人口は、女性の4分の一に減ってしまいました。 見回すと、江戸の町に男性の姿はない。荷を運ぶ船頭も、物売りも、大工も、飛脚も、駕籠かきまで、すべて女性。 世の中は、すべて女性が動かし、男の子は大切に育てられる。男性にとっては、まさに天国のような。 ところが、そうでもないんですね。子孫を残すためには、当然男性が必要。,ところが、絶対数が不足しているから、男性は、多くの女性とかかわらなくてはなりません。ですから、貧乏な武家で無事に成長した男の子は、金のために、女性の相手をさせられるんですね。そして、吉原で身を売るのも、男性たち。 そんな時代に、貧しい武家に生まれながらも、母(賠賞美津子)の気配りのおかげで、一度も金のために身を売ることも無く、成長した水野祐之進(二宮和也)。困窮した家を助けるため、母の恩に報いるために、大奥に奉公に出ることを決意します。でもそれには、もうひとつ理由がありました。大店の娘お信(堀北真希)への身分違いの恋をあきらめるためでもありました。 大奥へ上がった祐之進は、世間では、男はいなくて困っているのに、大奥には、若く美しく、そして才能に溢れた男たちがひしめているのに驚かされます。金で体は売らなかった祐之進でしたが、子どもが欲しくてももままならない庶民の女性たちの相手を、毎晩、無料でしていた彼には、歯がゆい思いだったのでしょう。 祐之進は、男の名を捨てられ、「水野」と呼ばれます。同僚や先輩に手篭めにされそうになったり、いじめられたりした中、持ち前の才覚で、大奥総取り締まりの藤波(佐々木蔵之介)に気に入られ、昇進していきます。 そんな中、僅か9歳で将軍の座にいた7代家継は急死し、紀州から、8代将軍として吉宗(柴崎コウ)が召されます。 吉宗の登場シーン。まばゆい緑の野を白馬で賭け巡る。これって、まさにTVの「暴れん坊将軍」の登場シーンですよねえ。 この女吉宗、まさに暴れん坊将軍で、健さん同様、市中を徘徊するんです。旅装の町人姿で、護衛の忍びの者をたった1人を供にして。この忍びの者は、超イケメンの男性。本当に、市中の者の暮しを目の当たりに見たいということで、街中から、花街、伝染病に苦しむ男たちの姿まで、見て回ります。 政治に忙しい吉宗でしたが、とうとう大奥に初お目見えの「総触れ」することになりました。その直前、水野は、突然、御中臈に抜擢されます。 将軍の総触れの日。華やかに着飾った男たちがお鈴廊下にかしずきます。そんな中、水野の裃は、黒一色。背中に、一筋の流水が、黒い糸で刺繍されています。これは、とてもステキでした。 お目見えし、男たちに迎え入れながら、お鈴廊下を歩く吉宗。廊下が磨かれすぎていたのか、思わず、滑って転びます。 それを見て思わず笑いをもらした御中臈。吉宗に咎められ、笑いが震えに変ります。誰かと咎める吉宗に、自分の隣で震えている御中臈を見た水野は、自分が笑ったと罪を被り名乗り出ます。 歩み寄る吉宗に、面をあげいといわれ、吉宗と目が合った瞬間、吉宗から「名を申してみよ」と。 これで決まりですね。この言葉で、初お目見えの夜伽は、水野になりました。 上様のお手付き御中臈となり、最高の出世と喜ぶところなんですが、大奥にはとんでもない掟がありました。 大奥において、初めての夜伽をしたものは、女性である将軍の破瓜を奪った大罪人ということで、打ち首に処せられることが3代将軍家光公の時代に定められたそうです。 めちゃくちゃなお定めだと思うのですが、定めですから仕方がありません。 この江戸城のお定めを知らなかった吉宗は水野を選んだこと後悔するのですが、どうしようもありません。 が、これは、実はどんでもない策略。自分の息のかかった大切な御中臈たちを打ち首にせず、松島(玉木宏)を将軍のお父上にさせたかった藤波がたくらみ、急遽、水野が御中臈に抜擢されたのもそのためでした。 このことを知りながらも、この定めを聞いた水野は、自分が打ち首になっても、生家にが咎めがいかず、病死として報告され、相応の見舞金が出ることを聞き、このお役目を受け入れる決心をします。 そして、夜伽の役目を終えた朝、水野は、打ち首の処刑場に連れていかれます。 大奥改革を勧める吉宗は、"目見え"と称して、見栄えの良い男たち50人を選出させます。喜んで集まった男たちの中には、当然松島も含まれていました。 そして、その場で、吉宗はその50人の男たちに解雇を申し渡します。若く見目良く、才能ある男たちであれば、大奥を出ても、曳き手あまたで充分に生きていけるだろう、見目悪く大奥でしか生きられない男たちは、今後も、面倒みようと。 これは、「暴れん坊将軍」の中でも出てくるエピソード。実際の吉宗公が敢行されたことなのかもしれません。 男の大奥などという荒唐無稽な物語のように思えましたが、映画を見てみると、時代背景、設定もよく作りこまれ、面白い映画でした