それは“ドロボウ”といいます
それは“ドロボウ”といいます。
なんて
冷静に言えなかった…
『アンタなぁ!
それはドロボウや!
やったらアカンことやねん!!
何やってんねん!?
わかるか!!?』
…って
わかるわけない。
烈火のごとく怒り出した私にビックリして
耳を塞いでしゃがんだ小5自閉くん。
矢継ぎ早に質問をしてから、
『ほら!謝りに行くねん!!
サッサと来ぃや!!』
って、普段有り得ないくらい腕を引く。
なんか…
事が小さいとか大きいとか
興味だったとか
出来心だったとか
知らなかったとか
そんなのは別にして
とにかくショック。
怒り狂ってる自分もイヤで。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
一昨日
学校から帰るなり小5自閉症dokidokiくん
『Uちゃんのお母さんにイチゴをあげた(もらった)。
dokidoki、イチゴ、食べたで』
えーっ!?信じられない!!
dokidokiくんはイチゴは食感が嫌で食べられません。
自分が食べるテーブルで家族がイチゴを食べているだけでも
『やめて!』
と嫌がる程。
だから口にしたのは、たぶん生まれて初めて。
Uちゃんの家の玄関先にはイチゴ栽培ポットがあって
そろそろ色付いているのは私も知っていたので
きっとUちゃんのお母さんが、下校中のdokidokiくんにくれたんでしょう。
私 『すごいなあ。じゃあこれから食べられるやん』
dokidokiくん 『要らない。もう食べない』
あはは。
好奇心だったが、やはり無理か。
…それが一昨日の会話。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
昨日。帰るなり
『dokidokiまたイチゴを食べた。赤くなってたから』
…あやしい。
そんなに毎日タイミングよくUちゃんのお母さんが玄関先にいるわけがない。
もしや…
私 『Uちゃんのお母さんはいましたか?』
dokidokiくん 『…』
私 『どうぞって言われましたか?』
dokidokiくん 『ううん…言われてない』
私 『Uちゃんのお母さんはいましたか?』
dokidokiくん 『いない。でも赤くなってたから』
私 『どうぞって言われてないのにdokidokiは勝手にとったんやな?』
dokidokiくん 『一つだけだったから』
…そして
私の爆発に繋がったわけです。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
引きずって謝りに行きました。
しゃがんで耳を塞いでいるdokidokiくん。
Uちゃんちには新生児がいるので、お昼寝中か
インターホンを押しても出てきてくれませんでした。
私 『dokidoki、手紙を書いてください。
ごめんなさいって書いて郵便受けに入れるから』
…サーッと走って帰って手紙を書くdokidokiくん。
“いちごをたべてごめんなさいもういちごはたべません”
私のメモ書きも一緒に封筒に入れて郵便受けに入れました。
ふう…。
・イチゴは大嫌い。
・でも一昨日は興味から、もらって食べた。
・昨日は勝手にとって食べた。
…単に興味からっていうのはわかってる。
私だって子供の頃はこれぐらい なんぼでも やったことがある。
だけど…
dokidokiくんは自閉症だから
そんな臨機応変に物を考えて行動はできない。
“ホントはダメなんだけど特別に”
は使ってはいけない。
“じゃあ今日は特別に許したげる”
イコール
“これからも、やってもいいこと”
になる。
…なんかこういうことを一気に考えて
烈火のごとく怒った私。
怒るときは怒らないと伝わらない。
“仕方ないなあ、もう”
なんて言いながら怒ったって伝わらない。
…ホントはUちゃんのお母さんが
『これからは勝手にとって食べないでね』
って言ってくれるのが一番良いんだけど
せっかくの好意がこんなことになってしまったので
それが申し訳なくて…。
あぁ
一人で下校を始めたのがいけない?
私が知らないだけで他にも何かあるかも。
なんか…
“こんなことで…”と思う自分と
“これでよかったんだろうか…”と思う自分と
どんなに大変でも、こんなことは今まで思ったことはなかった、
“これからもちゃんと育てていけるだろうか…”
と初めて思った。
私は
“ホントはいけないと知っていたけど”
この子ぐらいの歳で
花を折ったり
イタズラしたり
実をもいだり
ヨソのペットに勝手に食べさせたり
生き物も沢山いじめて
でも
“ホントはいけない”と知っていたから“バレないように”
いっぱいいっぱいやってきて
当たり前だけど
いつの間にかそんなことはしなくなり
いつの間にか大人になった。
だけど
息子は違う。
同じことはできない。
『しません』『ダメです』『やめましょう』
…『じゃあこうしましょう』
…って、こんな奇妙な世界。
くそくらえ!ふざけんな!!
万引きしたわけでもないのに!!
なんか
それが
すごくかわいそうで
涙が止まりませんでした。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
泣いていたら
Uちゃんのお母さんが手紙を読んでたずねてきてくれました。
Uちゃんのお母さんは元 保育士さんなので自閉症は知っています。
どうしようかすっごい考えて
やっぱりお願いすることにしました。
私一人で一生、dokidokiくんを育てていくことはできない。
やっぱり助けてもらおう。
私 『ホントに申し訳ないんやけど
“これからは勝手にとるのはやめてね”
って本人に言ってもらえたら助かる。
ゴメンね…』
Uちゃんママ 『うん、わかりました…』
微妙な表情で帰っていったUちゃんのお母さん。
ママが怒ったからイチゴを勝手にとってはいけない。
のではなく
勝手にイチゴをとることがいけないのだ。
と、わかって欲しい。
…
だけど
今もモヤモヤしている一番嫌なことは、
怒り狂ってしまった
自分です。