試行錯誤の軌跡(その15) 勉強会への参加
「試行錯誤の軌跡」シリーズもずいぶんとご無沙汰になってしまいました。つい最近、研修会で開業当時のことを話す機会がありましたので、コレを機に止まっていた連載を復活させたいと思います。平成12年7月に行政書士を開業してすぐに、福岡県行政書士会が主催する「事務所経営」に関する研修会に参加した。そして講師の方と名刺交換をさせていただいたことが縁で、その講師が主催する勉強会に参加させていただくことになった。その勉強会はほぼ毎月開かれ、参加者は毎回30~40名前後。入会金と年会費を払えば会員になれ、登録している会員は全部で100名くらいいた。勉強会はとてもレベルが高く、講師の話の半分も理解できない。法人税や所得税、消費税などの税法の話から民事法務、会計業務を生かした顧客の獲得方法や、交通事故や債権回収などの話まで、さまざまな分野の話を聞くことが出来た。私は・・・というと、いつもだいたい後ろの方の席で、おとなしく聞いていた。というか、後ろに座って、まだ名刺交換をさせてもらってない方をチェックしては、休み時間に挨拶をさせていただいた。手元にはどんどん名刺が増えていった。「この人どんな人だったっけ・・・。」せっかく名刺交換させていただいても、帰宅してから名刺を見ても顔が思い浮かばない人ばかり。たくさんの方と名刺交換をさせていただくものだから、覚えられないのだ。これではなんのための名刺交換やら挨拶やら。平成12年もはや秋口に。行政書士として開業したけど収入はゼロ。勉強会は自宅兼用の事務所から電車でおよそ40分。片道500円ほどの交通費。でも毎回の勉強会の参加費がだいたい1,000円~2,000円。しかし収入のない身からしたら、1回の参加で、交通費も入れて2,000円~3,000円はとてもキツかった。しかも、勉強会のあとは懇親会がある。これは3,000円~4,000円程度。毎月出席していろんな話を聞きたかった。でも毎月出席するのは経済的に無理だった。だいたい2~3ヶ月に1回の参加。そして懇親会にいたっては、勉強会5~6回に1回のわりあい。コレが精一杯。財布にはお金の姿はなく、ヨレヨレのレシートばかり。人前で財布を出すのが恥ずかしかった。そんな肩身の狭い思いをずっとしてきた。「懇親会出ませんか~?」いつもお誘いを受けた。こんな存在感の薄い自分に声をかけてくれる方もいるんだ。嬉しかった。ありがたかった。でも・・・「すみません、今日はこれから用事があるのでこれで失礼しますっ」深々とお辞儀をして帰路につく。本当は用事なんか何もないのだ。急いで帰る必要もない。お金がないばっかりに親睦も深められない。自分の顔も名前も覚えてもらえない。くやしい思いをしながら帰路につく。そんなことを何回してきたことだろう・・・。あるとき、勉強会で女性の行政書士にご挨拶させていただいた。黒髪のきれいな女性。もちろん結婚もしているし子供も3人いるという。ご挨拶させていただいたら、自分の事務所のすぐ近くで開業している方だった。「近いですね」そこから話が弾んで、もうひとつの勉強会を紹介してくれた。この勉強会は、自分の事務所のすぐ近くで行われていた。毎月一回会合と相談会があった。「会の代表には伝えておくからすぐ連絡が来ると思いますよ」楽しみにして待っていた。でも10日経っても20日経っても会の代表者からは連絡が来なかった。1ヶ月待った。紹介してくれた行政書士に連絡を入れた。代表者の事務所を聞き訪ねてみた。とてもいい方だった。2時間くらい話をさせていただいた。すぐに入会が認められた。この1ヶ月はなんだったんだろう・・・?もったいないことをした。こちらの勉強会は相続業務に特化した会だった。毎月一回、地元の公共施設を借りて無料の相談会を開いていた。自分も相談会に参加した。当然ながら相談会には相談者が来る。先輩の後ろに座り、相談者の話に耳を傾ける。ナマの相談を聞くのは初めてだった。まだアドバイスなんてできる自信などなかったから聞くだけだ。しかし話を聞くのも難しい。相談者が何を言わんとしているのか、何を聞きたいのか、話のどの部分が核心で、何が問題なのか、そういったことを把握していく作業。そして的確なアドバイスが求められる。でも抵抗感はなかった。いや、むしろ相談業務が自分に合っているなと思えた。相談を聞くチカラはこの勉強会で学んだと思う。相談を受ける度胸もこの勉強会で学んだし、アドバイスのしかた、わかりやすい話し方などもここで会得させてもらったと思う。ひとつチカラを手に入れた。相談を受けるチカラ。自分にとってとても役に立った勉強会だった。この地元の勉強会は1年半ほどで退会をした。学ぶところはすべて学ばせていただいた。「役員として残ってほしい」とも言われたが、早く次のステップに進みたかったので、感謝しつつ辞退させていただいた。平成12年は結局収入がなかった。いや・・・正確には24,000円の収入があった。行政書士試験監督員の日当。年収が決まった。この24,000円が自分の開業初年度の年収(年商)になった。設備投資などを入れたら大きな赤字。あたりまえか。マイナス80万円ほどで確定申告。現実は厳しい。