LLPの活用が期待される起業スタイルとは?
新しい起業スタイルとして注目されるLLPですが、どういった起業スタイルに利用できるのでしょうか。最近では、産学連携のベンチャーなどもよく耳にするようになりました。これは、大学の研究グループと企業が連携して新しい技術を開発し、商品化していくことで、研究グループが知恵を出し、企業がお金を出して事業を進めていくスタイルですね。あるいは、複数の企業が連携してひとつの事業を立ち上げる。たとえば、広告代理店、映画会社、アニメプロダクション、出版社、テレビ会社などが資本を持ち寄って、映画製作委員会などを立ち上げる・・・これらはいずれもLLPにピッタリの起業スタイルですね。もしこれらをLLPではなく株式会社を立ち上げる方法で進めていくとどうなるか・・・。もちろんそういうやり方もあります。合弁会社などがいい例ですよね。でも株式会社を立ち上げた場合、取締役を選んだり、取締役会を開いたり、株主総会を開いたり、あれこれさまざま厳格な手続きを求められます。議決権や配当なども出資額(株数)に応じて決まってしまいます。もしこれを産学連携のベンチャーでやったらどうなるでしょう。つまり産学連携事業を株式会社方式でやった場合です。大学の研究グループが10%の出資をし、企業が90%の出資をしたとしたら、議決権も売り上げの分配比率も極端に言えば9:1になってしまい、意思決定は企業側に完全に握られ、売り上げもほとんど企業が持っていってしまいます。これでは企業ばかりが得をして、大学の研究グループはモチベーションが上がりませんよね。自分たちの意見は通らないし、売上もほとんど持っていかれるのですから無理もありません。かといって、出資比率が9:1のままでは、議決権や売上分配比率を変えることができません。そこが株式会社の厳格なところであり、使いにくいところでもあったのです。そこでLLPでは、出資比率に関係なく、話し合いで自由に決めていいですよということを認めています。出資比率が9:1でも売上分配比率を1:9にすることもできるのです。このことを「内部自治の原則」といいます。これは株式会社や有限会社などの物的会社にはない、LLPそして民法組合ならではの制度です。ここまで読んでいただいて、なぁんだ、LLPって結局企業などが利用する制度なのか・・・って思ってませんか?LLPの出資者はなにも企業や研究者などに限られませんよ。商店街の店主が集まってLLPをつくり、商店街を活性化する事業を始めてもいいわけです。主婦が集まってアイデア商品を販売する事業を立ち上げたっていいんです。いろんな知識、技術、経験、資金などが集まってひとつの事業を立ち上げるところにLLPを活用できるんです。・・・というわけで、LLPの特長である有限責任、内部自治の原則について、期待される企業スタイルと絡めて説明してみました。次回は、LLPのもうひとつの特長である「構成員課税」について見ていきたいと思います。