偽札をつかまされた その2
中国の公安局が偽札に対しどのような対応をとるのかみてみる為、偽10元札を手に昆明の公安局本部を訪れた。受付の男に「偽札を掴まされた」と言って偽10元札を差し出した。公安の制服を着たいかにもいかめしい中年の男はその偽札を手にとり、指で紙幣の感触を確かめたり、光に透かしたりした後言った。 「これは偽10元札に間違いありません。で、それで?」 まあ、偽札を公安局に持っていったところで相手にされないことはある程度承知していた。それにしても全く調べる気がないというのも、いかがなものか・・・。 私は「この偽札を渡された店を覚えている」と言ってみた。彼はその店の名前と場所を確認したが、「それでどうしようというのだ?」と逆に私に聞き返してきた。そして、「ちゃんとした10元札を取り戻したいのか?」とも。 10元は日本円に換算すると約150円位で大した金額ではない。それよりも偽札が野放し状態になっているこの現状を私は憂いているのだ。そこで、「偽札は中国国家にとって重大な社会問題である」と怪しい中国語で紙に書き彼に見せた。 彼は「うん、うん。」というように首を縦に振って読んだ。どうやら私の意思は通じたようだ。それから彼は受話器を手に取り、担当部署へ用件を伝えてくれた。これで第一関門は突破した。 まもなく英語の話せる公安が2人現われ、彼らにまた同じ説明を繰り返した。少しは進展がみられるかもしれない。だが彼らは「その店は私達の管轄以外になる。管轄の派出所を教えるのでそこに行ってください。」と言った。なんか、どこかで聞くようなセリフだ。 「まあ、それはそれで仕方ないな。」と思い、一応その派出所名と場所を尋ねた。きっと私にその場所への行き方を説明するのが面倒くさかったのだろう。その派出所からここまで迎えの車が来てくれることになった。 ワンボックスタイプの公安車に乗って担当派出所まで移動。そこは路地の中を入った分かりにくい場所にあった。そして3度目の事情説明。興味本位とはいえ、いい加減うんざりしてきた。きっと彼ら公安も「たかが10元くらいで」と思っているに違いない。 事情説明後、公安は「その店に行って、店長から10元を取り戻してこよう。」と言った。私も面倒くさくなったので、それ以上追及することは辞めにして彼らに同意した。結局、公安がその店に行って10元を取り戻してきたわけだが、偽札調査をしてきたというようには見えなかった。やっぱり、野放しか・・・。 今回は私が外国人であったため公安が動いてくれたが(捜査はしていないが)、多分中国人の場合は泣き寝入りということになるのだろう。 中国で偽札が減少するのは、まだまだ遠い先のことに違いない。