喫茶店に来る人々 4
注文を聞き間違える。お出ししたサラダにドレッシングがかかってない。テーブルの水をひっくり返す。 ありとあらゆる失敗を繰り返す毎日。落ち込んでは立ち直り、何とか仕事してます。 どんな失敗でもお客様の笑顔に助けられます。先日も注文を聞き間違えて100円も高いものを持っていったのに笑って許してくれました。「それでいいわよ。」って。 その上、帰り際のお会計のときにもう一度謝ったら「いいのよ。美味しかったわよ。」って。 もう、深々と頭を下げてしまいました。でもご主人は「それでいいのか」って感じの態度に見えました。 きっとこのご夫婦には娘さんがいるのだ。そして、その娘さんが学生の頃に喫茶店でアルバイトをしていたのだな。娘さんは失敗した日にはお母さんに相談したり、グチを聞いてもらったりしていたのだ。その時に、失敗しても笑って許してくれたお客さんには感謝で涙が出る思いをしたと聞かされていたお母さんは私に娘さんを重ね合わせて笑顔で許してくれたのだ。 しかし、お父さんは娘さんのそんな話はツユ知らず。イラっとしたか、ムッとしたのか。そんなお父さんに店を出て走り始めた車の中でお母さんは娘さんの話をゆっくりと始めるのだ。お父さんは知らなかった娘の話を聞けてうれしいような、自分だけ知らなかったことに寂しさを覚えるような、複雑な時間を過ごすのだった。