奇想の図譜 辻 惟雄 ちくま学芸文庫
「奇想の系譜」に続く奇想シリーズ。こちらでは、まず葛飾北斎が取り上げられる。奇怪なワニザメの絵から始まって、爆発シーンの絵の秘密や、あの神奈川沖浪裏をはじめとする波の絵について西洋画の影響の関連を絡め、自由自在、奔放にイメージを膨らませながら話が進んでいきます。ちなみに北斎の「椿説弓張月」の爆発シーンは、水木しげるのマンガそのままじゃないかと思いました。彼もまた北斎を研究していたのでしょうね。そのあとは「洛中洛外図屏風(舟木家本)」の解説。これは以前、東京国立博物館で見たことあるのですが、ざっと見ただけだったので、この本に書かれているような面白さにはまったく気づきませんでした。何と2,660人もの人物の様子が面白おかしく描かれているそうです。次回の展示はいつになるのでしょうか。そして、伊藤若冲の「動植綵絵」について、こちらでもふたたび述べています。応挙が日本画の伝統を学んだプロなら、若冲は独学のアマチュアとのこと。なるほどと、昨日見た三の丸尚蔵館の展示を思い出しました。「増殖」が若冲のイメージとのこと。まさにその通り、ぴったりですね。余談ですが、私が「増殖」と聞いてまず思い起こすのがこちらです。→増殖その他、白隠の禅画や写楽の謎、日本美術における「かざり」の歴史について書かれています。これも、入門者の自分にとって、知的好奇心を大いにそそられる本の一冊となりました。