運命ってあるのかなぁ?
毛絽莉はベーシストなんだけど、うつになっちゃったのといろいろで今はベーシストは休業状態。偶然だったんだけど、結婚をする直前にバンドが解散してしまい、毛絽莉は活動の場を一時失った。毛絽莉は新居へ転居→入籍→半年後挙式→その2ヵ月後新婚旅行という感じで、プライベートもばたばたしてたし、結婚後も仕事を続けた。毛絽莉は新しい生活になって正直ベースを弾くどころではなくなっちゃったのだ。でも、無意識のどこかで「毛絽莉から音楽がなくなったら大変」とわかっていたのかもしれない。毛絽莉としては「バンドはないし、今ベースを練習しなくても誰にもなんにも言われない!好きなことが出来るチャンスだわぁ」なんて思って、挙式後、偶然見つけた楽器屋さんのドラムスクールに入ってドラムを習い始めた。きっと、無意識でベースを弾かなくてもどこかで音楽と繋がっていたいと思っていたのかも・・・と今は思う。ドラムは楽しかった。毛絽莉は昔、音楽学校でベースを習っていた。なんだか1から音楽を学んでいる感じがとても楽しかった。そして、ベースのように誰にも期待されないでいいことが、毛絽莉にはとても楽な気持ちで音楽に向かい合える感じだったのだ。期待されないこと・・・そして昔の毛絽莉を誰も知らないところで音楽をやりたかったのかもしれない。でも、音楽業界って狭いのね。今、毛絽莉が教わっている先生、毛絽莉の音楽学校のときのお友達の知り合いだったのだ。そして、そのドラムスクールがある楽器屋さんのほかのミュージックスクールの講師や発表会などのお手伝いなどをしているミュージシャン達は、毛絽莉の行っていた音楽学校の卒業生が何人かいることも知った。昔の毛絽莉・・・音楽学校に行っていたときの毛絽莉のことを知っている人から、毛絽莉は卒業後ずっと避けてきた。学校に行っているとき・・・自分でいうのもなんだけど先生や周りの人達から期待されていた。そして、少しいい感じでベースを弾けてた毛絽莉はちやほやされていたと思う。まだ若かった毛絽莉は勘違いをしてしまった。そして、いつのまにか期待に応えるためにベースを弾くようになっていたんじゃないかと思う。そんな頃、毛絽莉は恋に落ちた。それでいいベースを弾けるようになればよかったんだけど、毛絽莉は初めての恋に夢中で音楽なんてそっちのけだった。彼も同じ学校の学生だった。毛絽莉よりもずっと大人な人だった。学校の先生に「ふたりが付き合うようになってからふたりともぜんぜんよくない」と言われたことから、ふたりの間は少しずつ距離が出来てしまった。毛絽莉はふたりで頑張れると思った。恋も音楽も。でも、その距離は縮まらなかった。そして、彼は別の人と恋に落ちた。毛絽莉の初めての恋は終わった。毛絽莉にとっては恋だけでなく、尊敬していたミュージシャンでもあった彼と別れたことで、ミュージシャンとしての毛絽莉もだめだと言われたと思ってしまった。彼と別れた後、学校で彼に会うのがつらかった。卒業までなんとか頑張ったけど、卒業後なるべく学校関係者から離れるようにした。期待に応えられない自分を見せるのが怖いこと、そして学校関係者といると彼の名前を聞くことになるのが嫌だったこと。音楽学校のとき、一番お世話になった先生がいた。失恋してベースが弾けないときも優しく話を聞いてくれた先生。そして何より・・・毛絽莉のベースの師匠。先生は弟子にした覚えはないっていうかもしれないけどね。そんな先生にさえ、卒業後連絡をしなかった。何年か前に、ネットで先生のライブがあることを知った。でも、メンバーの中に彼の名前があった。毛絽莉は、そのせいで行けなかった。彼に会うのが怖かった。音楽頑張ってない自分を軽蔑されるんじゃないか・・・って怖かった。そんな風に避けてきたのに、昨日、思わぬ人からメールが来た。「ミクシィ」というサイトで、毛絽莉は師匠を見つけた。メールをしようと思ったんだけど、何を書いていいかわからなかったから後日改めてメールをしようと思った。でも、師匠は毛絽莉の足跡を見つけてメールをくれた。「こらこら、素通りするなんて・・・げんきにしてる?」みたいな感じで。もうあわす顔がないと思っていた。10年以上も前の生徒をきっと忘れてしまっていると思っていたし、もう会えないと思っていた先生。先生は今も毛絽莉の元彼とバンドをやっているんだけどね。運命ってあるのかな。避けても・・・どうしようもなくて・・・縁ってあるのかな。本当に大事なものって・・・手放したと思ってもかえってくるものなのかな。