キャンディード
昨日、帝劇で「キャンディード」というミュージカルを観て来ました。帝劇らしからぬ(?)文学と哲学の匂いがする舞台。出演は、市村正親、井上芳雄、新妻聖子、村井国夫など、確かな演技力の役者さんたち。とにかくこの作品、すごろくの様に舞台が次々展開するのが面白い。まるで、タロットの「愚者」が、「世界」にたどり着くまでを辿る壮大な旅のよう。演者たちは、まるで人生にもてあそばれる駒のように、走ったり飛びまわったり。神様の視点で人間界を観ると、こんな感じなのかなー。このミュージカルは「ウエストサイド物語」の作曲で知られる、レナード・バーンスタインの作品。レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein, 1918年8月25日 - 1990年10月14日) ユダヤ系アメリカ人の作曲家・指揮者。 軌道数7 自身の道を探求し、その風変わりで圧倒的な魅力で人々を惹き付けるアーティスト。 そして皮肉屋。原作は、哲学者・ヴォルテール。ヴォルテール(Voltaire, 1694年11月21日 - 1778年5月30日) 啓蒙主義を代表するフランスの多才な哲学者であり、作家、劇作家。 そして、なんと、フリーメーソンのメンバーだったそう。 金儲けの天才でもあり、計算で導き出し、宝くじを買い占める事によって、 現在のお金で、5億円ほどのお金をせしめた事もあるそう。超ユニークです。 軌道数7 まさに根っからの哲学者、内側の探求者、やっぱり世を斜めに見るのが得意な皮肉屋。そんなヴォルテールの原作を今回忠実に再現したのは、演出家・ジョン・ケアード。ジョン・ケアード(John Caird、1948年9月22日 - ) カナダ出身、英国在住のミュージカルの演出家。 代表作に「レ・ミゼラブル」等があり、現在も世界的に活躍。トニー賞を2度受賞。 軌道数8 偉大なる2人の皮肉屋をバランスよく操り、パワフルに豊かに世界を展開する。 <ストーリー>ラテン語で、純白・純真の意味の名前を持つ若者、キャンディード。彼は男爵の私生児だったが、哲学者で家庭教師のパングロスから教育を受け、「世界の全ては最善だ」という楽天主義の教えを純粋に信じ、幸福に城で暮らしていた。共に学ぶ男爵令嬢のクネコンデと恋仲になり、男爵の怒りを買って城を追い出される。一文無しの旅人となったキャンディード。男爵の城があったドイツから追放され、運命の糸に操られるかのように、ブルガリア→オランダ→パリ→リスボン→スペイン→ブエノスアイレスと流浪する。そして最後の舞台は、自由の国ベニス。途中、戦争による負傷、嵐による遭難、大地震、殺人、宗教裁判による拷問、詐欺・・・と、あらゆる苦難がキャンディードに襲い掛かる。離れ離れになった、最愛の人、クネコンデも、戦争で城を失い、操を奪われ、生き抜くために有力者の愛人を梯子し、娼婦となり、貴族の妻となり、最後に乞食に身を落とす。いつしかキャンディードは、哲学者・パングロスがいっていた言葉に疑問を抱くようになり、自分自身の頭で、自分自身の手で、自分自身の足で、生きるための新天地を求め山に登り、畑を耕し、パンを作り、汗して働き、善も悪もひとつに解け合わせる思想を胸に抱く。最後に、演出家・ジョン・ケアードの作品紹介の言葉で締めくくります。この物語のスタートでは、主人公キャンディードは、何も知らず純真で優しい。全てがうまく行くことを信じ、期待して、世界への旅に出ます。家庭教師のパングロスに彼は教えられていたからです。世界は幸せに溢れ、全てが最善に仕組まれていると。しかし、世界の現実に、彼は大きな衝撃を受けます。彼の経験は悲惨なほど不運続き。恋愛、戦争、仕事、全ての面で、彼はみじめな敗者になります。そして彼が人生の最大の困難に直面している時、マーティンと言う人物に出会います。彼はキャンディードに教えます。「この世は暗黒。善などない」と。世界を旅することを通じて、だんだんとキャンディードは理解し気づき始めます。その考えも、真実ではないと。出来る限り良い世界にするには、それぞれの庭を育て、自分らしい人生を送る事だと。よそ者の哲学に頼るのではなく。興味のある方は、是非、帝劇で。6月27日まで。