気分障害の人への対応
集談会にはうつ病の治療で病院に通っておられる方もお見えになる。どのように対応されているだろうか。基本的にうつ病に関しては医療の領域であり、我々素人が口を出すべきではない。しかし実際に集談会にそういう人が来られるし、また医師によると気分障害に薬物療法をおこなっても3分の1の人には効かないといわれる。(うつと気分障害 岡田尊司 幻冬舎新書 192ページ)このような人たちに、我々はどうかかわってゆけばよいのかを考えてみた。まず簡単にどのような気分障害があるのかを見てみたい。大きく分けるとうつ病と双極性障害(うつ病と躁病が交互に現れるもの)がある。この2つは医師によると使用する薬物は異なるという。うつ病には大うつ病と小うつ病(気分変調性障害)がある。大うつ病は、メランコリー型うつ病と非定形うつ病(新型うつ病)といわれるものがある。メランコリー型うつ病は、責任感が強く、まじめな人等が頑張りすぎてかかりやすい。非定形うつ病(新型うつ病)は、会社に出ていると症状が出てくるが、いったん病気休暇をとると症状が影をひそめてしまうという人たちである。双極性障害には、症状が重い双極性1型と1型より軽い双極性2型がある。その他小うつと軽躁をめまぐるしく繰返している気分循環性障害というものがある。これに該当する方は、普段の日常生活はなんとかこなしておられる人だという。重い気分障害の方は病院で薬物治療を受けておられる人が多い。我々はその推移を見守るしかできない。また一般的に重い気分障害の方は集談会にはお見えにならない。もしそういう人がお見えになった場合は、即生活の発見会の協力医を紹介しなければならない。集談会に続けてお見えになる場合は、精神科の治療を受診してからということになる。その一方で精神科医や心療内科の医師から生活の発見会の集談会を紹介されるケースがある。この方たちは長らく医師の治療を受けているにもかかわらず気分障害が改善に向かわない人である。あるいはカウンセリングによっても改善がみられない。苦しいながらも日常生活はなんとかこなせており、森田療法によって心の苦しみを取り除きたいと集談会に参加される人たちである。症状的には「気分変調性障害」「気分循環性障害」に該当される人だと思われる。「気分変調性障害」は、「抑うつ神経症」とも言われている。エネルギーが乏しく、疲れやすく、絶えず悲観的な考えに囚われ、人生をはかなみ、楽しさよりも、悲嘆や苦しみを感じて、ため息ばかりついている。そういう性格であると思われることも多く、実際神経質で、自信がなく、不安の強い性格との結びつきが見られる。半数以上がなんらかのパーソナル障害を合併している。日常生活はどうにか行える程度の比較的軽いうつ状態が、長年にわたって続く。女性の頻度が男性の2倍である。発症年齢は10歳から45歳である。親が気分障害を持っていると、その子どもが気分変調性障害になる割合が5割程度ある。「気分循環性障害」は軽躁と小うつを短い期間で繰り返す。若干日常生活に支障をきたしている。性格上の問題だと思われるケースもある。なかには境界性人格障害と誤診されるケースもある。家族に双極性障害の人が多く、遺伝的な要因が強いとされる。気分でも行動面でも対人関係でも、ムラが激しく、軽躁期には、対人関係がエスカレートしトラブルの種をまきやすく、自信過剰になって、仕事の手を広げすぎたり、浪費に走ったりしやすい。逆に軽うつ期には、やや無気力で睡眠時間も増え、仕事も質、量ともに沈滞する。気分を浮き立たせようと、薬物やアルコールに走ることもある。これらも基本的には精神科医等の薬物治療を受けることが最優先であると思う。その上で神経質性格に当てはまり、本人に森田理論学習の意欲があれば集談会で積極的に受け入れるべきであると考える。(うつと気分障害 岡田尊司 幻冬舎新書 99,115ページ引用)