神経症からの回復の物語
北西憲二先生は、神経症からの「回復の物語」という本の中で、次のように述べられている。(212ページ 岸見勇美著 白揚社)社会不安障害(人前での恐怖)、全般性不安障害(過度の心配性)、PTSD(人生のつらい出来事と結びついた反応)などは・・・・とくに薬物療法の対象とすること、つまり医療化することは危惧の念を抱いている。この問題は、病あるいは私たちが生きていくにあたっての苦悩を脳機能不全に還元し、矮小化してしまう危険性をはらんでいる。さらにその苦悩、病を私たちの人生の経験に組み入れ、そこから新しい生き方を模索するという回復の作業が困難となるだろう。現在神経症にかかり、薬物療法を併用しておられる方も多いと思う。重症の患者、うつなどの他の精神疾患を抱えておられる方は、医師の指示のもとで回復を模索することは当然のことである。しかし森田療法の専門医が、このような警告を発しておられることは十分に考慮されなければならないと思う。森田先生も言われているように、神経症は器質的な病気ではない。本当の病気ではないのである。病気ではないのに、本当の病気以上の様相を呈して、日常生活や精神的苦痛にのたうちまわっているのである。抑鬱状態が強いときは、抗不安薬などの薬を併用することは効果がある。しかし神経症からの解放という意味では根本的な治療法ではない。ここのところを間違えてはいけない。一旦小康状態になっても、困難な場面があるとすぐに落ち込む。つまり容易に再発する。さらにとらわれやすく、悶々とした生きづらさは全く解消することはない。これは誤った考え方、誤った行動が改善されないので元の木阿弥になるのである。森田理論は神経質性格を持った人で神経症に陥った人、また悶々とした生きづらさを抱えた人に有効である。特に生の欲望の発揮、不安と欲望の関係、かくあるべしという思考方法の誤り、事実本位の生き方をよく学習して、考え方を修正して、生活面に応用できるようになれば、神経症の克服ばかりではなく、以後とても生きることが楽になる。一生の宝ものを手にすることになる。その際セルフヘルプグループへの参加は欠かせないと思う。自分ひとりで森田理論を体得できるということはほぼ不可能であろう。NPO法人生活の発見会の各地集談会への参加が、今のところは一番有効であろうと思われます。それは神経症苦しんだことのある人の学習グループであるからである。回復の物語を持っている人が多数存在しているからである。