大学運動部のガバナンス問題について
日本大学のアメリカンフットボール部の反則タックルの問題は今や大きな社会問題となった。監督が絶大な権限を持ち、コーチを使って学生を意のままにコントロールしていた。その監督は日本大学の理事会で人事権を握るNO2の要職も兼ねていた。運動部の予算の振り分け、コーチの人事権、学生の就職の斡旋までする絶大な権力を持っていた。それだけではない。相撲部の監督は今や日本大学の理事長まで上り詰め絶大な権力を保持している。絶大な権力の下で、その中に放り込まれたコーチや学生は監督の意向に逆らう事は許されない。逆らえば、コーチは路頭に迷い、運動部の学生は就職先の面倒をみてもらえなくなる。だからどんなに理不尽なこと言われても、引き受けて実行するしかない。日本大学のアメリカンフットボールの不祥事はこのような閉鎖的な組織の中で発生したのである。もともと日本の高校・大学の運動部は同好会であるという。そのために組織のあり方については、全く関心が払われてこなかった。そのツケが、今回大きな社会問題として表明化されてきたのだ。体育会系の運動部は、今や同好会と言われるにしてはるあまりにも巨大である。そのバックアップ体制としての父母会も巨大な組織となっている。高校や大学にはアメフト、バスケット、野球、相撲、陸上部、アイスホッケー、テニス、ゴルフ、レスリングなどがある。これらの運動は、大学の広告塔としての重大な役割を担っている。今や有名な運動部を持つことは、高校や大学の盛衰にも影響を与えているのだ。それだけに巨大な資金が投入されている。他の大学とのリーグ戦などが組まれて、中には入場料を取ったり、 TV放映料金をとったりする。アメリカの全米大学体育協会では、それらの金額は年間1000億円に上っているという。そんな巨大な組織になっているにもかかわらず、組織運営があまりにもお粗末であるのはどういうことなのか。先日、東大のアメフト部の監督がテレビ出演して重大なことを指摘していた。運動部のガバナンスのことである。運動部のガバナンスとは統治機能のことである。これはよくコーポレートガバナンス(企業統治)ということでよく耳にされている方も多いと思う。現代ではガバナンスを無視した会社経営は成り立たないと言われる。今や早急に大学の運動部にもガバナンスの確立が求められている。監督やコーチの権限、責任、役割の明確化、大学統治と運動部の統治の関係、監督やコーチと学生のあり方、運動部としての教育のあり方、父母会のあり方、マスコミとの関係、重大な死亡事故や怪我が発生したときの対応、運動部組織の監視体制、組織改革、意識改革、莫大な予算管理、経費の使い方、学生の就職口について、学生の日本代表選手の在り方、大学間における連絡や調整などについて予め検討して運営していくことが求められる。東大のアメフト監督によるとまずは、個々の大学でガバナンスを確立する。そして各大学を束ねる全日本大学競技スポーツ協会(仮称)などの全国組織が必要であるという。アメリカではNCAAという全米大学体育協会がありこれらの事を行っているという。 1,100の大学が加盟して、年間1,000億円を超える収入があるという。イギリスにもBUCSという協会が設立されているという。そういう意味では日本の大学の運動部は、ガバナンスが全く機能していない。その中で問題の一つとして、軍隊式のような閉塞的な監督・コーチと学生の問題が出てきた。カリスマといわれる監督が、自由自在に学生を将棋のコマのように扱っていたのだ。このような関係を解消しなければ、第二の日大問題はまたすぐにどこかの大学で発生することだろう。日大の監督・コーチを除名することも大切なのだろうが、ガバナンスに手を付けないと片手落ちだ。