料理を作る姿勢について
集談会での話です。夕ご飯の料理のことです。どういう基準で料理に立ち向かうのか。面白い話が聞けました。ある人はその時々で自分や家族の食べたいものを作る。その目的に沿って食材を買ってくる。なかには1カ月の献立をあらかじめバランスよく立てている人もいます。自分や家族の好物が並んでいます。嫌いなものを作ることはありません。またある人は、まず新聞に入っているスーパーのチラシをよく見る。実際にスーパーに行ってとにかく安い食材を買い込む。その食材を見て料理を考える。だから必ずしも家族の好物ばかり作るわけではない。スーパーは特売日があるので、いろんなスーパーで買い物をしている。特に野菜は店により、時期的に値段に差がある。また品薄で高い野菜は敬遠して代替商品に変更している。最初の人の考え方の長所は自分の感じ方から出発している。自分や家族の好みや意志をはっきりさせている。食に関してはストレスが少ない。自分や家族から料理の不満がない。欠点としては料理が偏る。見たこともない料理にはあまりお目にかからない。料理のバリエーションが少なくなる。肉が好きな人は肉料理が多くなる。魚の好きな人のメイン料理はいつも魚になる。中華料理の好きな人は中華料理が多くなる。酒が好きな人はつまみのような料理が多くなる。趣向品が多くなり、勢い栄養のバランスが崩れたりする。食費が多少多くかかる。次の人の長所は食費の節約がある程度できる。月間の食費の予算を立てて、計画通りに進めている。家計簿をつけて食費だけでなく、その他の経費項目についてもなるべく予算内に収めるように考えている。それだけ頭を使いやりくり上手なのである。欠点としては好きな料理であっても、食材が高いものはあまり食べられない。安い食材を大量に買い込み、一度に多く作り何日も同じ料理を食べさせられることがある。特にカレーやシチュー等。そのため家族から不満が上がることがある。また安いものということが頭にあり、買い物に時間がかかり、生活のリズムが崩れやすい。さらに思いつきの簡単な料理になることが多く、手間暇のかかった料理は少なくなる。美味しいとか見た目の鮮やかさ等はあまり関心がない。それが高じると生きるために仕方なく何かを作っているという状態になる。料理の後の後片付けイヤになることがある。こうしてみるとどちらも一長一短あるということが分かります。どちらの考え方がよいとか悪いとかの問題ではないような気がします。でも面白いことに、集談会ではこんな話題を出されると、感じから出発する方がよい。あるいはお金を大切に使うという(森田では物の性を尽くす)方がよい。どちらかに自分の立場を決めて、相手の意見に対して反発して議論を挑むということがあります。きついことを言うようですが、はたしてこんなことでいいんでしょうか。こんな時は、自分の態度をどちらかに決めつける前にすることがあるのではないかと思うのです。それは両面観でそれぞれの言い分の長所や欠点、よい点や悪い点を挙げて検討してみることです。よく比較検討して両者の違いをはっきりと認識してみることです。比較して両者の違いを十分に認識する。最大の注意点は比較だけにとどめておく。是非善悪の価値判断をすることは、「百害あって一利なし」という気持ちをしっかりと確認することだと思います。これは森田理論の中でも最重要事項だと思います。ここが体得できた人は、その後の人生がまるっきり変わってくるのです。森田先生はこのことを大学卒業程度の治り方だといっておられます。小学校、旧制中学を超えて大学卒業程度の治り方というのはまさにここにあるのです。みなさんここはなんとか体得しようではありませんか。そのためのご協力は是か非でもさせていただきたいと思っております。