気分本位の問題点について
森田先生のお話です。婦人などに、よくある事ですが、例えば昨日からの予定で、一緒に松坂屋とか・花見とかに行こうというときになって、気が進まないでいやになったとき、「頭痛がする」とか「気分が悪い」とか、直接に自分の実際を言うことができないで、言を左右に托して、「天気が悪いから」とか「着物が間に合わなかったから」とか、いろいろの口実を設けて取りつくろうとする事がある。自分でもあえて、虚偽をいうつもりではないが、自分のいやになった根本的の理由に、自ら気がつかないのである。そして、その口実が曖昧であるから、かえって相手の感情を損ないやすいのである。これもみなその本心は、自己弁護の心から起こるのである。(森田全集第5巻 596ページより引用)森田先生は一旦やろうと決めたことを、途中で取りやめたいと思うのは一向に問題はないと言われているのだろうと思う。問題はそこにあるのではない。ついさっきまでは、そのつもりだったが、時間が経過した結果、行動する気持ちが萎えてきた。それを相手に向かって、発言することは、いかにも子供じみている。子供でもどちらかというと幼児並みである。相手からそのように判定されては、自分の人格を否定されることになる。どうしようもない人間だとみなされると、風評が広まり、ますます自分の立場が悪くなる。そこでとる態度は、自己弁護、言い訳、ごまかし、事実の捻じ曲げである。これらは森田先生が最も嫌う行動です。事実を認めて、受け入れるということが森田理論の眼目なのです。それに真っ向から逆らう態度が、事実を無視、事実の捻じ曲げ、捏造、言い訳、自己弁護にあるのです。皆さんの周りにも、気分本位の塊のような人で、いったん決めた事なのに、ころころと態度を豹変される人がいらっしゃると思います。一旦約束しても相手からドタキャンを食らい、やむなく予定を変更させられる。そういう習性の人は神経質性格よりも、意志薄弱性気質の面が強い人かもしれません。いったん約束したことは、それを第一優先順位とする。自分の都合で勝手にその約束を反故にすることはまずいのです。さらにその気持ちを隠蔽するために、表面的にうそをついて、隠蔽工作を画策することになると、森田理論で目指している事実本位の態度からどんどん離れて行ってしまうのです。森田先生はチャンスの神様は前髪はあるが後ろ髪はないといわれる。チャンスと判断すれば、できるかできないか判断できなくても、イエスといって引き受けなさいと言われています。そうしないと後で後悔することになる。これはいったん引き受けたからには、何が何でも成功させるという不退転の決意があってのものです。背水の陣を引いて自分を追い込んでいくということはそういうことです。気分本位で意志薄弱性のタイプの人は、このような安請け合いは禁物だと思います。自分にも他人にもうそをつかなくてはいけない状況に追い込まれることが多くなるからです。自分の素直な感情に対してうそをつくということは、森田の目指している方向とは真反対になります。この態度が改善できれば、森田でいう「事実本位」に近づくことができます。