対人折衝能力、自己主張能力について
学校でいじめられたり、職場で人の思惑ばかり気にして、仕事に集中できない人がいます。この人たちは、自己主張ができずにいつも相手のいいなりになってしまうことが多いようです。こういう人は、家ではわがままし放題、家庭内暴力で発散している人もいます。妻や子どもを虐待している人もいます。でもいったん家を出ると、家とはうってかわって借りてきた猫のようになるのです。何も言えないのです。当然葛藤があり、自己否定感が強くなります。友達との間では、親子の依存関係では成り立ちません。対等な人間関係が結べないとつきあうことは困難になります。このことについて、崎尾英子さんは次のように指摘されています。お友達との関係を結んでいくには、基本的には親との「世話をし、される」関係、「保護し、される」関係という、互いに互いを補うような関係を基軸にしながら、その内部に「対等」という言葉で示されるような互いを等しく尊重しあう関係をいくらか発展させておくことが必要です。親が子どもに指示、命令、強制、脅迫で行動を迫ったとします。親がいつでもどこでも親の思いに従わせるという家庭もあるでしょう。反対に、子どもが「私はそれには従わないよ」というメッセージを返してきました。親にとっては子供が反抗してきたということです。ところが子どもにとっては、自分の言い分が通ることもあるという体験も必要なのです。親がきちんと受け止めてくれると、子どもにとっては、自分の意見が親に尊重されたという経験になります。こういう経験がないと、子どもはいつも親のいいなりです。それに慣れてしまうと、自分で積極的に行動できなくなるのです。その場はなんとかおさまっても、子どもの自主的、対人交渉能力は育っていく余地がなくなってしまうのです。子どもの対人折衝能力、自己主張能力は、最初に経験する親との対人関係に大きく影響を受けているということです。ではそれらの能力が育たないで大人になった場合はどうすればよいのでしょう。あきらめる必要はありません。ただ成育歴を分析し、原因を突きとめて、親を恨んでも事態が好転することはありません。私は、これは森田理論の「感情を受け入れる」、「自分の意志を尊重して生の欲望にのっとって生きていく」という実践によって解決すると考えています。