素直な感情を肯定する
幼い子どもが小さな犬を見て「怖いよ!」とおびえていたらどう対応するでしょうか。「怖くなんかないよ。近寄ってごらん」「あんたは臆病なんだから」などと言うかもしれません。子どもが怖がっている様子を見て笑う、逆に叱ったりする人もいるかもしれません。こうした対応は、子どもにとっては自分の感情を否定されたということになります。否定されると「恥」と感じ、「自分が悪いのだ」という罪悪感から、その感情を抑圧し、ガマンします。もしくは、ガマンできずに、「怖いよー!」と号泣するかもしれません。否定された男の子には、「ボクはわかってもらえない人なんだ」「ボクは弱い人間なんだ」という自分への不信感が芽生えます。すでに理性が発達した大人からすれば「そんな大げさな」と思うかもしれませんが、理性よりも本能レベルで生きている感受性の高い子どもにとっては、自分の感情を否定されることは、自分自身を否定されたも同じことです。このとき、大人は幼い子供に対してどう接すればよいのでしょうか。幼い子どもが「怖い」と言っているのだから、まずはその感情を肯定してあげる。「そうか、怖いんだね」「うんうん、初めて見たからね」「びっくりしちゃったんだね」、そうやって受け止めて上げれば、「自分の気持ちをわかってもらえた」と安心します。幼い子どもは、自分の感情や気持ちに寄り添ってほしいだけなのです。このように対応すると、幼い子どもは自分を否定することなく、自分の素直な感情や気持ちをそのまま感じていいのだなと思います。これは自分にとっても全く同じことが言えます。「上司に腹が立っちゃうよね」「相手の言動にイライラしているよね」「過去の不祥事を思い出しては胸が苦しくなるよね」「悲しいよね」「嫉妬しているよね」「意欲がわかないよね」仕方ないね。でもそんな気持ちになったことは認めてあげるよ。このようにすべての感情や気持ちにOKを出してあげる。自分のネガティブな感情や気持ちをいいとか悪いとかの価値判断をしないであるがままに認めてあげる。自分が自分の気持ちを否定しないで、分かってあげたら、初めてそこから、本当に前を向いて歩いていけるようになるのです。否定的な感情を自分で否定していると、この世の中に味方は一人もいなくなります。自分で自分を守り抜くことは最後の砦です。行動を反省して改善していくのはその後のことです。(会社に行きたくないと泣いていた僕が無敵になった理由 加藤隆行 小学館 参照)