巨大地震をプレート境界型で決めつけてもよいのか
東日本大震災は、日本海溝から沈み込む太平洋プレートと、その上に乗ったオホーツクプレート(または北米プレート)との境界で発生したプレート境界型地震だったと言われています。この分析は、巨大地震は必ずプレートの境界で発生するという前提に立っています。そして今後30年以内に発生するという東南海、南海巨大地震もプレート境界付近で起きるはずだという暗黙の了解があります。果たしてそうでしょうか。確かに過去の巨大地震の多くはプレート境界付近で発生しているのも事実です。しかし2008年5月に起きた四川大地震はプレート境界説では説明できない。2016年熊本地震、2018年北海道胆振東部地震、2024年能登半島地震の発生原因はどう説明するのか。これらの地震は、東南海、南海の想定震源域とは全く関係のないところで発生しています。埼玉大学の角田史雄先生は東日本大震災を「熱移送説」理論を基にして次のように説明されている。日本列島の土台は固い花崗岩層で、その下に熱く一部溶けた岩層があり、それらを熱いマントルが支えています。熱が運ばれてきて地温が高まると、ブヨブヨした岩層(中部地殻とその下の下部地殻)は圧力なべの中のように巨大なエネルギーがたまります。その次に、その上に乗る固い花崗岩でできた岩層(上部地殻)は徐々に盛り上がり、限界を超えるとせんべいを割った時のように一挙に引き裂かれます。気象庁や観測センターを持つ大学などのデータの解析結果によれば、東日本大震災の震源断層面は花崗岩層の底面でした。その底面が次々に割れたのです。その底面の裂け目の広さは、500キロメートル×250キロメートルにも及びます。そして、その面を含む地下10~60キロの範囲が動き続けて、次々と余震を発生させました。震源が分布するエリアはほぼ平らであり、これまで想定されてきた傾いたプレートの沈み込み面とは異なった場所でした。巨大地震はプレート境界で多発していることは事実ですが、マントルの高熱が震源域付近に移送されて初めて巨大地震は起こるという説明は説得力があります。日本にはマリアナ海溝から伊豆を通り関東から東北に抜ける高熱の通り道とインドネシアからフィリピン、台湾、九州から関東に抜ける高熱の通り道があることが確認されています。移動の速度は1年間で約100キロくらいだそうです。熱風が次々に移送されていると角田先生は説明されています。プレートの境界面は強力な接着剤でくっつけられた状態で簡単には剥がれないようです。ところが、その真下に高熱が移送してくると境界面は簡単に剝がされてしまうようです。今までプレート境界説ばかり関心を寄せてきましたが、熱移送説を加味して地震の予知を考えていく必要があるように思われます。そのためには全国各地の火山活動や微弱な地震を監視することが有効です。さらにGPSで土地の移動や隆起を捉えることも有効です。その他、早川正士氏は、地震の直前になると電離層の攪乱が発生しているという現象を指摘されています。現在you tubeで地震予知に役立つ「日本全国緊急地震速報ライブ」がリアルタイムで発信されています。私はこれを毎日見ていますが、ある特定の場所で震度1から3程度の地震が頻繁に発生していることがよく分かります。事実が掴めると心の準備ができます。油断しているときに、突然警報音とともに「地震です!大きな揺れにご注意ください」というアナウンスほど心臓に悪いものはありません。(南海トラフM9地震は起きない 「熱移送説」で地震発生のメカニズムを解き明かす 角田史雄 藤和彦 方丈社)