父さんの思い出 第2話 「カレー」おやつ
父さんの思い出 第2話 「カレー」 小学校3年生の冬の頃の記憶だ。当時、私の両親は共働きで数ヶ月間学校から家に帰ると誰もいない、いわゆる『鍵っ子』だった時期がある。毎日学校から帰ると友達と野球をしたり、週に2日は藤沢の剣道の道場に約2Km歩いて通っていたので、結構毎日が忙しくそれほど寂しいと感じた事は無かった。 その頃、母は下の妹の出産のため東林間の母の実家に世話になっていた。そのためその頃、食事は父が作ってくれていた。当時は育児休暇など男性が取れるような時ではなかった。当時務めていた電気屋で肩身の狭い思いをして、私のために早く帰って来てくれていたのだと思う。 ある日、友達と遊びそして帰宅して父を待っていた。しかし、7時を過ぎても帰ってこない。普段なら遅くても6時ごろには帰ってくるのだがその日は特に遅かった。おなかがすいてたまらなかった。炊いたご飯はあったがおかずが無い。冷蔵庫の中を見ると豚肉とジャガイモとニンジンがあったのでカレーを作った。鍋に水と材料と小麦粉とカレー粉をそのまま入れて火にかけた。初めて一人で作った料理だ。 しかし、出来上がったものはとてもカレーと言えるようなものではなかった。ジャガイモ、ニンジンには芯が残り、小麦粉とカレー粉は良く溶けずに粉のままダマになってしまった。 8時ごろ父が帰宅した。そして私の作った不味いカレーを食べた。すると以外にも「美味しいよ。よく出来ているね。」と私を誉め全部食べてくれた。それがきっかけで私は料理が好きになった。あの時父が誉めてくれなかったら料理する事が嫌いになっていたかもしれない。今でも食事を作ることは苦にならない。だから今でも我が家では私が食事を作っている。 今、文香は小学3年生。もっともっと誉めてあげないといけないのかな?父親としてもっと寛大に見てあげようと思いつつ、ついつい細かいところに目が行ってしまい、注意する事が多くなってしまう。細かい事はいずれ気付いて自分から直すのかな。 ほんの一言が人生に大きく影響する事があると思う。時々二人に言った事を後悔する事がある。「何であんな言い方をしてしまったのだろう。」 そして反省する。 『親になるのって難しいなあ・・・。』・・・とつくづく思う。 平成19年4月23日