偶然
貴女は拾われたというが、僕からすれば、それは、すこし、違う。僕は、石ころだった。理由は、様々だが、なぜか、コロコロと転がり落ちて、ひとつだけで海辺に転がっていた。そして、波が、石ころの表面についた、数々の虚飾を、時間をかけて洗い流していった。月日が過ぎ、偶然、ふんわりと海辺に下りてきた、貴女の目にとまって、拾い上げてもらった。そのとき、貴女は、拾った石ころをじっと見ていた。役に立ちそうな感じはしないが、ちょっと、面白い形と色をしていたから、少し迷ってはいたが、ポケットに入れて、もって帰った。なつかしい、あの時。何も、飾りが無かった、あの時。