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カテゴリ:経営コンサルタント
三角合併解禁に伴い、外資脅威論が再び盛んに言われている。三角合併が敵対的買収に結びつく、結びつかないという議論も、どちらの言い分も正しそうに思えるほどまことしやかである。 1年ほど前までは、時価総額が大きければさすがに敵対的買収に晒されないだろうといわれており、1兆円がその目安ともされていた。
しかし、最近の海外のニュースは平気で1兆円を超えるディールが目白押しである。 オランダABNアムロ銀行に対する買収提案合戦(11兆円を超える) トムソンとロイター(これは友好的)(2兆円程度) アルコアとアルキャン(3兆円程度、ただし現状・敵対的で今後増額予想もあり)
などである。ちなみにシティーグループの日興コーディアルへのTOBは総額1.5兆円程度(TOBで取得する株式には9千2百億円)と見積もられている。また、1350円で提案を行なったとき、その週の米国内でのM&Aディールでは3位にとどまっており(日本国内では今年上半期最大規模)、1位はTPG、KKR、GSによるTPU買収(約5兆円)であった。 <金額はいずれも日経新聞より> したがって、外資が1兆円程度の日本企業を一気に買収することも十分考えられるような雰囲気にもなっている、というのが三角合併による外資脅威論者による論拠だ。 但し、ロイター買収で登場することが多くなったトムソンファイナンシャルによれば、昨年の世界のM&A総額は450兆円であり、そのうち日本国内では12兆円程度であり、世界シェアは3%に満たない。 しかし、外資に席巻された国で、自国内経済がおかしくなった国も聞いたことがない。ここがまさに、政府・霞ヶ関が外資による対内直接投資を推進する根拠にもなっている。 英国も「ウインブルドン現象」(全英テニスのように英国人がプレーしなくとも、興業的、権威的にも一流大会の座を維持しているよう、外国企業に英国企業が買収されても、失業率は改善し、GDPも改善している)といわれ、かえって経済が回復できた。 米国も80年代には日本たたきが自動車・鉄鋼を中心に横行したが、今の米国自動車産業の凋落に関し、米国ではトヨタやホンダたたきは鳴りを潜めている。また、シリコンバレーから多くのIT企業が勃興しているが、彼らを支えているのはインド人や中国人技術者であることはよく知られている。空洞化される産業と、新興産業がダイナミックに入れ替わっている。 BRICS諸国も外資を積極的に経済発展に活用している。
少子高齢化を前提とする将来の日本において、外資導入による生産性の効率や合理化は日本の持続的成長に不可避であるとの論調である。日産自動車(最近息切れ気味)、新生銀行、ゴールドマンサックスのゴルフ場再生など「成果」もある(ただし、ウオルマートの西友のように逆の場合もあるが)。 評論家の竹村健一さんが、もう10年くらい前だろうか、不良債権処理等を遅らせることや規制緩和が続かない日本の現状をみて、「ジャパンバッシング」 → 「ジャパンナッシング」になったらおしまいだから、規制緩和や過去の膿を吐き出して、経済活性化を推進しよう、といった類の話を展開されていたが、まこと酔眼である。
では、 外資に買収されて、一番困るのは誰だろう??? 1:経営者、経営陣 (当然に更迭される運命) 2:従業員(クビにはならないが安定雇用の前提がなくなり、将来が不安定になる) 3:公務員(? ただし、外資に課税強化するなどしてしまうなど拙策してしまえば、税収が確実に減少するので返り血を浴びかねないが基本的にはニュートラルな存在) 4:
短期的には明らかに1だろう。2も将来が不安になるという可能性は残るが、転職も今以上に盛んになるはずであり、新しい労働スタイルが確立されるはずである。 問題は、過渡期的に国内に混乱が生じないかであろう。例えば、外資が買収する、当然一部はリストラにあう、再雇用されるまで時間がかかるなどである。米国等では、リストラされれば、さっさと次の仕事を見つけてしまうことが多いし、十分な生活手当て(実質的な退職金等の割り増し)もあるため、社会問題にはなっていないようである。 なぜ世間は「脅威・脅威」というのだろう? 経営者をビビらせるほうがお金になるからでしょうか? 弁護士、会計士、コンサルタント、雑誌・新聞・・・。一方、M&Aが活発化したほうがお金になる人もいる。やはり弁護士、会計士、コンサルタントこれに加え、銀行・証券会社などもだ。やはり商売ネタの宝庫ですね。私もその一人になってしまうのだろう。 外資による日本企業買収は、買収後「よく分からない」ものの、「怖い」ものではなさそうだ。ちなみに前職は一応外資だったが・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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