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カテゴリ:経営コンサルタント
「中国『有毒』全リストと日本の流通先」 AERA8/1号 「対日輸出禁止 発がん性うなぎ恐るべし養殖」 週刊文春07/7/26 02年に中国産冷凍ホウレンソウに大量の残留農薬が検出されて以来、中国産農産物へのバッシングが強い。最近では農産物のみならず、薬品やおもちゃ、土鍋といった分野にまで被害が広がっている。 最近、こういった問題を調査する機会に恵まれたので、すこし触れてみたい。ただし、ここでは食品に限定した話題とし、薬品やおもちゃ等については対象外とする。
中国から食品をどれぐらい輸入しているかご存知だろうか? 厚生労働省 「輸入食品監査統計 平成18年」 によれば、06年では全部で3400万トンの食品等が輸入された。また、輸入届出ベースでは、186万件の届出があり、いずれも過去最高になっている。 http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/dl/tp0130-1h.pdf 「有毒」報道の元凶となっているのは、食品衛生法という根拠の元で、検査を行った食品等から検出されたものについていっている。これは、輸入届出ベースで過去のデータベースに基づいて検査される(要するに過去に違反が多かった食材や輸出国のものを重点検査する)。この届出ベースの輸入国ランキングは以下の通りだ。
ランク 国名 届出件数 数量(万トン) 検査件数A 違反件数B 違反率(B/A) 1位 中国 578千件 493 91,264件 530件 0.6% 2位 米国 197千件 1,310 18,172件 239件 1.3% 3位 仏国 191千件 57 16,428件 27件 0.5% 4位 タイ 122千件 125 17,527件 120件 0.7% 5位 韓国 96千件 56 12,732件 26件 0.2%
となっている。確かに違反件数は中国が圧倒的に多いが、輸入届出件数も圧倒的に多いため、それほど違和感がない。また、違反率を見ても5か国中でさらに良くない米国やタイといった国もある。最近の中国産バッシングはフェアーでないような感じがする。 中国や韓国といった近隣諸国から輸入届出件数が多いのは飛行機による空輸が多いそうで、少量多品種のものを効率的に輸入した結果だそうだ。米国は小麦とかとうもろこしをバルク船とかで大量購入するケースが比較的多い(ちなみにフランスがなぜ多いのかというと、ワインだそうです。ブームを反映しているのでしょうか?) では、何が違反とされているのだろうか? マスコミ報道では「抗生物質」「残留農薬等」といった報道が多いが、正確には、1:残留農薬、2:微生物規格、3:添加物、4:残留動物用医薬品(抗生物質)、5:有毒有害物質に分けられている。 中国産輸入食品は多岐に渡り、上記5分類すべてにたくさんの違反がある。ここではうなぎに焦点を絞ってみよう。ちょうど土用の丑も終わったので業界営業妨害とも言われないだろう。 中国産うなぎに対する検査違反は45件であった(全530件のうち8.5%)。このうち、残留農薬が7件、残留動物用医薬品が38件であった。05年に問題となった「マラカイトグリーン」は残留動物用医薬品である。この代謝物である「ロイコマラカイトグリーン」も同様である。 「マラカイトグリーン」は養殖業等において、水カビ病治療薬等として使用されていたが、02年に中国内で使用禁止となった。その後、大半の養殖業者では使用をやめたが、養殖池の底に残留しているマラカイトグリーンをうなぎが摂取してしまい、検査時点で引っかかったというのが直接の原因だそうだ。中国側では05年に、一旦輸出を停止してまで、国内業者の取締りを実施していたが、検査といっても抜き打ち検査が限界であることや、生き物なのでどうしても発育や体調に誤差が生じ、医薬品が抜けないウナギが発生するようだ。また、国土が広いことと養殖業者数も多いため、検査の目が行き届かないというのが本音のようだ。一応、養殖からかば焼き工程に入る前に、生きたままウナギを48時間ほど地下水等で洗い流せば、普通は農薬等は残留しないようになっている。 中国側では政府主導で02年のホウレンソウ事件以来、本気で安全性対策に乗り出しており、設備投資も半端じゃない。なぜなら農水産物の輸出は農村部における重要な産業であり、都会との格差批判をやわらげたい政府としては、重要な政策として位置づけられているという。ウナギの場合、養殖池は日本の養殖業者の10倍以上の面積を誇り、かば焼き工場も品質管理や設備面も最新鋭であり、検査機器も日本で普及しているものよりはるかに性能がいいものをそろえている。あちらは「産業」で日本で養殖業はまだまだ「家業」が主流である。 では、どのようなケースが違反なのだろうか? 07/7/30日の厚労省の発表分を引用する。韓国産の活しじみの検査違反に関するコメントである。 韓国産活しじみから、エンドスルファン(農薬)が0.02ppm検出された事例に対するものである。 「エンドスルファンの「一日許容摂取量(人が一生涯毎日摂取し続けても、健康への影響がないとされる一日当たりの摂取量)」は、体重1kg当たり0.006mg/日であることから、体重60kgの人が、上記の中で最も検出値の高い0.02ppmのしじみを毎日10kg摂取したとしても「一日許容摂取量」を超えることはなく、健康に及ぼす影響はありません。」 どういう意味だろう? 冷静に文脈を読むと、「1日10キロ違反のしじみを毎日食べても健康に問題がない」 という意味ではないだろうか? また、05年当時のマラカイトグリーンの検出についても、このようなコメントになっている。 「検出基準値は微量であり、通常のウナギの摂取量であれば、健康への影響がない」 では、なぜ使うとだめなのだろうか? マラカイトグリーンの場合 「人に対する発がん性のリスクは明確でないが、げっ歯類における発がん性が示唆されていること、遺伝毒性も否定できないことから使用は望ましくない」というのが厚労省傘下の食品安全委員会の専門医の意見である。 どのくらいの量なのだろうか? マラカイトグリーンの場合、0.002ppmである。これってどのくらいの量なの? うなぎ1gに対し、5億分の1gの量のことである。 え? 5億分の1gって肉眼で見えるの? 「見えません」 肉眼で認識できず、食しても直ちに健康被害のない分量の残留をも取り締まっています。おかげでウナギは相場が高騰し、一昔前より高くなってしまいました。 日本の食品輸入基準は先進諸国でも厳しい部類とのことです(読売新聞による)。日本は食糧のかなりの部分を輸入に依存しています。あまり厳しくしすぎると、需給という本質面で足かせにならないか心配です。 さらに、魚介類で既に起こっていますが、「買い負け」現象も考えられます。つまり、日本より良い値段で買ってくれる先に売ってしまい、日本で必要な量が調達できないリスクです。日本規格があまりに厳しいと、生産者はコストが嵩みます。日本ほどコストがかからず、かつ、比較的利益がでる国に売却する方が、生産者側に有利になるからです。日本特有の過剰品質問題が懸念されます。かつ、中国の経済発展とともに食生活が豊かになり、高嶺の花であるうなぎなどを食するようになると、日本に輸出するのも馬鹿になってきます。 しかし、冒頭のマスコミ報道は面白おかしく報道しているのみで真実や何が国民の最大の利益かを問うていません。 「発がん性うなぎ」「有毒」 これはひどいと思います。魚の焦げ目のほうがよっぽど発がん性が高い。マラカイトグリーンとその代謝物であるロイコマラカイトグリーンは「疑い」の段階で、発がん性を認定されていません。 また、「有毒」という表現は、致死量の農薬等が残留していたのならいざ知らず、「健康への影響がない」と厚労省が言っているのに、明らかに誤解です。名誉毀損の可能性すらあります。 更に水産物は天然と養殖がありますが、前者は『資源』であり、現状の世界の人口増加動向から世界人口分の胃袋を満足させる魚介類は天然資源では限界がすぐに着ます。養殖者をうまく活用しないといけません。また、私は食品会社にいたのでよくわかりますが、食材は天然ものより養殖もののほうが、安全でおいしいのです。なぜなら天然ものは人間にたとえれば「どこの誰」だかわからない、つまり、何歳で何を食っていたかわからない、抗生物質や農薬に犯されている可能性すら否定できません。一方、養殖ものはエサや一番おいしいときに出荷するなど計画的な育成がなされています。天然ものが健康にいい、というのは過信してはいけません。 もちろん、我々の健康のため、生産者への牽制として、食品安全性問題を保持するのは良いことだとおもいます。しかし事実を歪曲するのはいけません。こんな事実もあります。 狂牛病問題ですが、アメリカではいまだ3頭しか発見されていません。一方、日本では7月末現在33頭の狂牛病が発見されており、06年10頭、07年3頭と増え続けています。動物衛生研究所調べ。 http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/bse/count.html ウナギの養殖も日本産では中国のような検査設備や検査体制にないため、本当は結構やばいとの専門家の声すらあります。 不二家やミートホープの事件も記憶に新しいことです。 信頼できる企業や業者から購入することで防衛する以外にありません。 国産神話をマスコミに踊らされることなく、冷静な判断をしたいものです。隣国とのコミュニケーションが下手な国、目先のことにとらわれやすい国民性、戦略がんのない政策、昔から同じような指摘をされていますが、一向に改善していません。 要するに世論に迎合してしまうのでしょうかね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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