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カテゴリ:経営コンサルタント
いつも読ませていただいているブログで、昨日お伝えした、シティ-日興の株式交換について、こんな見方をされている。 要旨は、PERなど株価水準の低い現段階でシティが株式交換をすることの合理的理由が良くわからないとうことである。 私は日興の株主サイドに立って、「うまくいけば交換比率で少数株主の方が、TOBに応じた株主より、うまく売り抜けるのでは」、などと書いたが、「こっち」の事情だけを見ていた。「あっち側」の事情も見てみよう(と言い訳ですかね)。株式交換なんだから、これは大事。 そこで、「あっち側」の事情をフィナンシャル・タイムズやロイターなどつたない英文解釈力で読むと、シティグループ総帥CEOのプリンス氏の評判がいまひとつという内容の記事がありました。 特にサブプライムローン問題で第3Qの利益が前年同期比60%減と報じられ(9月末の数字が。早い)、他の投資銀行等と比較して減益幅が大きいと。また、プリンス氏がCEOになって約4年、株価がほとんど上昇していないこと、特に他社比較でいまいちなことを理由に、「シティの株価が反転するためにはCEOの辞任が特効薬」というアナリストまでいるようです。米国経営者は市場の大きなプレッシャーを受けるといいますが、如実です(その代わりといいますか、リスク料相応の報酬ももらっていますが)。就任以来下落したわけでもないが・・・。 また、UBSも同様にサブプライムで大きく損失を出し、同社では上級幹部が更迭されるという事態にあるため、「Citiもか?」という憶測を呼ぶそうですが、CitiのCEOプリンス氏は否定しています。「3Qは一時的なもので4Qから巡航速度に回復する」(大雑把な訳)と主張しており、氏の側近も信頼関係は厚いとことであるとフィナンシャルタイムズは報じています。 参考までに、株価チャートを見てみましょう。各社とも期間は03/1~07/10/2になっています。縦軸の価格はダウジョーンズの任意設定なので、折れ線の動きだけを見ないで、数字も少し参照してください。 Citi 現CEOのチャールズ・プリンス氏は03年10月に就任したようです。ほとんど株価変わりませんね。
UBS
ゴールドマンサックス
モルガンスタンレー
バンクオブアメリカ
UBSは株価だけを見ていると、この程度で首になっちゃうのか、とその悲惨さを感じてしまいます。
個人的独断の比較論 本来であれば、シティは現在業績絶好調でもおかしくないはずだ。理由は発展途上国をはじめ全世界に銀行の地盤があり、それらのネットワークを活用すれば、昨今のBRICS、VISTA、NEXT11といった地域で膨大な利益を見込めるからである。しかし、実際はその名付け親とも言えるゴールドマンがこういった地域で稼いでいると思われる(多分)。 これはすなわち、店舗拠点型のビジネスモデルよりも、集中型のビジネスモデル、総合金融より専門型のほうが業績が良いことを意味するのではないか? UBS、モルスタはGS型、バンカメは商業銀行という領域で専門型である。つまり、総合金融のシナジーが生きているのかを市場は問いかけているような気がする。店舗なんかいるのか、いまさら、と。あくまで株価だけの判断ですが・・・。 一方、日本の金融は、総合証券はブローカレッジという拠点を引きずり、メガバンクはシティ型を実はユニバーサルバンクとか言って昔から目指している(ややIBよりにはなっているが、利益率が不透明なリテールには依然注力している)。将来はいざ知らず、現在・過去においてはいずれも中途半端な戦略と写る(仕方ないその生い立ちも当然理解しなければならないが)。
Citiの個人株主の筆頭(全体順位はわかりません)であるサウジアラビアのアルワリド王子は現経営陣の支持をすでに表明しています(逆に言えば、シティ側がうわさをかき消すのに躍起になっているとも言えなくもない)。彼はまだトラベラーグループと合併前の元CEOジョン・リード氏が中南米の累積債務問題からの再生時(80年代後半)に出資を仰いだときに株主になったはずです(その後の買い増し等はわかりませんが)。 頼もしい「安定株主」ですよね(モノも言わなさそう)。 プリンス氏になって特に日本におけるプライベートバンキング部での2004年の法令違反による国外追放からコンプライアンスの再構築に努めたとされており、当時の報道見出しは「富裕層金融、シティ、規制緩和悪用、金融庁、行政処分」(日経金融04/9/21)には「きわめて悪質な取引」、「投資家を無視した規制緩和はない」(金融庁)から、「シティになめられた国会」(同紙05/2/9)など、厳しい評価であった。 それが、どういうわけか、日興コーディアルが不正会計を生じさせたときに、当時乗り気だったみずほ証券をしのいで、2007年3月にTOBにこぎつけました。当時の金融庁は確か歓迎の意を表していましたね。ずいぶん2年半でトーンが変わるなあ、と思いました。安部さんの「やり直しのきく社会」ってのはこのことか? と思ったのは私だけ? 多分外為法のときに触れましたが、小泉さんがOUT-IN M&Aの増加を約束したことが大きいと思う。(外為法はわが社を守る?) 3日あたりの新聞では、3月のTOBが1700円になったことについて、「上場廃止が廃止になったから株価が反転し、TOB価格が上がって、シティさんは大変」(主旨)という同情的なトーンになっています(上場廃止になったらシティやみずほはそんな会社を買収できないから、誰も手がだせなくて困る、とか言ってたんじゃなかったっけ。そもそも日経は日興が上場廃止かどうかわからないときに、特ダネ的にすっぱ抜いたつもりだったが、そうならなかった、つまり、株価を不安定にした張本人ではなかったか? このトーンの変わりようは・・・ やや記憶ベースながらですが)。今では「官民上げて、世界一のシティ様、どうぞいらっしゃい」ってトーンを感じます。 この歓迎ムードは何を歓迎しているのか、つたない仮説ではわからなくなりました。かつてメリルリンチは山一を買収しましたが、あっさり拠点部門は撤退しました。シティはそのビジネスモデル自体か、シナジーが生かせない経営力かが厳しく問われています。シナジーが生かせていない(海外では)拠点を新たに抱えたことは、まさしく、既存株主への説明責任をどうするのでしょうね。青い目のメガバンク? オマケ MUFJ
サブプライムか何なのでしょうか? いずれにせよ、株価の下がっているこの時期に、あえて株式交換をする意図は、次第に明かされていくのでしょう。ただし、株価対策とも思えない。なぜなら、フローバック(交換相手側、この場合は現日興株主が交換したシティ株を、売却することによる、上値の天井感)など、どちらかといえば、短期的にはネガティブな動きを示すのではないか? 注)すべては個人的な意見等です。投資判断は各人のご判断でお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/10/07 02:52:03 AM
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