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元・経営コンサルタントの投資日記

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2008/04/21
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問題です

世の中には次の2つの企業しかないとします。

問題1 あなたはどちらの企業に投資しますか?

問題2 あなたはどちらの企業に勤務したいと思いますか?

企業1 ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)

企業2 日立製作所(以下、日立)

GEは4月11日の第一四半期の決算発表で前年同期比から約6%の減益となったと発表。これは、GEのCEOであるジェフリー・イメルト氏が3月中旬に、10%程度の純利益の成長が達成できる、と言っていたことに反したため、市場は大きく落胆し、GEの株価は13%も下落してしまった。GEの株が短期間にこんなに下落するのは実に過去20年で初のことだという。

 

GE株価3ヶ月.png

 

米国のアナリストの多くが「実体経済がリセッションに入った証拠だ」と落胆し、イメルト氏にGEの抜本的戦略の見直しが必要ではないか、とのプレッシャーを強くした。

イメルト氏は「GEの戦略は間違っていない。ベアー・スターンズの破綻等3月後半の市場環境の悪化により、債権評価額の下落等の影響が大きかっただけだ、GEの事業ポートフォリオの見直しはまったく必要がない。信用の収縮が問題だったのだ。」とコメントした。

一方、4月16日に、イメルト氏を後継者に指名したGEの前CEOで「名経営者」の誉れが高い、ジャック・ウェルチ氏はイメルト氏を非難した。

だましたな。大失態だ(Screw-upとされている)、イメルトには信頼性の問題があるcredibility issue. 一部マスコミには credibility crisis と紹介されていたものもある)。3週間前に市場や投資家とした約束を破ったんだぞ」。さらに「イメルトは、今約束したことを守らない場合は、私は信じがたいほどのショックを受けるだろう。拳銃を出して彼を狙撃しなければならない」(一部「Hell of a CEO」という和訳困難な言葉が出ていました。大激怒ですね)

 

TS380118.JPG

 

こんなものすごい形相です。(rebuke:非難する)

欧米のマスコミはこの記事に飛びつきました。

この記事がエスカレートしたことに危機感を感じたウェルチ氏は数日後「GEを分割するという話はばかげているし、彼はよくやっている。苦境に陥ったというのはおかしい。私は今のGEを100%支持している。自分が再登板するなんてありえない」と一転擁護した。

しかし、偉大な前任者の後を受けたイメルト氏はインパクトが小さいため、一旦業績が行き詰ると非難も大きくなってしまい、損な役回りとなってしまっている。こんな皮肉もある。

ウェルチ氏の役員報酬総額は退任前年の99年は75百万ドル(80億円!!)、00年は136百万ドル(ひょえー)であったが、イメルト氏は06年18百万ドル(それでも約20億円!)、07年の総会提案では20百万ドル(21億円程度か)である。これに対し、「安かろう悪かろう」だという声も挙がっている。それだけウェルチ氏の達成した業績が輝かしいものだということか?

NO イメルト氏はOrganic Growthをメインとし、継続的な選択と集中を実施し、GEを「長期安定的に成長」させている立派な経営者だ。

 

イメルト.jpg

 

これはGEの07年のアニュアルレポートから抜粋した既存事業の利益の推移で、過去5年間で年率14%の成長を達成している。

 

GEの利益成長.gif

 

しかし、株価はS&P500指数をアンダーパフォームしてしまった(DJAはダウジョーンズの業種平均株価指数)。これも同社のアニュアルレポートより。

 

GE株価推移指数.gif

 

ご存知、GEは金融から航空機エンジン・原子力、TV局といった多角化事業の経営体で、コングロマリットとして成功した企業と評価されているが、一旦業績がこうなってしまう(日本企業レベルではまったく問題ない収益力)と、集中砲火を浴びてしまう。これはひとえにその多角化ゆえ、米国経済の縮図としてGEを見る人が多いからだといわれている。

一方、ウェルチ時代から「世界で1位又は2位を取れる事業以外は手がけない」という強い信念と強烈な目標への執着心は企業のDNAとして流れているといわれている。この前もGEマネーが本部をコネティカットからロンドンへ移動させたことが、「GEが世界の金融センターとしてロンドンを認めた」といってFT紙では話題になっていた(危機意識があればすぐ行動に移す)。

この強烈な市場への期待感を満たすために、イメルト氏は(恐らく自分も含めて)「成果を上げていない幹部は現在の地位にとどまることは出来ない。GEは常に成果を重視する」とコメントし、幹部の更迭やリストラの可能性を示唆した(GEでは毎年パフォーマンス下位10%は肩たたきにあうといわれている。「向いていない職場では労使ともに不幸になる」(趣旨)と)。

市場ではウェルチ氏の非難は「次はない」という風に解釈されている。GEにとっても最強の「物言う株主」だろう。しかし、ウェルチ氏が非難するのと、市場からの非難では、似たような意味合いのことであるがGEの受け止め方はまったく違うだろう。ウェルチ氏のそれは「GE愛」が感じられる。

ただし、GEの株価の足取りが重いのは、その多角化ゆえんのことで、そのような多角化を作ったのはウェルチ氏自身であり、彼は「ポートフォリオに問題はない」といっている以上、矛盾した状況の中での舵取りをまかされるイメルト氏は試練に立っていることに違いない(それでもイメルト氏はウェルチ氏も統括したことのあるプラスチック事業を売却するなど選択と集中を徹底している)。

ウェルチ氏はCEO在任の前半の80年代、米国経済が病んでいたとき、徹底した低収益性事業や低シェア事業を売却したり、リストラしたりして、「ニュートロン・ジャック」と非難された。中性子爆弾のように資産はそのままとして、労働者だけが首になるからである。

あの偉大なピーター・ドラッカーは「成果を挙げるためには、まず、なされるべきことをする」と言っている「自分がやりたいことではない。会社にとって、やらなければならないことをする」(経営者の条件)。

 

 

さて、日立。といってもその子会社日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズ社(以下、HGST)は4月17日、売却をあきらめ自主再建すると発表した。正確には「様々な可能性を検討しているが売却を決定した事実はない。業績改善を図るべく、あらゆる方策を検討し、実行している」というコメント。

HGSTを売りに出している、という話は半ば公然の秘密と考えられており、米国でも同業の事業会社が買収するのではとの観測が流れていた。その記事には、ハードディスクドライブ(HDD)を製造する方法が違うので、たとえ買収してもシナジーが見込めない、赤字額が大きすぎて重いといった内容が記載されていた。

結局、シルバーレイクというバイアウトファンドがうわさとなったものの、ファンドがこのサブプライム環境下、資金調達が出来なかったことが大きく影響したといわれている。

しかしながら日立側の発表では、HGSTの第4四半期が黒字に転じたたこと、HDDの市場拡大が予想されることなどから自主再建にメドが着いたとコメントし、身売り騒動で動揺する社内の火消しに躍起となっている印象がある。

 

HGST.jpg

 

HGSTの前期の営業利益の推移。通期でも200億円以上の赤字といわれている。なお、9月ごろの日経新聞には、元々赤字事業だったIBMのHDD事業を2002年に買収し、一度も(通期で)黒字転換したことがない事業で日立のお荷物事業の一つ、と言われていた(記憶ベースすみません)。

日立の製品の評価が高いということは百も承知です。しかし、良い製品を作ることが目的なのか、「適正な利潤を得る」ことが目的なのか? と日立を見るといつも思ってしまいます。

 

日立業績推移2.gif

 

日立の過去10年間の業績推移ですが、「長期安定的」な推移をしているといえるでしょうか?ちなみに10年間の当期利益の累計は△58億円でした。

今の日本では長期安定成長、長期安定経営という言葉はかなり表面的に使われていると思いますGEも通常の日本企業も長期安定成長という目的は同じだと思いますが、その達成手段というものをきちっと理解したうえで、こういった言葉を使用しているでしょうか?(もちろん日立だからこんなグラフとなるのであって花王やキヤノンだと安定成長しているはずですが)

 

まったくの私論だが、日立にはジャック・ウェルチ氏のように「拳銃を出して彼を狙撃しなければならない」といってもらえるような、指導者、愛ある「物言う株主」、先輩が必要だと思う。HGSTの自主再建はファンドの資金調達難という「信用の収縮の問題」などではなく、それこそ日立自身の「信頼性の問題」がかかっている。

 

究極の株式会社であるGEと究極の日本的経営の日立、冒頭の質問は「究極の選択」かもしれませんね。

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Last updated  2008/04/21 12:21:50 AM
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