Riccardo Muti & Wiener Philharmoniker : Neujahrskonzert 2021
毎年恒例のウイーン・フィルのニューイヤー・コンサート。いつもなら教育テレビの生中継を録画するのだが、今年は入院していたため録画できなかった。代わりにyoutubeにアップされていたスペインの放送局の生中継をぽつりぽつり観た。テレビのようにハイビジョンではないため、画質に不満があるが、それなりに楽しめた。無観客で少し寂しい風景だが、演奏が凄くいい。ムーティの指揮なのだが、シュトラウスらしからぬというか、ときに重々しく、ときに絶妙なフレージングで、思いがけない驚きをもたらせてくれた。管理人の認識としては、優雅で楽しいというというのがシュトラウスの音楽で、それ以上でもそれ以下でもないと思っていた。なので、今回のムーティのアプローチによって、シュトラウスの音楽の奥深さを知らされた気がする。いつもはBSを録画してBDに焼いて終わりなのだが、レコード芸術3月号の月評で、増田良介氏が『ニュー・イヤー・コンサート史上でも屈指の名演』と書かれていることもあり、珍しく音源を購入してしまった。ハイレゾは国内では1月に早々とリリースされたようだが、欧米ではなかなかリリースされない。最近やっとリリースされた中で、qobuz usaが税抜きで$22程だったので、ここから入手した。YouTubeで観ていた時に感じたことが、何故かハイレゾではあまり感じられない。漫然と聞いていると、訴える力が弱いように感じられる。全体にメリハリをつけて管を鳴らすこともないので、音楽が平板に感じられるのだ。ところが、何回か聴いているうちに、言葉は悪いが、その巧妙な手口(いい意味で)にすっかりハマってしまった。管理人はムーティは剛直というイメージを長年持っていた。ところが、この演奏では曲を矮小化させない剛直なところは残しつつ、ここぞというところでアゴーギクをきかせて、聴き手を驚かせるようなことを、しれっとしてやっている。これが現在のムーティの芸風なのだろうが、なかなかしたたかな役者だ。総じて、ポピュラーなナンバーに新たな魅力を付け加えてくれたことが大きい。気に入ったのは「春の声」の絶妙な歌いまわし。ここまで巧妙な歌いまわしは聴いたことがない。手練手管を弄しているのだろうと思うが、それを感じさせないムーティの老練な指揮ぶりで、思わず「うまいな~」と言ってしまう。「皇帝円舞曲」でも、その語り口のうまさ(絶妙なアゴーギクとパウゼ!)は共通している。エンディングでぐっとテンポを落とすところなど、しみじみとした味わいがある。総じて聴き慣れた有名曲でのムーティのうまさがよく分かる。それから初めて聴いた「新メロディ・カドリーユ」作品254も楽しかった。短い曲のメドレーみたいな曲で、素朴ながら魅力的な旋律がちりばめられていて、さながらウイーンのお菓子の詰め合わせみたいな楽しさがある。録音はハイレゾではあるが、木質のかなり渋いサウンド。煌びやかだったり、鋭い音は全く聞かれない。無観客のため直接音が多少減り、残響が吸われることがなかったのかもしれない。ムジークフェラインのホールトーンとウイーンフィルという楽器でなければ出てこない音だろう。時流に乗ったサウンドではなく、少し古臭いくすんだ音がほかのオーケストラからは絶対に聞かれないものだ。偶然バックハウスの皇帝(バックはイッセルシュテット、VPO)のDSDを聴いていたら、同じような響きがしていた。原点回帰だろうか。ということで、軽くみられがちなシュトラウスのワルツがこれほど深い内容を持っていることを認識させられた。『ニュー・イヤー・コンサート史上でも屈指の名演』という益田氏の言葉に全面的に賛同するものだ。歳をとると丸くなるものだが、ムーティは多少は丸くなりつつも、進化している稀有な指揮者なのだろう。Riccardo Muti & Wiener Philharmoniker : Neujahrskonzert 2021(SONY)24bit96kHz Flac1.Franz von Suppé:Fatinitza-MarschJohann Strauss II:2.Schallwellen, Walzer, Op. 1483.Niko-Polka, Op. 228Josef Strauss:4.Ohne Sorgen, Polka schnell, Op. 2715.Carl Zeller:Grubenlichter-Walzer6.Carl Millöcker:In Saus und Braus7.Franz von Suppé:Dichter und Bauer: Ouvertüre8.Karel Komzák, Jr.:Bad'ner Mad'ln, Walzer, Op. 2579.Josef Strauss:Margherita-Polka, Op. 24410.Johann Strauss, Sr.:Venetianer-Galopp, Op. 74Johann Strauss II:11.Frühlingsstimmen, Walzer, Op. 41012.Im Krapfenwald'l, Polka française, Op. 33613.Neue Melodien-Quadrille, Op. 25414.Kaiserwalzer, Op. 43715.Stürmisch in Lieb' und Tanz, Polka schnell, Op. 39316.Furioso-Polka, Op. 26017.Muti:New Year's Address18.Johann Strauss II:An der schönen blauen Donau, Walzer, Op. 31419.Johann Strauss, Sr.:Radetzky-Marsch, Op. 228track 1、2、5、6、8、9、10 are first performance on new year concertsWiner PhilharmonikerRiccardo MutiLive Recording: January 1, 2021,Goldener Saal des Wiener Musikvereins