Michael Mayo:FLY
いつものPresto Musicで紹介されていた、アメリカ人ヴォーカリストのマイケル・マヨ(1992年生)のアルバムを聴く。今回の「FLY」は、彼にとって2枚目のリーダー・アルバムだ。Presto Musicは高価なので、ProStudioMastersのセールでC$13.39で購入した。デビュー作はジャズ、R&B、ヒップホップが混じった作品だったが、今回はそれとは異なり、ジャズ・スタンダードを歌っている。一聴してボビー・マクファーリンを彷彿とさせるスキャットを得意とするジャズ・ヴォーカリストという印象だ。それだけではなく、声に甘さがあり、クルーナーとしての実力も感じさせる。ディストリビューターによると「母はビヨンセやダイアナ・ロス、ルーサー・ヴァンドロス、ホイットニー・ヒューストンらのバック・ヴォーカリストを務め、父はアース・ウィンド・アンド・ファイアーのサクソフォン奏者、セルジオ・メンデスのバンドでホーン奏者として活躍した」とのこと。このアルバムはピアノ・トリオとの共演で、ピアノはシャイ・マエストロ、ベースはリンダ・メイ・ハン・オー、ドラムはネイト・スミスという豪華な布陣。ピアノの気の利いたソロとバッキング、安定感のあるベース、そして多彩なドラムスが素晴らしいサポートを展開している。プログラムは5曲がオリジナルで、その他はスタンダードやジャズ・メンのオリジナル曲が中心。マヨのヴォーカル技術が存分に発揮されており、それがくどくならず、魅力的に響くのが彼の強みだ。軽めの声で美しいディクション、滑らかで疲れない声質、そして美しいファルセットが特徴。オリジナル曲は軽快で明るいものが多く、楽しめる内容だ。「Bag of Bones」(骨の袋)は、タイトルとは裏腹に明るく力強い曲で、静かな部分やフォーク調のパートもあり、変化に富んでいる。「Wish」も同様に前向きなエネルギーを感じさせ、心地よく進む演奏だ。タイトルチューン「FLY」はダンサブルでノリが良く、スコット・マヨのアルトサックスとスキャットとのユニゾンが洒落ていて、バレリー・ピンクストンのバックコーラスが鳥肌もの。スタンダード曲「Just Friends」は、8ビートでモダンなアレンジが効いており、エレクトリック・ピアノとエレキベースのバウンス感がたまらない。「I Didn't Know What Time It Was」はマヨが一人で多重録音し、コーラスやヴォイスパーカッション、スナップまでこなしている。ノリノリの演奏で、聴き手も楽しくなる仕上がりだ。「Frenzy」はロックテイストのダンサブルな楽曲で、エレキベースが効いている。「It Could Happen to You」では、マヨのクルーナーとしての実力が発揮され、彼の幅広い表現力が際立つ。「Spring Can Really Hang You Up the Most」は端正な歌声と共に感動的な演奏が繰り広げられている。最後のショーターの「Speak No Evil」は全編スキャットで、ジャズだけでなくヒップホップの要素も感じさせる。16ビートの高速リズムで驀進する部分は興奮させられる。2分足らずで終わってしまうのが、実に惜しい。録音はヴォーカルとバックのバランスが良く、ビロードのような滑らかさがある。近年、男性ジャズヴォーカリストの数が少ない中で、これほど才能ある歌手の登場は非常に嬉しい。聴いていてウキウキするようなヴォーカル・アルバムに出会うのも久しぶりだ。グラミー賞へのノミネートは間違いないだろう。Michael Mayo:FLY(Artistry Music ART7086)24bit 96kHz Flac1.Michael Mayo:Bag of Bones2.John Klenner & Sam M. Lewis:Just Friends3.Michael Mayo:I Wish4.Michael Mayo:Silence5.Michael Mayo:Fly (feat. Scott Mayo, Valerie Pinkston)6.Richard Rodgers & Lorenz Hart:I Didn't Know What Time It Was7.Michael Mayo:Frenzy8.Jimmy Van Heusen:It Could Happen to You9.Tommy Wolf & Fran Landesman:Spring Can Really Hang You Up the Most10.Miles Davis:Four11.Wayne Shorter:Speak No EvilMichael Mayo: lead vocals (all tracks), backing vocals (all tracks except 8, 9, 10), chorale (track 4),claps (track 5), shaker (track 6), snaps (track 6), vocal percussion (track 6), guitar (track 7)Shai Maestro(p all tracks except 6, Rhodes tracks 1, 2, 4, 11, synth tracks 2, 5, 7, 11, snaps track 2, claps track 5)Linda May Han Oh: upright bass all tracks except 2, 6, 7, 11, e-b tracks 2, 7, 11, claps track 5)Nate Smith(ds all tracks except 6, 11, shaker track 5, tambourine tracks 5, 10, snaps tracks 2, 10,claps track 5, hand drums track 10, clap stack track 10)Scott Mayo(backing vocals track 5, as track 5, ss track 11)Valerie Pinkston(backing vocals track 5)