AIR/エア
バスケット・ボールシューズの業績が低迷しているナイキが、シェア拡大のために従来の慣例を破って、大学生だったマイケル・ジョーン一人だけにターゲットを絞って、競合を出し抜くという実録の映画化。余計な枝葉を切り詰めて、その部分だけに絞って映画化したものだ。殆どが会話で出来ていて、場所もオフィスと主人公の自宅、ジョーダンや競合他社のオフィスという限られたシチュエーションだ。低予算だったらしいが、これがいいほうに作用して話がスピーディーに進行する痛快な物語に仕上がった。監督は「アルゴ」などで有名なベン・アフレック、主演はマット・デイモンという布陣。彼らは制作も担当している。アフレック自身も運動オタクのNILKEのCEOフィル・ナイト(1983-)役で出演している。アフレックらしい鮮明なカラーの映画で、物語の進行がスピーディーだ。最後はなかなか感動させる。物語はそれまでは個人にスポットを当てることがなかった業界において、、個人専用のシューズを作るという大胆な提案を行い、それを受け入れた会社の決断が痛快活劇のように描かれている。映画の上とはいえ登場人物がソニーをはじめ大変魅力的に描かれている。反面、他の競合メーカーであるコンバースやアディダスのジョーダンに対するプレゼンはほんの少しで、ちょっと影が薄すぎる。特にコンバースの描写は素っ気ない。もう少し、掘り下げた描写が欲しかった。また、業界では類例のない、イニシャルフィー(契約の際の一時金)以外にランニングロイヤリティ(売り上げの一定の割合を当人に支払う)という契約の話も出てくる。レコードや本などでは普通の商習慣として印税という仕組みがあるが、スポーツ用品業界ではなかったのだろう。商品が当たれば大変な報酬を受けることになり、あとに続く選手たちにとっても多大な恩恵を受ける、画期的なことだったのだろう。エア・ジョーダン・シリーズは現在も売れまくっていて、過去5年間で約190億ドルの売り上げで、ジョーダンには13億ドル(売り上げの5%)が支払われているそうだ。出典:Jordan Brand の過去5年間の売上は約2兆4,700万円にキャストでは主役のソニー・ヴァッカロ(1939-)を演ずるマット・デイモンが相変わらず上手い。ただ、残念なのは役作りのためか相変わらず腹がでっぷりと出ていて、なんとも醜悪なこと。彼の映画を観ると、いつ痩せるんだといつも思ってしまうが、今回も期待?を裏切らなかった。それからジョーダンの母親デロリスを演ずるヴィオラ・デイヴィス(1965-)の演技が大変印象深かった。ビジネスライクで如何にもやり手と思わせる一方、ソニーの話に共感するシーンには感情移入してしまいそうだった。NIKEの渉外のハワード・ホワイト役のクリス・タッカーは実物はおとなしそうな感じだが、キャラの立っている人物像を描いている。特にぎょろっとした目が(いい意味で)印象深かったマイケル・ジョーダンを誰がやっているか注目して観ていたが、声や後ろ姿などは映るものの、正面からの映像はなく、見事にしてやられた。Damian Delanoという俳優が演じていたそうだ。wiki公式サイト