見えないものが見える
入退院を繰り返している、担当の患者様。入院の度に、状態が悪くなってもあの部屋だけは絶対行きたくない、と繰り返し繰り返し言われていました。そして今回の入院。寝たきりの状態になり、看護上の都合で詰め所に近い部屋に変わることになりました。それがその部屋でした。ずいぶん前に入院したとき、連日同室者がうなされていたそうです。次は自分の番だと思ったその夜、誰かに首をしめられ、苦しかったそうなのです。絶対あの部屋には何かあったはず。だから行きたくないと、言われていました。でも私の知る限りは、その部屋ではそういうことはないだろうし、あるとすればどの部屋であってもおかしくないんだけど・・・。痴呆も少し進み、分からないだろうということでベッドのまま部屋の前まで連れて行ったら、突然はっきりとした顔つきになり、ここだけは絶対ダメ・ダメ・ダメ!と言い張られました。私が一番そのことを知っていたのに、その部屋に連れて行こうとしていました。本人の希望、分かっていたのに、こんなことしてしまって申し訳なかったです。急遽何とか段取りして、その隣の部屋に入ってもらい、今は快適に過ごしてもらっています。その部屋の方がよっぽど何かいそうだけど、私にはそういうものは見えないので分かりません。見える人には見えるらしいのですが、ありがたいことに私には見えません。でも何となく感じるのは、幽霊とかお化けとかじゃなくて、人の潜在意識です。そういうものは時々感じて、果たして単なる自分自身の意識なのか、それとも残影なのか、分からないときがあります。看護師同士では、見える見えないとフツーにしている会話ですが、本当のところはどうなんでしょうね。