〔呼吸〕ブレス~すべて歌おうと思わないで~
全音符が何小節も続いたり、ゆっくりしたテンポの曲を歌っていると、どうしても息が足りなくなることがあります。そんな時はブレスするしかないのですが、正々堂々とするわけにはいきませんから、私の知っている範囲では「カンニングブレス」と呼んでいます。今回は上手なカンニングブレスの方法をいくつか書いてみたいと思います。1.人と違うところでするブレスする場所は「ブレス記号のあるところ」「フレーズの終わり」「言葉の切れ目(外国語の曲はカンマのある場所)」が基本です。しかし、実際にはこれ以外の場所でブレスしたくなることが多々あります。おもしろいもので、自分がブレスしたくなる場所はみんなもブレスしたくなるところであることが多く、「そこはブレスをしないで」と指示されてしまうこともあります。長い音符の後とか、急に音が高くなる直前が多いですね。そこで、カンニングブレスの第1条?は「人と違うところでする」。自分がブレスしたくなる少し手前の部分で、しかも言葉や音が続いているところなどの変なところでブレスするようにしてみましょう。とはいえ、意識せずにブレスしてしまうことも多いはず。私はブレスしてはいけないところは楽譜にNB(ノン・ブレスのつもり)、カンニングブレスするところは大きくブレス記号を書くようにしています。2.必要最小限の量だけ吸うたいていはカンニングブレスの後、ほどなく大手をふってブレスできる部分がやってきます。完全にブレスしようとするのではなく「ほんのちょっと息を継ぎ足す」つもりでブレスしましょう。3.入る場所を考えてカンニングブレスしたあとすぐ歌いたくなるのが人情ですが、ピアノの部分では目立ってしまったり、速いテンポのところでは乗り遅れてしまったりします。無理に続けようとせず、場合によってはブレスした小節の残りの音は捨てる(歌わない)ことも大切です。特にフレーズの終わりで音をのばしていて、かつピアノという場面では、息がなくなったら残りを歌わないほうがいいこともあります。(みんな消えてしまうのも問題ですが・・・)。これらすべてに共通して、「何が何でもすべての音を歌おう」と思わないようにすることが大切です。隣の人の声を聴き、「あの人はここでカンニングブレスしているから自分はこっちでしよう」「あの人はここで頑張ってるから、自分はこっちで頑張ろう」というように、うまく役割分担のような形がとれれば全体としてのハーモニーがより美しくなります。上手くなると隣の人と「あうんの呼吸」がとれるようになり、そのこと自体が歌う喜びを倍増させてくれますよ。