ひいな調度
先日 母と娘、そして私とでお雛様の飾り付けを致しました。 少し日も傾きかけた時間帯でして和室の窓を通し、春の夕光を感じました。 母がお内裏さまの烏帽子の紐を丁寧に結んでくれたのですがなんだかね、母の一生懸命な横顔を見ておりますとまるで少女のように思われたのですね。 母は自身が2歳の時に実の母を病で亡くしておりますので実母とともにお雛様の飾り付けをしたことはおそらくはないと思うのです。 ・・・4歳、2歳、そして生後間もない赤ん坊を遺し30代の若さでこの世を去らなければならなかった祖母の心を思いますとき一度でよいから自分の娘と一緒にお雛様を飾りたかったのではないかと、お雛さまを見て喜ぶ娘の顔を見たかったのではないかと思いました。 ・・・時は移り これから100年経ちました後このお雛さまは一体どのようになっているのだろうと思うのです。 今は鮮やかなお着物をお召しですが時の流れとともにその色も少しずつ褪せてゆくことでしょう。お茶の道具、衣裳箪笥、鏡などの調度品も古びてゆくことでしょう。 ・・・今年から、あることを行動に移そうと考え中なのですけれども 例えばね お重の中にお節料理を入れてみてはどうかな、と。(お雛様の飾り付けを想像なさってみてください。 最も低い段の中央にお重が飾ってありますでしょう?)紙粘土で栗金団や黒豆、田作などを作りましてね お重の中に入れてみたいのです。 そしてお椀やお皿ののったお膳が雛壇の何段目かにあると思いますがそのお膳の上には これまた紙粘土で作った鯛をのせるのです。 そして下から2段目の小さな箪笥の中には反物を入れておきます。植物で染め上げた絹が我が家にありますのでねそれらを小さな反物に仕上げまして姫君の衣裳箪笥の中にしのばせるのです。 紅花、紫根、蓼藍、蓬。その他様々な植物染料を1200年前と同じ方法で染めておりますので化学染料のように何十年か後に色が剥げてしまうようなことはおそらくないものと思われます。 植物で染め 椿の灰汁で媒染しました絹は何年経ちましても甘く佳い香りが致します。 ・・・遠い将来、この小さな衣装箪笥を開ける孫娘の前に美しい色合いの絹が 佳い香りとともに現れてくれることを願うばかりです。 ・・こうして遠い昔から 娘を持つ母親は我が子の幸せを願いつつ お雛さまを見上げてきたことでしょう。 最後に 11年前の春の夜桃の節句を前にうつした娘の写真を。