天草本“伊曾保物語”は…
日本で一番最初の西洋文学翻訳本は天草本“伊曾保物語”だといわれています。これは室町末期に天草に住むイエズス会の日本人キリシタン宣教師が、ラテン語の“イソップ物語”を翻訳してローマ字表記されたものです。この本は、ポルトガルから来日したキリシタン宣教師たちのための日本語教科書として書かれ、天草のコレッジオで刊行された物だったのです。江戸時代初期から“伊曾保物語”として各種出版される事になるのですが、その後のキリシタン禁止令などのために、この原本は日本国内には残っていなくて、ロンドンの大英博物館にのみ1冊だけ残されているのが、近代になってから発見されたそうです。とても稀少本ということになるのです。皆さんよくご存知の「兎と亀」のお話のように、日本の昔話として変化していったものもいくつもあるのです。「イソップ物語」の発祥は途轍もなく古く、紀元前600年頃にまでさかのぼるのだそうです。私もこれには驚きました。作者のイソップは、古代ギリシャのアイソーポスという人の英語読みをしたもの。紀元前600年頃にそのアイソーポスは国が戦いに敗れて、ギリシャのサモス王の奴隷となっていましたが、寓話を巧みに話すということで解放されたと伝えられています。その動物寓話集は,紀元前300年くらいにアレクサンドリアで集成されたのだ、とありました。