西洋の諺だと思っていた…
近江八景のひとつで、多くの絵師達によって描かれてきて、日本三大名橋のひとつ「瀬田の唐橋」が架け替えから30年が経って、鉄さびが目立ち始めてきて塗り替えが必要になってきているとのニュースが、数日前の新聞に報道されました。内容は、現在の高欄部分は鉄製で色はクリーム色に塗られている。これは、かつて唐橋は木の橋だった事に因んで、30年前に滋賀県が定めた「木造色を基本とする」とされていたことによるのですが、果たしてこのクリーム色でよいのか物議をかもしているというのです。それは、唐橋が絵に描かれた最古の物は「石山寺縁起絵巻第五巻」に登場する。そこに描かれている唐橋の高欄は朱色であるため、色を塗るなら朱色ではないのかという意見も出ていると言う。他にも、歌川広重の浮世絵版画には、木造で作られたナチュラルなままで色の塗られていない状態の絵があることとも相俟って、いろいろ議論されているとのことでした。年末に塗り直しをするということですがいかが相成りますことやら…。その新聞記事の中に小さな囲み記事がありました。それは「瀬田の唐橋」が、諺「急がば回れ」の語源だと書いてありました。私は頭っから、疑いも無くこの諺は西洋のものだと思っていましたので、この記事には意外な思いを持ちました。この歳になるまで、これを知らなかったのは少し恥ずかしい思いがしています。室町時代の連歌師宗長という人の短歌に 「もののふの矢橋の舟は速やけれど急がば回れ瀬田の長橋」というのがある。これが「急がば回れ」の語源になったということです。矢橋の舟とは、東海道五十三次草津宿から大津宿とを結んだ渡し舟のこと。しかし小舟でもあることで、比叡おろしが吹いたりすると転覆の危険が伴うことがある。したがって、危険な近道よりも安全着実な瀬田の唐橋を渡っていきましょう、という事のようです。なおこの諺、英語では “More haste, less speed(=The more haste you get, the less speed you get.)” あるいは “Makes haste slowly” とか言うみたいです。そういえば昔、ザ・ベンチャーズというエレキ・インストルメンタル・グループの大ヒット曲に「急がば回れ」というのがあったのを思い出しました。 あれの原題は確か “WALK DON'T RUN” 「あわてずにゆっくりと!」とでもいうような意味なのでしょう。