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カテゴリ:フィクション
穴を通り抜けると、そこは丘の上であった。
・・・・・・! 私は驚き言葉を失った。 目を背けたくなるような悲惨な光景がそこにはあった。 あたり一面火の海だったのだ。 眼下の街が燃えている。 家々からは真っ黒な煙が上がっている。 私は辺りを見渡した。 少年の姿は見つからない。 しかし少し離れた場所に女性がたたずんでいた。 女性は女の子を抱いていた。女性の子供であろうか。 女の子は泣き叫び、この恐怖からの解放を訴えているようだった。 しかし女の子の声は全く聞こえなかった。 全く声を発していないのだ。 彼女には"声"という概念すらないようにも思えた。 母親はうつろな目で、その娘をただじっと見つめているだけであった。 私は彼女達に近づこうと、一歩踏み出した。 彼女達を助けなくては。 そう思ったのだ。 しかし私が歩み寄ろうとした瞬間、その考えは意味を失った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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